12/03/13 22:42:57.27 8F3b5Ant0
さて、もっと奥に進もうか…と思ったとき、また
ぴしっ ぴしっ
あの音が聞こえてきた。
奥から。
加えて微風。
例えれば舞台に焚かれたドライアイスのスモークが
すうっと客席に下りてくるような、かそけき冷たさ。
ほの暗い奥に目を凝らすと、何か黒い靄が蠢いている。
私はそれから目を背け、ゆっくりと出口に向かった。
走ると何故か追いかけられそうな気がしたので。
館を出るとき、館員に挨拶しようと思い事務所を覗いたが
誰もいない。ロビーを満たす自然光が妙に寒々しい。
館を出て、午後遅くの太陽を浴びて、私はやっと息をついた。
話はこれで終わり。
博物館の名誉の為に言っておくと、展示物や資料は素晴らしかった。
力のある学芸員さんがやったんだろうな。
あの美しい火焔形土器をもう一度見たいのだが、流石に一人で行く勇気はない。