12/02/11 01:55:44.93 CJhOlz5o
「鴎」
浜辺の硝子窓を開けば
海岸線には不変の沈黙と耳
惰性的に発する心は飴細工を遮り
放置される愚鈍と
水呑場で死ぬ冷たい鴎をからかう
萎えた
柘榴を一つ潰す
親指と人差し指
その隙間を拭う様に
猿島は上昇し
経度から経度へと揺れるだろう
それは拘泥の形を変える色彩で
声は涸れ脚をも間違えた鴎を
瓦解しかねない飛び方だ
腰掛ける事もできずに
上唇を噛み締めながら目論む皺
諧調を辿って悦ぶ指先
錘から誘われる透明の森をも
ただ無意味であると
無能の内臓に響かせた
一つ呼吸を遅らせて
もう一度
猿島を仰ぎ見る
琥珀色に散らばる鴎の涙が
驟雨となって私に降り注いでいる