12/01/19 17:00:58.33 ox9HlZ4F
「水平線」
浜辺を水が洗いながす。
波の音は静かで、どこか心地よい。
空には、カモメが、一羽、二羽、三羽と飛んでいる。
水平線の彼方へ飛んでゆく。
気持ちよさそうに飛んでゆく
その風景が俺の心を苦しめる。
人間が一人の女に、心の水平線を旋回して迫ってゆくとき、
理のないところに理をつけて、見えないものを見ようとする。
だが、ままならぬ心は、はるかに遠く水平線の彼方。
俺のよびかけも、さけびからもはみ出ている。
俺の存在意識からもはみ出ている。
開けたり閉じたり。
浮かんだり、沈んだり。
生まれたり、殺されたり。
そうしながら俺の血と肉からはなたれる言葉。
理のないところに理をつけて、見えないものを見ようとする。
御気の毒に、自分が世界と平等であると誤った認識に苦しめられる。
苦しくて眠ることもできぬ。
その不条理さは苦業しかない。
だから、俺は、自分の水平線にとどまることはできない。
カモメのように、飛んでゆくのさ。