12/02/02 20:40:43.10 gZ+VsLOV
「ランランが死んだ夜」
ランランが死んだ夜
ぼくの波打ち際はおだやかすぎた
砂へもぐって
ひそかに 貝たちが眠りにつく頃
ひとつの頁を閉じなければならなかった
ランランが死んだ夜
どこの家にも明かりが灯り
ひとびとは泣いて
一夜をすごした
なぜ ひとは泣く時を選ぶのか不思議だ
ランランが死んだ夜
ぼくのなかで 次の頁がめくられるのと
いっしょに
見知らぬひとが
どこかで たくさん死んでゆくのがわかった
ランランが死んだ夜
ひとびとは 充血した目で
自分たちの嘘から逃れた
だれもかれも
やさしいなんてうそだ
ランランが死んだ夜
また 次の頁にもひとはたくさん死んでいた
ゴビ砂漠の奥や
シベリアの雪の中 果てしない地球の
うえで
ランランが死んだ夜
ぼくの響かぬ唄が
ちまたへ流れた
いつだって ネオンの鮮やかな点滅は
ひとびとの満ちてゆく海を怖れている
ランランが死んだ夜
ぼんやりと外を見すえて
いつもとかわりない
日常のなかで ああそうさ
ぼくには 泣けない夜がある
ランランが死んだ夜
はじめてのように 地球は赤く染まった
ひざまついているのだ
地球 それは今
ひとつの懺悔の姿に似ている