12/02/15 03:27:08.83 pCsvK6ey
「唇と夜の隙間」
上手くタバコも吸えない唇から
北風に震えた吐息が散り散り大気に溶けたのさ
ミルクよりは薄いくせに雨よりは軽い
そんなため息にも似た吐息に応えて
ギチギチとネオンが鳴いたのから
恥ずかしがりやの6等星は眩しいからと居なくなったんだ
ギチギチうるさいネオンは6等星を追い出したのを良い事に
辻に立つ厚化粧の女たちの輪郭を薄ボンヤリとさせては
万華鏡を気取っては子供を街から遠ざけている
俺は雛鳥みたいに口をあけてそれをニヤニヤ眺めては
ため息にも似た吐息を高度2mに後悔よりも速く打ち出すんだ
北風が強いからちゃんとしろとダウンに閉じ込めておいたガチョウに言えば
俺のいびきがうるさいと文句を言って出ていっちまった
あまりに寒くて仕方ないから昼間の稼ぎを厚化粧の女に渡して
春の真似事をしながら少しだけ笑ってはウイスキーを呷るのさ
あまりにも寂しい夜の隙間だから
ネオンがギチギチうるさいから
ダウンはぺしゃんこだから
財布だってスカスカだから
せめて唇の隙間は埋めたいのさ
それくらいはいいだろう
なあ いいだろう