【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ19【友人・知人】at OCCULT
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ19【友人・知人】 - 暇つぶし2ch671:本当にあった怖い名無し
12/02/03 21:58:25.23 7z10vwT70
しかしわざわざ嫌いで見下してるもの読んで文句つけるってのも中々出来ないことだぜ
暇なんだろうな

672:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:00:55.87 WiPg9lRs0
師匠から聞いた話だ。


大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をしてだらだらと過ごしていた。
酒も入っていたし、欠席裁判よろしく嫌いな部員の話や色恋沙汰に関する話が主だったが、その中である同い年の女の子がふいに流れを断ち切って、こんな話を始めた。
「そういえば、このあいだ変なもの見たんだよね」
「変なって、どんな」
「なんていうか、小人?」と自分で言いながら小首を傾げている。
彼女が言うことには、数日前の夕暮れ時に街を歩いていると急に雨が降ってきたのだそうだ。傘を持っていなかった彼女は慌てて雨が避けられる路地裏に駆け込んだ。
そしてすぐに止みそうかどうか、空模様を気にしながら往来の方を眺めていると、足下になにかの気配を感じて飛び上りそうになった。
ネズミかと思ったのだ。ところがよく見ると、ゴミの収容ボックスの陰にいたのは小さな人間だった。体育座りのような格好で無表情のまま前を向いてたたずんでいる。
大きさは自分の手のひらくらいだろうか。白いシャツと青いズボン。おカッパ頭の若者のような容姿。そのあたりは薄暗くてはっきりとは見えなかったけれど、人形とは思えなかった。ぼそぼそと口元が動いているようにも見える。
身体は凍りついたように動かない。真横にいる小人のようなものへ視線だけを向けていると、眼球を動かす筋肉が疲れて鈍い痛みがやってくる。
私が気付いているということに小人が気付いたら、いったいどうなるのだろう。
そう思った瞬間、どうしようもなく恐ろしくなり、雨が降り続いている道路へ向って後ろも見ずに駆け出した。
「怖かった、ほんと」
心なしか青ざめた顔で話し終えた彼女へ「人形が捨てられてただけだろう」という突っ込みが入ったが、「あれは人形じゃなかった」と繰り返した。
理由は直感だそうだ。
周りもそれ以上追及せず、「なんだかわからないけど、気持ち悪いな」という空気だけが漂っていた。
「そう言えば私も見た」
別の女の子が口を開く。
「夜中の十二時過ぎくらいだったと思うけど、バイト帰りにいつもの道を通ってたら変な声が聞こえてきてさあ」

673:本当にあった怖い名無し
12/02/03 22:03:22.80 pkuHUugo0
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

674:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:04:35.71 WiPg9lRs0
そうして身振り手振りで説明してくれたところを要約すると、こういうことらしい。
一週間ほど前のバイト帰りでのこと。自転車で住宅街を通り抜けていると、急に前方から人の話し声が聞こえてきた。
小さな声だったが、それらしき人影が見当たらないので妙に気になり、キョロキョロとしながらペダルをこぐスピードを落とすと、「ビン」「ビン」という単語が耳に入ってきた。
ビン?
コーラの空きビンとかのビンだろうか。そんなことを思いながら聞こえて来た方向を見るが、民家の玄関があるばかりでやはり人の姿はない。
恐る恐る近づいて行き、遠くの電信柱に取り付けられた電灯の明かりにうっすらと照らされているブロック塀に添って、その向こう側を伺う。
中庭を隔てた敷地の中には明かりのついた部屋の窓がいくつか見えるが、玄関の門扉のあたりにはまったく人の姿はない。身を乗り出してブロック塀の内側を覗き込んでみたが、やはり誰も潜んではいなかった。
おかしいなと思いつつ、立ち去ろうとするとまた「ビン」「ビン」という小さな声が聞こえてくる。ぼそぼそとしたその話し声の中に「コーヒー」という単語も混じっている。
気持ちが悪くなり、もう帰ろうと自転車に足を向けかけた時、ブロック塀の上に取り付けられた木箱が目に入った。前面に飲料会社のマークが付いている。牛乳の配達をしてもらっているらしい。
ビンとはこのことだろうかと思って近づくと、「ビン」「コーヒー」というぼそぼそとした声が、その木箱のあたりから聞こえてくる。
ぞっとしながらも、好奇心に負けて手を伸ばすと、木箱の上蓋は何の抵抗もなく開き、その瞬間に声がぴたりと止まった。
木箱の中には牛乳ビンが二本、封をされたまま残されていて、そのビンと木箱の間のわずかな隙間に小さな顔が二つ覗いていた。
その二つの顔は呆けたような目を彼女の方へ向けている。
悲鳴を上げて彼女は逃げ出した。
「ホントにほんと。小人がいたんだって。箱の中に」
語り終えた彼女へ、牛乳ビンの他になにか別のものも入っていて、それが顔のように見えたのではないかという疑問がていされたが、彼女はあくまでも見間違いではないと主張した。
家の人が取り忘れたのであろう牛乳ビンについて、夜中小人がなにごとか話し合っていたというのか。奇妙な話だ。

675:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:09:42.33 WiPg9lRs0
「それに顔見る前に声が聞こえてたし。ビン、ビンって」
「でもそれって、配達用の箱が先に目に入ってたから聞こえた幻聴じゃないの」
「なんで。ビンだけじゃなくてコーヒーとかも言ってたし。コーヒーってなんだろうって思ったもん。それで箱の蓋開けたら、牛乳ビンが二本あって、片方色が違うんだよ」
「え?」
周りの仲間が気味の悪そうな声を出した。
「だから、片方コーヒー牛乳だったんだって」
なるほど。箱を開けるまで知りえなかった情報があらかじめ示されていたわけだ。幻聴だと言っていた一人も薄気味悪そうに黙り込んだ。
「実は僕もこの間……」
それまで黙って聞いていた男が手を挙げたかと思うと、おずおずと話し始めた。
数日前、真夜中に部屋に一人でいたとき、ふいに誰かの視線を感じて、思わず「誰だ」と口にしたものの、誰もいるはずがないと苦笑した。その直後にまた誰かの視線を首筋に感じる。刺すような視線。
うそだろう、と思いながら視線の感じる先に恐る恐る近づいていくと、本棚の後ろに女の横顔が見えた。
顔の左半分だけが壁と本棚の隙間から覗いていて、眼だけがギョロリとこちらを見ている。そんな隙間なんて、あっても一センチか二センチだろう。
彼は叫び声を上げて、近くにあった雑誌を顔に投げつけた。壁にあたってずるずると落ちる雑誌の向こうに妙にくすんだ肌色がまだ見えた気がして、喚きながら雑誌と言わずそこらにあったものを手当たり次第に投げつけた。
何も投げるものがなくなったころ、荒い息を吐きながらそちらを見ると、もう顔は見えなくなっていた。彼は本棚に全身を預け、わずかな隙間もなくなるように壁に向って力いっぱい押し付けた。子どものころに祖母に習ったうろ覚えのお経を唱えながら。
「それからその顔、出たの?」
「いや、その時だけ。でもあんなの見ちゃったら寝てられないよ。引っ越そうかなあ」
「そういや、私も友だちに聞いたんだけど、つい最近……」
そうしてその後も、小人やありえないほど狭い場所で人の姿を見たというような怪談話が口々に語られていった。
本人が体験したという話は最初の三人だけだったけれど、これほど似たような体験談が溢れ出てくると気味が悪い。

676:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:10:53.89 WiPg9lRs0
僕は黙って相槌を打っているだけだったが、どれも最近の話だということに引っ掛かりを覚えていた。
あえて口に出さなかったが、実は自分自身も三日ほど前に小さい人を見ていた。夕食後に近所を散歩していた時のことだ。
最初は子どもかと思ったが、道路に倒れこんで足をバタバタとさせていたのに、通行人の誰もがそちらを見ようともしていないことと、子どもにしても小さ過ぎるので、これはこの世のものではないと直感した。
小人は苦しげにもがいていたが、やがてずぶずぶと沈み込むようにアスファルトの中へ頭から消えていった。
自分の経験上、夏は特に霊感が高まる季節なので色々と奇妙なものを見てしまうのだが、小人のような霊を見てしまうことはあまり記憶になかったので、強く印象に残っていた。
(師匠に話してみるか)
友だちの体験談から、だんだんと誰から聞いたのかも分からないようなあいまいな噂話の類へランクが落ちて行っているにも関わらず、ますます盛り上がりを見せる即席怪談話大会を尻目に、僕はオカルトに関して師事している人の顔を思い浮かべていた。



その翌日のことだ。
正午を回ったころに、僕は自転車を駆ってある家を訪ねた。昨日サークルの部室で聞いた怪談話について、こうした出来事に造詣の深い自分の師匠ならどう思うだろうかと、意見を拝聴しに来たのだ。
ボロアパートの部屋の前に立ち、ノックをしたが反応がない。念のためにしばらく叩いていると代わりに隣の部屋のドアが開き、住人が顔を出して「お出かけのようです」と教えてくれた。
礼を言ってもう一度自転車に跨る。今日が土曜日だったことを思い出し、この時間ならあそこだろうとあたりをつけてハンドルを切った。
スピードを上げるとアスファルトで熱された空気が巻きあ上がるように頬にまとわりつくが、じっとしているよりもまだ心地が良い。
やがて目的の公園が見えてきた。公園と言ってもちょっとした球技ができる程度の広さがあり、大勢の子どもたちの掛け声が聞こえてくる。
「腰落とせ、おらぁ」
その声に混じって、子どもではない人の声が一際大きく聞こえてきた。

677:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:14:46.36 WiPg9lRs0
公園の球技用フェンスの前に自転車が止まっている。近づいてみるとやはり師匠のものだった。
フェンスの向こう側では、小学生と思われる十人以上の子どもたちがグローブを手に、土のグラウンドの上を転がりまわっている。
「セカンドどうしたっ、カバーが遅いぞ」
また大きな声を出しながら、金属バットで強烈なゴロを打っている女性がいる。師匠だ。
次々と放たれる白いボールに子どもたちが飛びついて行く。その瞳には、やる気に燃える鋭い光が……ない。うんざりしたような暗い表情で彼らは自分の身体を叱咤するように動かしている。
怒鳴られるから仕方がない。そんな雰囲気がありありと見とれる。
「何度言ったらわかるんだ。手で取りにいくな。腰落として身体で取るんだよ!」
子どもたちのイヤイヤ感などおかまいなしに容赦なくノックは続く。
師匠はその昔、少年野球で男の子に混じって活躍していたことがあるそうで、毎週土曜日にここで野球あそびをしていた子どもたちのふにゃふにゃした動きを見るにつけ、居ても立ってもいられなくなり、昔取った杵柄で金属バットを手にコーチを買って出たのだ。
もちろん子どもたちは喜んでいない。この変なお姉さん、早く帰ってくれないかな、と内心思っているに違いない。
彼らにはユニフォームもない。本当にただの野球遊びであり、どこかの少年野球チームと練習試合をするあてもないのである。
その彼らに、師匠はバントシフトやヒットエンドランなど、無意味と言っていい練習をさせている。
このあいだなど、ライナーをとっさのグラブさばきでみごとに捕球した遊撃手に対して、「落してゲッツー狙いにいけるタイミングだろうが!」などと怒鳴っていた。かわいそうに。
そんな無駄に高いレベルを求めるのであれば、コーチとしてチームの体裁を整え、保護者からお金を集めて、ユニフォームを作り、近隣の少年野球チームに話をつけて練習試合の一つや二つ段取ってあげるのが筋だと思うのだが。
彼女はそうしたことには無頓着で、ひとしきり身体を動かすとそれに満足して「少し休憩」ではなく「あとはやっとけ」と帰ってしまうのだ。完全に自己満足である。
子どもたちもある程度の時間我慢していれば、この変なお姉さんは帰ると分かっているので、口答えもせずに嫌々ながらも従っているようだった。
僕はなぜか申し訳ない気持ちでグラウンドの方へ近づいていった。

678:本当にあった怖い名無し
12/02/03 22:14:59.22 pkuHUugo0
(゚∀゚)wktk

679:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:26:25.59 WiPg9lRs0
その時、師匠の自転車のカゴに一冊のノートが入っているのに気がついて足を止める。
ノート?
近づいて手に取ると、それはどこにでもあるキャンパスノートで、表紙には『巨人の研究』と黒のマジックで書いてある。
そんなに本気かよ。
プロ野球チームの戦術だか技術を小学生に叩き込む気か、と呆れてしまった。
「よおし、かなり動きが良くなったぞ。もう帰るから、あとはやっとけよ」
良く通る声で爽やかにそう告げると、師匠はタオルで汗を拭きながらこちらに引き上げてきた。「ぁしたー」という、嫌に空虚な合唱がその背中を追いかける。
振り返りもせずに右手をひらひらと振って応える師匠は、前に僕が立っているのにようやく気付いたようだ。
「どうした。お前もやりたいのか」
「遠慮しておきます」
師匠は僕のそばまでやってくると、ジャージの土ぼこりを払いながら、腹減ったと呟く。
「昼、まだですか」
「ああ。一緒に食うか。家にもらいものの素麺があるぞ」
軽く食べてきてはいたが、せっかくのお誘いなので御相伴にあずかることにする。
「それにしても、ジャイアンツの研究をするのは勝手ですけど、子どもで試すのはやめてくださいよ。そもそも巨人ファンでしたっけ?」
「なに言ってんだ。こちとら子どものころから阪神ファンだけど………… って、ああ、これのことか」
師匠は吹き出しそうになりながら自転車のカゴからノートを取り出した。
「巨人って、ジャイアンツのことじゃないよ」
笑いながら言う。
「じゃあなんですか」
「お前、そのことで来たんじゃないのか」
「は?」
「小さい人を見たって話だろ」
ゾクリとした。
さっきまで笑っていた師匠の目が、一瞬でこちらの目の奥を透視するような鋭さを帯びた。
「どうして分かるんです」
「そこまでの鈍感野郎じゃないと、期待していたから」
師匠は自転車に跨った。


680:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:29:30.38 WiPg9lRs0
「いつくるか、いつくるかと待ってたんだけどな。ジャイアンに空地へ連れ出されたのび太を、家で待っているドラえもんみたいな心境で」
まあ、家で話そう。腹減った。
そう言って師匠は自転車をこぎはじめた。僕はショックを受けたまま、それでもついて行こうと後を追いかける。
なんだ、この人は。
出会って以来、何十回、何百回目かも分からない言葉を呟きながら。



二人して大皿に盛られた素麺を食べつくし、ようやく人心地がついたと言ってあぐらをかく師匠に「こんなに沢山どうしたんです」と、まだ残っている素麺の束のことを問うと、「消防団に差し入れがあってな」という答えが返ってきた。
この人は学生だというのに、地元の消防団に所属しているのだった。それも副班長だというのだから、あらためてそのバイタリティには驚かされる。
「で、そっちの話から聞こうか」
師匠が麦茶を二つのコップに注ぐ。
僕は昨日部室で聞いたことをすべて話した。そして自分の体験談も。黙って聞いていた師匠は「それが昨日の話か」と確かめるように言って、このカスが、という顔をした。
「このカスが」
言われた。
気づいたのがようやく昨日とは遅すぎる、と言いたいようだ。
「お前は親殺しの夢の時にも前科があるからな」と付け加える。
その時のことは後から聞かされていた。今年の夏の初めに、この街の多くの人が自分の親を殺す夢を見たのだそうだ。
僕もそのころ何度かそんな夢を見た気はするのだが、あまり気にせずにいたので、本気で危機感を覚えて原因究明に奔走したという師匠に散々こき下ろされたのだった。
しかし、そのことと小人を見たという話に何の関係があるというのか。


681:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:33:16.26 WiPg9lRs0
「いいか。小さい人を見るという怪談はよくありそうだが、怪談話全体の比率からすると少ない。それは幽霊というよりも妖怪的な存在だからだ。
なぜなら、日本人の持つイメージの中で、死者の霊の現れ方としては一般的ではないから。小人を見たという怪談には、因縁話がからむことが少ない。
幽霊を見たという話には、それが幻覚にせよ何にせよ、前提として死者への畏敬という『原因』が存在することが多い。ところが小人を見たという怪談には、見てしまった、という『結果』しかない。
小人の姿でヒトのようなものが現れる必然性など、普通はないから。やはり幻覚にせよ、何にせよ、だ」
師匠は麦茶を一息に飲んで、カツンと音を立ててコップをテーブルに置く。
「まあ、なにが言いたいかと言うとだ。因縁話という『原因』があれば怪談は自然に発生するものだ。それがない小人目撃談はどうしても数が少ないんだよ。
もちろん古来から続く、妖怪もしくは妖精的な存在という、それ自体が正体であり因縁となった小人伝説はある。東北の座敷童やアイヌのコロポックル、徳島の子泣爺。一寸法師や桃太郎に代表される童子型の英雄譚も小人の一種だ。
遠く異朝をとぶらえば、ドワーフやレプラコーン、取り替えっ子をするピクシー、グレムリン効果で知られるグレムリンとかも小人だな。もちろんその手前に妖精という括りがまずあるけど。
ただこれらはもちろん、現代において頻繁に目撃されるようなものじゃない」
「それはそうでしょう。座敷童なら今でも出るって噂の旅館とかありそうですが」
「そう言えば、旅館の座敷童の絵がまばたきするっていう恐怖映像があったな。まあそれはともかく、問題なのは小さい人を見たという話がここ最近増えているってのが、いかに異常な事態かってことだ」
師匠は右手で受話器を持つような仕草をする。
「実話って触れ込みのくだらない怪談ビデオを作ってるディレクターに知り合いがいるんだが、電話で訊いてみても特に最近そんな傾向は見られないとよ。少なくとも関東近辺では。予感はしてたが、恐らくこの街だけで起こっていることだ」
たかが小人を見たという怪談話を無駄に大げさにしようとしているように思えて、変な笑いが出てしまった。
じろりと睨まれる。

682:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:36:07.39 WiPg9lRs0
「お前は昨日ようやく三つ四つの体験談を仕入れたところかも知れないけど、わたしはここ二、三週間で既に少なくとも百以上蒐集している。もちろんこの街で、それも最近の話ばかりだ」
百以上? 予想外の数に驚いた。強調されるまでもなく異常な数だ。
一寸法師だとかドワーフだとか、具体的な恐怖心を抱きようのない話に頭が浸かっていたところから、一気に現実に引き戻された気がした。背筋がゾクリとする。
「なんなんです、それは」
「なんなんだろうな」
試すような目付き。
小人を見たという人が増えている? どうしてそんなことが起こる?
考えても分からない。口裂け女や人面犬のように、子どものコミュニティーの中で爆発的に広がる都市伝説はあるが、この小人の話はただ小さい人を見たという共通項があるだけで、現れ方に一貫性がない。都市伝説の類にしては違和感がある。
「なぜなんです」
素直に訊いた。答えがあるならば知りたかった。
師匠は野球の練習に持って来ていたさっきのノートをかざすように手にして、子どものような笑顔を浮かべた。
「虚心坦懐、相対的に物事を見れば、ある仮説が自然と導き出される」
そうしてノートの表にマジックで書かれた『巨人の研究』という文字をゆっくりと指さす。
「小人を見る人が増えているということは、巨人が増えているということだ」
バカだ。
とっさにそう思った。それから少し考えても、やはりバカだと思った。師匠はたまに突拍子もないことを言い出すが、これは酷い。
「デカイ小さいってのは常に相対的なものだ。コロポックルから見れば人間は巨人かも知れないが、大入道から見れば小人だ。そしてその大入道もダイダラボッチから見れば小人に過ぎない」
だからって、いくらなんでも巨人が増えてるなんて話にはならないだろう。巨人の研究って、そんな短絡的な理由で始めたのか。
「まあ聞け」
「いや、でも待って下さいよ。おかしいでしょう。話の出どころが巨人たち自身の噂話だとでも言うんですか。それ自体が立派な怪談、ていうかオカルトですよ」
「フレンド・オブ・フレンドだ。この手の話の出どころに正体はない」
「僕は体験した本人から聞きました。もちろん普通の学生です」
「わたしからすれば『友だちから聞いた話』だ」

683:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 22:39:28.12 WiPg9lRs0
「だったら連れて来ますよ。直接訊いたらどうですか」
憤慨してそう言うと、師匠は熱くなるな、というジェスチャーをする。「悪かった。今のは冗談だ」
どこまでが冗談なのだか……
目を細めて眉毛を下げながら右手をお辞儀させる師匠を前にして、僕はなんだか疲れてしまった。
「せっかく調べたんだから、巨人の話も聞いてくれよ」
好きにして下さい、という気分だった。師匠はノートを広げてパラパラとめくる。
「ようし。巨人と聞いてまず何を思い浮かべる?」
「ダイダラボッチ」
「それさっきわたしが言ったからだろう」
「じゃあギガンテス。タイタン。アトラス。あとサイクロプス」
「日本でもRPGゲームとかでお馴染みになった名前だな。どれもギリシャ神話に出てくる巨人だ。ギガース、ティターン、アトラース、そしてキュクロープス。
いずれも大地の神ガイアを母、もしくは祖母に持ち、神としての巨人、つまり巨神といっていい存在だ。ただ、後世になるつれ怪物としての側面が伝承上に現れ、卑俗化、矮小化していった傾向があるな。北欧神話では何か知っているか」
北欧神話か。確か主神のオーディンの従者だか子分だかに有名なヤツがいたはずだ。
「ロキでしたっけ」
「お、いいぞ。ロキはオーディンに率いられたアース神族と対立した巨人族の血を引いているとされている。
その巨人族の祖がユーミルと呼ばれる巨人だ。もっともアース神族も一般的な感覚からすると巨人的な存在であることに違いはないがな。
ちなみにこのユーミルや中国の盤古(ばんこ)、それから古代バビロニアのティアマットなどは始原の巨人としての性質を持っている。
つまり、その身体、もしくは死体から大地や海、その他の自然や自然現象が生まれたとされているんだ。多くの神話の中でそれぞれ世界の起源が語られているけど、巨人からすべてが生まれたとするパターンは『世界巨人型』と呼ばれる」
「日本だとダイダラボッチなんかがそうですか」

684:本当にあった怖い名無し
12/02/03 22:59:44.43 pkuHUugo0
(゚∀゚)っ④

685:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 23:04:14.72 WiPg9lRs0
「いや、ダイダラボッチは山や沼を作ったという伝承が各地に残ってるけど、あれは土を盛ったのが山になったり、足跡が沼になったりしただけで、自分自身が大地なんかになったわけじゃない。
デカイってことを強調するための逸話だな。日本にはこの手の世界巨人型の神話は分布していないみたいだ」
ノートには色々と調べたことを書き付けてあるらしい。ページをめくるスピードが上がってきた。
「他に、巨人と言えば?」
テストみたいだ。巨人、巨人、と頭の中で声に出していると、『世界の巨人』というフレーズが浮かんだ。
「ジャイアント馬場」
真面目に答えろと怒られるかと思ったが、師匠は嬉しそうに「それだ」と言った。
「さっきまでの巨人たちとはベクトルがまったく違うけど、これも立派な巨人だ」
僕は見えていた地雷を踏んでしまったかと、少し後悔した。師匠はかなりのプロレスマニアで、地元に興行が来た時に無理やり連れて行かれたことが何度もあった。
そういう人なので、プロレスの話をしばらく聞かされることを覚悟したが、意外にも話は逸れなかった。
「どうして馬場がデカイか知っているか。あれは下垂体線腫と言われる脳下垂体のホルモン分泌異常が原因だ。
下垂体線腫の中でも成長ホルモン産生下垂体線腫と呼ばれる病変は、先端巨大症や巨人症とも呼ばれる。病気で身体が大きくなってしまうんだ。
相撲取りの中でも江戸時代なんかには際立って大きな伝説的な力士がいるけど、あながち誇張とばかりも言い切れない。戦中戦後からこっちでも二メートル十センチ級の力士が何人かいるしな。
あと、最近見ないから引退したのかも知れないけど、バスケの日本代表に二メートル三十センチくらいある人がいたよな。あの人もたぶんこの病気だと思う。海外だともっと凄いヤツがいるぞ。
ロバート・ワドロウってアメリカ人は二十世紀前半の人だけど、二メートル七十二センチだってさ。父親と一緒に立ってる写真を見たけど、父親の頭がちょうどロバート君の股のところだったよ。
二十二歳で死んでしまったけど、ずっと身長が伸び続けていたらしいから、もし生きてたらどこまでデカくなったのか想像もつかないな」

686:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 23:06:12.16 WiPg9lRs0
実在する巨人か。
巨人が増えていると言ったさっきの師匠の妄言が、微かに輪郭を持ち始めた。しかしそういう人が急に増えるなんてことがあるものだろうか。
「さて、巨人も色々出たようだけど、大きく括れば現時点で二パターンに分類できるな。まず第一の巨人が、ダイダラボッチやギガンテスなどが属する『伝説上の巨人』という分類だ。そして第二の巨人が馬場やロバート・ワドロウが属する『巨人症による巨人』という分類」
師匠は右手を立てて、親指と人差し指を折ってみせる。
「そして」と言いながら中指を重ねるように折る。「まだ出ていないけど、第三の巨人が、ビッグフットや雪男などが属する『UMAとしての巨人』という分類だ」
あっ、と思った。
UMAか。アンアイデンティファイド・ミステリアス・アニマル。未確認生物のことだ。そのことを失念していた。
「伝説上の巨人ほどには荒唐無稽ではないもの、巨人症患者のように確実に存在しているとも言えない。常にその実在が議論の的になる巨人たち。
UMAは和製英語だから、正しくはクリプティッドと言うらしいが、ヒマラヤのイエティや日本のヒバゴン、中国の野人なんかもこれに入るな」
俄然、話が胡散臭くなってきた。師匠はやけに嬉しそうに続ける。
「UMAにも巨人は多いけど、物理的にはなくもないかも、という程度の大きさのものがほとんどだな。せいぜいが二、三メートル台というところか。ネッシーみたいな怪獣型のUMAだと相当でかいのもいるけど。
UMAの巨人はほぼ現生人類の亜種という正体がほのめかされているから、十メートルとか百メートルみたいな無茶も言えないんだろう。
ゴリラとかオランウータンみたいな大型の類人猿の見間違いというのが実際の話じゃないかな。でもこんな面白い話があったぞ。中国のUMAで毛人と書いてマオレンと読むヤツがいるんだが、字の如く毛むくじゃらの亜人間だ。
こいつが捕獲されたあと、研究所の一室に閉じ込めらて毎日実験動物として扱われていたんだけど、ある日研究員が部屋に入るとすでに死んでしまっていた。どんな風に死んでたと思う?」
「死ぬような実験はしてなかったんですよね。病気とかじゃないですか。ヒトに近いせいでインフルエンザに感染したとか」


687:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 23:10:34.57 WiPg9lRs0
「おしいな。ヒトに近いからというのはいい線だ。実は首を吊って死んでいた、が正解。絶望が死因になるのは人間くらいじゃないかね。いったい彼らは何を捕獲したんだろうな」
どこで仕入れた与太話か知らないが、いかにも師匠が好きそうな話だ。
「この第三の巨人が、現代に生きているとされているものの、その実在がしかるべき研究機関等で確認されていないというものなら、第四の巨人は現代に生きていないけれど過去に確実に実在した巨人、『人類の縁戚としての巨人』だ。
ギガントピテクスというのを聞いたことがないかな。百万年前から三十万年前にかけて中国やインドに生息していた大型の類人猿だ。身長でおおよそ三メートルくらい。年代的に北京原人やジャワ原人と生息期間がかぶっている。
人類の直接の先祖だという説もあったみたいだけど、早々に否定されているな。
他にも推定身長で十メートルを超えるような超特大の人骨が発見されたり、普通の人間の数倍の大きさの足跡の化石なんかが出土したりという眉唾モノの噂がオカルト界ではまことしやかに流れてるけど。
そういうのはどちらかというと第三の、『UMAとしての巨人』の分類に入れるべきだと思う。そして……」
いい加減しゃべり疲れたのか、師匠はまた冷蔵庫に麦茶を取りに行った。そして戻ってくるや、コップを傾けながらあぐらをかいて「で、だ」と言った。
「第一の『伝説上の巨人』と第三の『UMAとしての巨人』の中間に位置するのが、第五の巨人、『妖怪としての巨人』だ。
日本なら大入道や見越入道、野寺坊のような入道、坊主の類から、酒呑童子、瘤取りじいさんの話に出てくる赤鬼、青鬼などの鬼たちも巨人としての要素を持っている。海外にも一つ目鬼などの怪物譚が多々ある。
肉体を持たない幽霊的な現れ方をする巨人もいるけど、それもここへ分類していいだろう。そして最後が、完全に架空の存在としてデザインされた第六の巨人、『フィクションとしての巨人』だ。
まあ、あらためて説明するまでもないかな。漫画や小説に出てくるようなやつだ。レトリックとして使う音楽界の巨人、みたいな表現は無視しても構わないだろう。
これでおおむねこの第一から第六までの分類にどの巨人も収まるはずだ。実際には境界があいまいなケースも多いと思うけど」
なんだかややこしくなってきた。紙に書いて整理してみる。


688:巨人の研究  前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 23:12:52.96 WiPg9lRs0
第一の分類が『伝説上の巨人』
第二の分類が『巨人症による巨人』
第三の分類が『UMAとしての巨人』
第四の分類が『人類の縁戚としての巨人』
第五の分類が『妖怪としての巨人』
第六の分類が『フィクションとしての巨人』……
この六つの分類を眺めながら、なんて無駄な労力を使うのだ、と溜息をついた。
「どれが今回増えた巨人なんです」
もちろん厭味だ。
師匠はそれには答えず、ふふふと意味深に笑うだけだった。これだけ巨人のことを調べ上げて、本当に何がしたいのだろう。
「小人の話をいっぱい集めたそうですけど、そっちはどうなんですか」
「小人か。小人のことはまだ調べ切れてないが、とりあえず集めた目撃例では様々なパターンがあるな。小さいおっさんってのが一番多いけど、女や子どもの姿のものもあった。
出るシチュエーションも色々で、家の中とか学校、病院なんかの屋内もあればそのへんの道端でってのも多かった。心霊スポットで見た、なんてのもあったな。
家族や友だち数人で同時に見たというケースもあったけど、基本的には一人で、しかも夜に見るというパターンがほとんどだった」
僕は聞きながら、まるで幽霊と同じだな、と思った。
「さっきガキどもから聞いた話の中に、小人を捕まえたってのがあった」
「ガキどもって、あの野球少年たちですか」
それでノートを持って行っていたのか。
「家の近所の溝の中にぶるぶる震えてる小さいおっさんがいたから、捕まえてカラの水筒に押し込んで蓋を閉めたんだと。凄いことしやがるな。
でも、重さがカラの時と同じくなんか軽い気がして、家に帰ってから開けてみたら、中には何も入っていなかったらしい」
「最初は手で触れたのにですか」
師匠はニヤリと笑う。

689:巨人の研究  前編 ラスト ◆oJUBn2VTGE
12/02/03 23:16:12.89 WiPg9lRs0
「現代における小人との遭遇譚というのは、ほとんどがただ『見た』というだけのもので、それを触ってどうにかしたという話は少ない。
だからそれが手で触ることができない霊的なものなのかどうか、という部分が曖昧なままだ。今回のケースは、一度は触れたのにいつの間にか不可能状態から消失している。
深夜、タクシーに乗って来て、気がつくといなくなっているという幽霊の話に近い気もするけど、どうだろうか」
小人が、実体を持った存在なのかどうか、か。このあいだアスファルトへ吸い込まれていった小人を見てしまった時に、足を掴んで引っ張り出そうとしてみればよかった。
「わたしが怖いと思うのは、だ」
師匠はいやに慎重な口ぶりで顔をこちらに突き出した。
「どの話にも共通点があまり見られないということだ」
「それのどこが怖いんです」
「なにか共通の原因があれば、最近の目撃談の多さにも説明がつきそうなものだけど、例えば子どもに影響力の強いバラエティ番組で小さいおっさんの話が取り上げられた、とかな」
「それって、友だちの間の話題について行きたい子どもが作り話をする、ってことですか」
「作り話とは限らないよ。思い込みが原因でも、結果的に『見てしまう』ということはある」
なるほど。そういうこともあるのかも知れない。
「それなら、そのテレビ番組と同じシチュエーションで小さいおっさんを見た、という話ばかり増えてもいいようなものだ。しかし、さっき言ったように最近の目撃例は分類化できないほど様々で、どうも気持ちが悪い。
それぞれの個人的な体験の分布が、総体で見ると、ある密度を持ってしまっている。こういうまるで意味があるかのような偶然の集積体は、わたしの経験上……」
師匠は言葉を切ってから、ゆっくりと口を開いた。
「怖い」
真剣な表情だった。こちらまで居住まいを正さなくてはならないような。
「もう少し情報が欲しい。今日はこれから用事があるけど、明日、いや明日もまずいな。じゃあ明後日だ。ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだ」
「いいですよ」
そう言いながら、僕は得体の知れない寒気とともに、なぜか心地よい気分の高揚を覚えていた。何をしでかすか分からないこの人が、 僕はどうしようもなく好きだった。




690:本当にあった怖い名無し
12/02/03 23:18:07.97 pkuHUugo0
④ヽ(゚∀゚)ノ④

691:本当にあった怖い名無し
12/02/03 23:43:43.97 0ohmJn3A0
ウニが来るとスレが黒くなるのはもはや様式美
乙でした

692:本当にあった怖い名無し
12/02/04 02:19:06.61 HKl72UI50
>>672
ウニおつん
面白かった!

693:本当にあった怖い名無し
12/02/04 08:27:47.17 6tQciWjd0
おk

694:本当にあった怖い名無し
12/02/04 09:38:53.66 mYDKjENH0
宗像乙
一応小学館には一報入れとくよ
次はヒルコでよろしく

695:本当にあった怖い名無し
12/02/04 10:22:14.68 mYDKjENH0
あと次スレは
【星野】オマージュとパクリのダークゾーン【諸星】
に改題しとけ
まったく犯罪者になってまでこのクソスレに投下する意味がわからないね?

696:本当にあった怖い名無し
12/02/04 11:26:46.68 zjnogIAs0
>>689
③ヽ(゚∀゚)ノ⑨

697:本当にあった怖い名無し
12/02/04 17:56:29.77 s/I3Z4/E0
>>695
次スレはもうあるぞ
スレリンク(occult板)

698:本当にあった怖い名無し
12/02/04 21:23:41.89 hr0cf/ty0
っということで
もうこのスレ解散な。


699:本当にあった怖い名無し
12/02/04 21:33:33.24 tbxAa2FLO
>>698
おう、じゃあ先に行って待っててくれ

700:本当にあった怖い名無し
12/02/04 21:51:22.48 hr0cf/ty0
師匠は言葉を切ってから、ゆっくりと口を開いた。
「怖い」

waraeru

701:本当にあった怖い名無し
12/02/04 22:12:06.29 +uKZDfwQO
はじめて来たけど
何この人?
面白かった!

702:本当にあった怖い名無し
12/02/04 22:45:07.65 UOXn9b8d0
ステマw

703:本当にあった怖い名無し
12/02/04 22:53:11.21 Uk9Pjt3z0
ステルスマジでキチガイじみてる人?
ステルスできてねえけど

704:本当にあった怖い名無し
12/02/04 23:38:41.61 9Kfis1p9O
>>701
っ過去の作品URLリンク(i.shoukaiya.fc2web.com)

705:本当にあった怖い名無し
12/02/05 02:30:58.89 AZ8/x5BB0
>>701
作者 ウニ
作品 師匠シリーズ(と呼ばれている)

巨人の話、作中に出てくる師匠(加奈子さん)の弟子(僕)の弟子(ウニ)

本筋は僕(ウニの師匠)とウニ(作者ウニの数年前の話と設定されている)の話しがメインで、加奈子さん(本筋では死亡している)師匠編は過去の話

時系列で作品が発表されているわけではないので、謎が多い分、ヒントや謎が解き明かされる所に人気の理由の1つがある

もう十年近く続いてるんじゃないかな


706:本当にあった怖い名無し
12/02/05 04:00:53.64 90chLXvq0
おk

707:本当にあった怖い名無し
12/02/05 04:11:36.55 XCFQsN3K0
僕師匠と弟子ウニの話は実話ベースと思ってたけど
加奈子師匠と弟子・僕の話を読んでから
そうじゃなかったんだなと思うようになった
その場にいなかったウニが細部にわたり書けるわけないもんね
それか、実話ベースを大きく肉付け、脚色したのかな
あ、スレチかも

708:本当にあった怖い名無し
12/02/05 10:39:55.14 8GO+7NEUP
初期は登場人物以外体験談ベースかなと思っていたけど
今は普通にフィクションとして楽しんでいる

709:本当にあった怖い名無し
12/02/05 11:36:33.33 9IGbmSvwO
実話なんだから実話として楽しめよ

710:本当にあった怖い名無し
12/02/05 11:48:29.42 MCrmgZFt0
作者本人が女じゃない限り友達がみんな女でもれなく好意的とかありえねぇだろw
モテない男の妄想小説。

711:本当にあった怖い名無し
12/02/05 11:58:14.04 IKrZIQvd0
霊現象よりそっちの方がオカルトなのかお前の中では

712:本当にあった怖い名無し
12/02/05 13:33:21.14 RAuhnNEj0
実話ベースでも、体験談ベースでも、楽しめればグー
自分は実話のほうがより楽しみ度が上がるけど
ウニさんのは関係なく楽しみにしてる。ありがたやー

713:本当にあった怖い名無し
12/02/05 17:54:10.34 Ug9RyL4Q0
正直実話だの何だの言い始めたらこの板そのものに喧嘩売ってるようなもんだしな

714:本当にあった怖い名無し
12/02/05 18:09:02.78 j5UbBk/a0
パクリはいくない

715:本当にあった怖い名無し
12/02/05 18:59:38.46 9IGbmSvwO
>>714
実話だからパクリじゃないだろ

716:本当にあった怖い名無し
12/02/05 19:47:02.55 vK+aXiPLO
「実話だから」を免罪符にされても…
他にも疑わしいのなかったっけ?

717:本当にあった怖い名無し
12/02/05 21:26:29.37 fyT3EXa80
>>706
そういうことか

718:本当にあった怖い名無し
12/02/05 22:35:49.68 D9q7iJK50
>>669
同人誌として立派な営利活動してますが?


719:本当にあった怖い名無し
12/02/05 22:37:05.78 D9q7iJK50
>>671
もう何回も言われてるけど、誰も嫌いとはいってないのに
信者は不満点があっても見えないらしいからたち悪いわ

720:本当にあった怖い名無し
12/02/05 22:40:16.68 D9q7iJK50
>>704-705
うわあ・・布教活動する信者って気持ち悪いわ
ちょっと褒めただけでこれかよ・・・
まさに信者!

つかウニよ、頼むから段落分けしてくれ。物書きだろお前。読みにくいって意見はスルーですか?

721:本当にあった怖い名無し
12/02/06 10:29:40.31 8dlbTxfy0
同人で相手にされないからまた戻ってきたんだよ
だって発想も文章も貧しすぎるよ、おまけにパクリ疑惑じゃ・・・
安心して同人できない。


722:本当にあった怖い名無し
12/02/06 12:52:47.28 d4CgmthX0
三連レスとか気持ち悪すぎだろ

723:本当にあった怖い名無し
12/02/06 14:09:18.39 dKUf0a/qP

4連に見えるが。

つか>720は誰にレスしようとしてたんだ
ウニ:段落つめてもいい?(レス数多くなってサルになるから?)→レス内名無し「いいよー」
って事があったというレスはスルーですか?

724:本当にあった怖い名無し
12/02/06 17:09:20.03 Puwh7Q000
俺も4連に見えたw
対応するところは対応するし、スルーすべきはスルーする、それが2ch
スルー対象は残念だったね

725:本当にあった怖い名無し
12/02/06 20:50:14.85 HV/8RJV50
そんなことより、「田舎」の後編はいつ出るのだ

726:本当にあった怖い名無し
12/02/06 22:35:27.26 LofBE5bJ0
「田舎」ってほんとにオリジナルなの?
いつぐらいに投下された作品?
書かないというより他人の作品だから書けないんじゃないの?



727:本当にあった怖い名無し
12/02/06 23:45:37.74 PMqWHB5a0
>>720
自分の意見が通らないからって荒らすのは良くないぜ。

728:本当にあった怖い名無し
12/02/07 07:30:29.06 Q0JYLKR30
まあそうだね。
信者が気持ち悪いのにだけは同意するけど、他はある程度仕方ない事じゃないかと…
パクリ云々はよくわからんから、詳しい人がいるなら検証して欲しい気はするが。

729:本当にあった怖い名無し
12/02/07 08:12:52.53 mxR1Nvue0
才能があると嫉妬買って大変だね
叩くやつは大抵同業者で、才能ないやつ。貶めアイテムは「パクリだ!」
10年も続けてるなんて、この人何者なのwそれだけで凄いわ

730:本当にあった怖い名無し
12/02/07 09:14:54.37 mswpIFuZP
2ch系見る限り才能なくても
まとめサイトでアフェリエイトする人や同人やってる人が自キャラを絵板に投稿すると
基地外みたいに叩き出す人がいるよ
要は少しでも金が絡むと発狂すると思われ

731:本当にあった怖い名無し
12/02/07 10:23:17.79 bzZemgJ30
ちょっとでも否定的なレスするだけで荒らすなよ、とか感じるんだったらもう2chには来ないほうが懸命だろう

>>728
パクリは何回も実例出てるよ
「将棋」・・・ウニの投稿以前にほとんど同じ内容の話がどこかのブログにあった。
うろ覚えだがジョジョ作者の荒木飛呂彦の「デッドマンズQ」という作品にそっくりな話があるらしい。
他にもあった気がするが補てんよろ。

「将棋」は特殊な話なので、ウニの「実話だからしょうがない」という弁明は苦しいかと思う
パクリ以前に実話というのがまた香ばしい

732:本当にあった怖い名無し
12/02/07 10:44:38.31 fdlUi/OA0
「雨音」の母娘の描写も洒落怖かなんかで見た覚えがある

733:本当にあった怖い名無し
12/02/07 11:03:14.32 N1VJMU3v0
>>729
おまえも10年以上ロムっているわけで。
じゅうぶんスゴイぜ!

734:本当にあった怖い名無し
12/02/07 13:25:39.36 Q0JYLKR30
>>731-732
ありがとう、でもそれだけだと雲を掴むようだねぇ…
最近のを読む限り、その場その場で他人の影響受けやすい作風かなとは感じるが。

735:本当にあった怖い名無し
12/02/07 13:47:31.45 9DpRjbx/0
ウニ乙
野球のくだりは吹いたw

736:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:02:22.63 L1Gb+CeR0
デッドマンズQにそんな話あったっけ?
俺もそんなよく覚えてるわけじゃないが、そのエピソード入る余地なくね?

737:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:27:31.86 1oqXWpou0
デッドマンズQって始末する側される側の2編しかないんだが

738:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:37:29.40 XqWjTwef0
将棋はモロパクリ
実話と言えばパクリさえも不問にするのがウニ信者のジャスティス!

739:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:44:54.10 Ky+3BeLn0
加奈子師匠編はキャラ設定というのもあるが生き生きしてる
ルックスは、夏の日に街で見かけたあんな子かなーとか想像しながら読める

740:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:51:04.83 Ky+3BeLn0
物語では亡くなってても、一番身近な感じがする

741:本当にあった怖い名無し
12/02/08 19:58:34.86 x/mxqXpt0
スレチだろう。
語るスレでやってくれ。

742:本当にあった怖い名無し
12/02/08 20:28:36.14 /gu9HuHk0
おk

743:本当にあった怖い名無し
12/02/08 21:20:17.75 T5VSGZwMO
ウニはプロすら裸足で逃げ出すほどの魅力ある実話を書くからな
嫉妬して荒らす奴が居るのも仕方がない

744:本当にあった怖い名無し
12/02/08 21:32:55.75 rQLCjMLi0
プロって例えば?

745:本当にあった怖い名無し
12/02/08 22:22:31.98 ccrjdLcs0
山田悠介とか水嶋ヒロとか。

746:本当にあった怖い名無し
12/02/08 22:23:50.45 Da8Dv9w90
ウニは絶対にプロにはなれないね。
プロの世界では嫌われまくって生きていけないよ。


747:本当にあった怖い名無し
12/02/08 23:55:37.81 rQLCjMLi0
>>745
それは凄い話題性だね!

748:本当にあった怖い名無し
12/02/09 10:42:10.88 jr8WuMLp0
ってかこんなところに書いてる自体プロになるつもりなんてないでしょ

749:本当にあった怖い名無し
12/02/09 16:49:38.96 7v6gNkm1P
うん、アマチュアが無料で投稿してるだけなのになぜプロとか持ち出すのか

750:本当にあった怖い名無し
12/02/09 17:15:34.73 /oI0gMwS0
無意識で「こいつプロ並みだよ(ゴクリ」って思ってんじゃない?

751:本当にあった怖い名無し
12/02/09 17:43:31.79 3gFdhd6l0
俺は戦闘のプロだぜ?

752:本当にあった怖い名無し
12/02/09 18:14:16.56 NCeS3+J/0
鉄也さん!

753:本当にあった怖い名無し
12/02/09 18:44:09.74 hW/vQTSA0
単に同人誌と商業誌の区別がつかない奴がプロ扱いしてるんだろ、寒っ

754:本当にあった怖い名無し
12/02/09 20:47:12.68 g0KmyTjK0
>>743
>ウニはプロすら裸足で逃げ出すほどの魅力ある実話を書くからな
嫉妬して荒らす奴が居るのも仕方がない

まさに信者
その裸足で逃げ出したプロって誰だよ?答えてみろよ
嫉妬して荒らす?
そらすげーな。で出版社からはいつ声が掛かるの?
レベルとしてはプロどころか同人レベルなんだよ。事実を認識しろ
ウニの作品はただで読めるにしたら満足できるレベルだが、金払ってまで読むシロモノじゃねーよ
信者のせいで馬鹿にされてるって自覚ないのかな

「プロが逃げ出すほど魅力的」「嫉妬して荒らされるレベル」ってこんな事ばかりいつまでも言ってるから
バカにされるんだよ。ウニじゃなくてお前ら信者がな

755:本当にあった怖い名無し
12/02/09 22:19:26.47 7v6gNkm1P
無料の匿名掲示板で過度に庇うのも一々添削するのも見てる方には、まぁウザい罠

756:本当にあった怖い名無し
12/02/09 22:42:19.93 Wfu6yebv0
>>754
そんなもん叩く為に頑張るとかどんだけ暇なのよ

757:本当にあった怖い名無し
12/02/09 23:48:59.01 pKWwSuHV0
信者もアンチも必死すぎだろwww

758:本当にあった怖い名無し
12/02/10 00:38:24.96 a77qEt+w0
揚げ足取ってるから俺も揚げ足とるけど、逃げ出すほど=逃げ出した ではないんじゃない?

759:本当にあった怖い名無し
12/02/10 02:12:41.15 DNR0kGjVO
>>754
ほら、嫉妬してるから絡んでくるだろ?

760:本当にあった怖い名無し
12/02/10 09:38:24.54 mTT2jE6x0
効いてる効いてる

761:本当にあった怖い名無し
12/02/10 09:52:50.15 mTT2jE6x0
効いてる効いてる

762:本当にあった怖い名無し
12/02/10 11:53:56.08 bml0S6taP
厨二病の一種だと、互い相手を煽ってそれに引っかかるのを楽しんでるか
同一人物が他の名無しを躍らせようとしてマッチポンプしてるかのパターンが多いよね

人を操る、俺カコイイって

763:本当にあった怖い名無し
12/02/10 11:57:23.11 icbbgMkK0
ウニの話なんかよりおまえらの攻防の方がオモシロイよ

764:本当にあった怖い名無し
12/02/10 11:58:04.26 421uW2PB0
それを見抜く俺カコイイ

765:本当にあった怖い名無し
12/02/10 13:05:48.12 Pm+asgBT0
オカルトやでぇ

766:本当にあった怖い名無し
12/02/10 14:14:31.50 iBbOUSg40
>>758

言い方はどうでもいいんだよ
プロも逃げ出すほどって、どういう情報でそういう事言ってるんだよって話
案の定具体的な情報提示せずだんまり決め込んでるようだが
こういう事言うから絡まれるんだよ

767:本当にあった怖い名無し
12/02/10 14:56:15.74 a77qEt+w0
ちなみに俺は>>743じゃないからな
言い方はどうでもいいって、お前が聞いてるんだろw

768:本当にあった怖い名無し
12/02/10 16:57:57.31 O1JiHx1/0
おまいら、変なのに釣られすぎでつよ!(; ・`д・´)

769:本当にあった怖い名無し
12/02/10 21:54:52.74 iBbOUSg40
>>758
というか、揚げ足撮ってるからとか言ってるけど、何をさして揚げ足撮ってるって言ってるんだ?

プロが裸足で逃げ出すほどを突っ込んだこと?まさかこれが揚げ足取ってるって言ってるのか?
確かなソースもないのにプロを愚弄するようなこと言ってるんだぞ?


770:本当にあった怖い名無し
12/02/10 22:46:22.94 2DmkTClx0
>>768
そう言うなよ
こいつら釣られてナンボの昔~し気質の住人なんだよ
時代についてこれないんだよ、かわいそうにナ~
でもよ・・・
おっとゴメンよ、むかしここに糸たらさせてもらった縁でよ、ついよ

御代、ここ置くよ、釣りはいらねぇアメでも買いなよ

ところでよ、御前さん方井戸の話は聞いたことあるかい?

じゃぁ、御猿様の話は・・・?


771:ウニ  ◆oJUBn2VTGE
12/02/10 23:03:43.85 0VW1t0FY0
ウニです。どうもこんばんわ。

巨人の研究の中編を投下しようと2chにやってきましたが、なんでか忍者レベルが1になっていました。

心当たりは・・・ある。

でもショックです。

またレベルをコツコツあげるのでしばらくさようなら。


772:本当にあった怖い名無し
12/02/10 23:21:08.35 sKpBFKA6O
残念

773:本当にあった怖い名無し
12/02/10 23:26:03.60 oREP8Qg50
待ってます

774:本当にあった怖い名無し
12/02/10 23:59:27.90 O7RByuhH0
ピクシブ投稿もなしですか?

775:本当にあった怖い名無し
12/02/11 00:19:56.41 4AshB4uB0
まってるぜ

776:本当にあった怖い名無し
12/02/11 00:35:54.30 3XyypkxdP
ぬう・・・おのれ忍者システム

777:本当にあった怖い名無し
12/02/11 00:43:29.24 9Y2BR2DC0
汚いなさすが忍者きたない

778:本当にあった怖い名無し
12/02/11 09:42:07.94 aTASD5X80
↑こんな駄レスがスリーセブン!?


779:本当にあった怖い名無し
12/02/11 11:29:57.57 Pel086tC0
クッキー消しちゃったとか?

780:本当にあった怖い名無し
12/02/11 12:16:21.20 aTASD5X80
言い訳だろ、パクリの?

781:本当にあった怖い名無し
12/02/11 13:43:51.13 /JF1pA8D0
>>771
ざまあww

もう来んな。パクリ・ウニ騙りラノベ同人作家モドキがw
pixivで投下してんだから2chに同じもの貼り付ける意味が分からん
マジで何なのその顕示欲は?向うで信者どもと馴れ合ってろよカス

782:本当にあった怖い名無し
12/02/11 17:01:44.46 m5mSltXJ0
>>781
隆ラブ、いい加減にしろ

783:本当にあった怖い名無し
12/02/11 20:33:38.86 gUNDR5MT0
おk

784:本当にあった怖い名無し
12/02/11 20:41:10.99 gUNDR5MT0
ウニさん待ちです

785:あと
12/02/13 17:55:10.17 s4JjFHcD0
ウニいらん。つまんない+長い

786:本当にあった怖い名無し
12/02/13 18:58:01.88 vWocz2n20
うん

787:本当にあった怖い名無し
12/02/13 20:50:57.90 ju6rkVnl0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね

788:本当にあった怖い名無し
12/02/13 21:02:17.91 STt75w+h0
おk

789:本当にあった怖い名無し
12/02/13 21:32:44.25 gr01WTqU0
勘違いで作品投下に10000ペソ

790:本当にあった怖い名無し
12/02/14 11:08:47.86 0kb7yQHR0
パクリのいるスレにはちょっと・・・

791:本当にあった怖い名無し
12/02/15 12:17:55.49 6K1iLIaw0
面白ければウニみたいな盗作でもおk

792:本当にあった怖い名無し
12/02/15 20:51:45.03 /Je2f+F+0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね

793:本当にあった怖い名無し
12/02/15 23:15:53.33 +qBwujG60
 発 者 同         . 。_   ____           争
 生 同 .じ     .    /´ |  (ゝ___)          い
 .し 士 .レ      .__/'r-┴<ゝi,,ノ   ro、      は、
 .な で .ベ      ∠ゝ (ゝ.//`   ./`|  }⌒j
 .い し .ル        } ⌒ /`ヽ、_∠l,ノ ・ヽ´
 .! ! か の       /  ´..:.} >、、___,  .r、 ソ、`\
             /   ..:.:.}   /   |∨ ` ̄
            /   ..:.:./    |   丶
           / _、 ..:.:.:.{    .{.:.:.   \
          {   ..:Y  .ゝ、   {.:.:.:.:.    ヽ
          |、  ..:/ 丿 .:〉   >.- ⌒  .  ヽ
          / {. ..:./ ソ ..:./  .(    ..:.:.:`  ..:}
         ./..:.:}.:.:./ ヘ、 ..:./   .\ ..:.:r_,ノ、.:.:}
        ./..:.:/|.:/   {.:./     X.:.:}.}   X X
        /..:.:/ .}.:|    }:/       .Y丶ヽ  Y.:Y
  . __/.:/ { }  《.〈、     _,,__>.:》丶   Y.:\
  /.:.:.:.:.::/   !.:.:ゝ  ゝ.:. ̄ヾ ´:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾゝ   \.: ̄>




794:本当にあった怖い名無し
12/02/16 21:25:44.01 F6M5biUD0
おk

795:本当にあった怖い名無し
12/02/17 14:24:52.97 SG8eeJtQO
パクリでおk

796:本当にあった怖い名無し
12/02/17 14:40:53.79 PGSbnw6M0
隆ラブいいかげんウザイ。

797:本当にあった怖い名無し
12/02/17 21:59:51.81 Mzim+IJs0
そうやって荒らしてるのは一人だけ、と思ってればイイよw


798:本当にあった怖い名無し
12/02/17 22:34:45.20 O95j6f910
え? 2,3人だろw 暇人が

799:本当にあった怖い名無し
12/02/18 08:10:47.91 hAxPHsLI0
おk

800:本当にあった怖い名無し
12/02/18 08:16:02.14 hAxPHsLI0
ウニさん待ちです

801:本当にあった怖い名無し
12/02/18 18:01:06.70 cLLi6ctH0
赤緑待ちです

802:本当にあった怖い名無し
12/02/18 18:43:44.42 hAxPHsLI0
隆ラブはいつになったら投下するのさ

803:本当にあった怖い名無し
12/02/18 18:46:28.84 hAxPHsLI0
ウニさんの気配がするから

804:本当にあった怖い名無し
12/02/18 21:59:20.08 hN/xItTW0
ぱくり鬼が棲まうという沼はここかね?
・・・
なるほどのう
たしかに
うぅむ・・・
これはヒドイ

たしかにの、おまえさんの名前の由来を考えればそれも無理がないかもしれんがの
だが他人が多くの時間と労力を使ってやっと集めた資料を何の断りも無く、まるで自分の功績のように
弄ぶのはどうかのう・・・?





805:本当にあった怖い名無し
12/02/19 02:49:09.35 jFuvteHN0
などと意味不明な供述をしており

806:本当にあった怖い名無し
12/02/19 06:12:53.92 NMbG+cxn0
隆ラブとかパクリ過ぎだろ


807:本当にあった怖い名無し
12/02/19 07:41:02.09 RhJIDORq0
師匠シリーズスレのほうにウニ降臨してた

おまえらがそういう話をするから、ウニにかかわらず投稿者はますますこのスレに投稿しにくくなるね

808:本当にあった怖い名無し
12/02/19 11:28:47.21 44aTmxNAP
普通に投下先間違えたのか
ワロタW

809:本当にあった怖い名無し
12/02/19 17:22:34.48 Ts2mFWwk0
ウニさん待ちです

810:本当にあった怖い名無し
12/02/19 18:26:30.38 Ts2mFWwk0
おk

811:本当にあった怖い名無し
12/02/19 19:08:19.67 TL35vFlq0
隆ラブのピエロっぷりが大好物です
盛り上がるから頑張って欲しいですね

812:本当にあった怖い名無し
12/02/19 20:16:21.00 goPjuVrb0
友人の葬式に行った

悲しくて周りの状況はハッキリ覚えてないんだけど、斎場に関係者から届く花が
幾つか有って、それが三回も自分にだけ倒れてきた。
特に原因も見当たらないし、いい加減な葬儀社じゃ無いから不思議なんだ。
葬式が終わってしまって「出会えて良かったです」と伝えて車に戻った。

俺の車のドアは旧式のキーを差し込んで開けるタイプで、確かにロックは解除
したんだけどドアが開かないんだ。
ふと窓ガラスを見たらヤセの俺の顔が膨れてるんだ、デブの友人の顔みたいに。

不意に後ろで声がして振り向くと同級生だった。少しだけ話した後は簡単に車に乗れた。
それだけなんだ。だけどあの世とかただのファンタジーだと思ってた俺は、考えが少し
変わってきた気がする。そういえば香典渡して無かったんだ。


813:本当にあった怖い名無し
12/02/19 22:17:36.07 yGca/SAZ0
葬儀場で誰にともなく「出会えてよかったです」とか独り言言ってる奴がいたら確かに怖いな
オカルトだわ

814:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 13:50:20.59 fU+mZIGV0
[友人が来る]

1/10
あぁ、のどかだなぁ…

バスに揺られて、ぼーっと窓の外を見ながらそんなことを思う。

古乃羽のお母さんの故郷。
ここには中学に入ってからの3年間、毎年夏休みに古乃羽と一緒に来ていた訳だけど、高校に入ってからは来なくなっていた。

「何も無くて、つまらない」

単純にそんな風に考えていたからだ。
ここの良さが分からないなんて、私も子供だったなぁ…
なんて、大人になった気になって思う。

ベンチ1つのバス亭でバスを降り、古乃羽に書いてもらった地図を見ながら「杵島さん」の家に向かう。
まぁ、地図なんて見なくても道は覚えているけどネ。
昔から道を覚えるのは得意だし…そもそもここには、間違えるほど道が無い。

そんな失礼なことを思いながら歩いていると、前から着物を着た1人のお婆さんが歩いてきた。


815:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 13:52:11.59 fU+mZIGV0
2/10
上品そうで、穏やかな感じのお婆さん。

ここは通りすがりに挨拶を―と思いきや、そのお婆さんは私の目の前で立ち止まり、「こんにちは」と丁寧に挨拶をしてくる。
相手が止まったのに通り過ぎるのも悪いと思い、私も立ち止まって挨拶をする。

私「こんにちはー」
まだ朝の10時だけど、相手に合わせて「こんにちは」。

お婆さん「東京から、ですか?」
私「え?あぁ…はい」

唐突に質問をされ、正確には東京じゃないけど大体”その辺”なので、はいと返事をする。

お婆さん「そう…」
私「…はい」
お婆さん「東京は、遠いですよね…」
私「え?あ、えぇ、そうですねぇ」

遠くを見るような目で、感慨深げに言うお婆さん。
確かに、ここからはちょっと距離があるけど…何だろう?
…と思っていると、そのお婆さんはこんな事を言った。

お婆さん「私は、ここから出たことが無いのですよ」


816:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 13:54:54.76 fU+mZIGV0
3/10
私「…え?」

出たことが無いって…?

お婆さん「ずっとここで暮らしていて…もうこの年だし、外に出ることは無いと思います」
私「…はぁ」

それだけ言うと、お婆さんはペコリと頭を下げて去っていく。
突然の事に、私は何とも言えない気持ちでその後ろ姿を見送る。

どうやら「出たことが無い」というのは、この村―もとい、町を、ってことみたいだ。
それが寂しいのか、悲しいのか…それとも、後悔しているのかな?
どう思っているのか、ちょっと分からない。
見た感じ足取りもしっかりしているから、まだどこか遠くに行こうと思えば行けそうになのにな。

家族の人はどうしているのだろう。
子供やお孫さんは居ないのかな?
誰か、ここから外に連れて行ってくれる人は居ないのかな…?


817:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 13:57:41.32 fU+mZIGV0
4/10
ちょっと沈んだ気分になってしまったけど、私は気持ちを切り替えて道を行き、やがて「杵島さん」の家に着く。
そして呼び鈴を…というところで、ガラガラと引き戸が開き古乃羽が出てくる。

古乃羽「…あ!美加?今から迎えに―」
私「あぁーん、古乃羽~」

言うが早いか、私はひしと古乃羽に抱きつく。

古乃羽「や、ちょっと…」

むふふ、うろたえろうろたえろ…なんて思いながらギュッと抱きついていると、古乃羽のすぐ横に、大きなリボンの女の子が居ることに気付く。

私「あら?」

古乃羽を解放し、私はその女の子の前にしゃがみ込む。
するとその子は古乃羽の後ろに隠れてしまう。


818:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 13:59:19.69 fU+mZIGV0
5/10
私「可愛い子ね、古乃羽の子?」
古乃羽「な訳ないでしょ。従姉妹の唯ちゃんよ」
私「へぇー」

古乃羽の後ろに隠れ、恐る恐るこちらを伺っている唯ちゃん。
どうやら人見知りさんのようだ。…まさか、私が怖いとかじゃないよね?

私「はじめまして、私、美加って言うの。よろしくね、唯ちゃん」
唯「……」

モジモジしている唯ちゃん。うーん、これはイイ…。

古乃羽「ちょっと人見知りで…ごめんね。ほら、唯ちゃん」
唯「…はじめまして」

古乃羽に言われて、小さな声で挨拶をしてくれる唯ちゃん。

私「はじめまして、唯ちゃん。おリボン可愛いね」

私がそう言うと、唯ちゃんは嬉しそうに顔を真っ赤にして、それを隠すように古乃羽に抱きつく。
あぁ、私もこういうの見習わないとなぁ…。


819:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 14:01:14.61 fU+mZIGV0
6/10
それから杵島のおじさんおばさん、更にお婆さんに挨拶を済ませた私は、古乃羽と一緒の部屋に落ち着く。

古乃羽「もうすぐお昼だから、食べたらちょっと出掛けよっか」
私「うん」
時計は11時過ぎを指している。お昼ご飯までは、あと1時間くらいかな?
よし、それじゃあさっそく―

私「あのさ、今ここに来る途中で、ちょっと変わった事があったの」
古乃羽「ん?なに?」

私は、先ほど会ったお婆さんの話をする。
こういうことは、すぐに話したくなるタチなのだ。

古乃羽「―へぇ」
私「何か、感慨深くなっちゃってねぇ」
古乃羽「若い頃に旅行とか行かなかったのかな」
私「そうだろうねぇ」
旅行に行く機会が一度も無かったというのも、何だか不思議な話だが。

古乃羽「いくつ位のお婆さん?」
私「うーん…60から80くらい」
古乃羽「…随分幅があるね」

見た目からはちょっと分からなかった。
年齢当てるの、得意なんだけどな。


820:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 14:03:08.49 fU+mZIGV0
7/10

やがて正午を過ぎ、私は美加とお昼を済ませてから、外に出掛けることにした。

唯ちゃんが一緒に行きたそうな顔をしていたけど、お昼寝の時間ということで断念。
人見知りな唯ちゃんだけど、私と一緒に美加のお迎えに行こうとしていたし、他人と接するのがまったくダメという訳ではなさそうだ。

美加「んーさて、まずはどこに行こうかなー」
薄手のコートを羽織り、外に出たところで美加が言う。

私「それだけど、最初に行きたいところがあるの」
美加「ほう」
男の人のような返事を返す美加。

私「あのさ、明君の事、覚えている?」
美加「明君ね。もちろん。私、そういう物覚えは良いんだから」

私「一昨日偶然会ってね。美加が来たら一緒に会いに行くね、って約束したの」
美加「へぇ…って、じゃあ行きたいところって、もしかして…あの?」
私「うん。あの家よ」

私はそう言って、ここから少し離れた山の中腹にある、堀塚家の邸宅に顔を向けた。


821:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 14:05:04.91 fU+mZIGV0
8/10
私「紗希ちゃんの事も覚えている?」
2人で並んで歩きながら、美加に聞く。

美加「そりゃ、もちろん」
私「だよね」
美加「うん。絵に描いたようなお嬢様。明君と一緒に紹介してくれたよね」
私「うん。…え?一緒に紹介した?」
美加「そうよ。こちらが明君で、こちらが紗希ちゃん、って」
私「あれ…?」

あれれ…私が紗希ちゃんと初めて会った時、美加も居たような…?
でも、美加の言うとおり、そうやって紹介した気も―

美加「どうしたの?」
私「ん」
ちょっとした疑問で思わず足を止めてしまった私に、美加が声を掛けてくる。

私「勘違いかなぁ…。紗希ちゃんと初めて会った時、美加も居たような気がして…」
美加「古乃羽が紗希ちゃんに初めて会ったのは、いつ?」
私「えーっと…6年生の時かな」
中学には入っていなかったし、これは確かだ。

美加「じゃあ居ないよ。だって、私がここに来たの中学に入ってからだもん」


822:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 14:06:44.32 fU+mZIGV0
9/10
私「あ、そうだね…」

そうだ。美加を誘ったのは、中学に入ってからだ。

私「じゃあ美加、明君のお父さんに会ったことはない?」
美加「ないねぇ…。私が明君に初めて会った時、お父さんはもう亡くなっているって聞いたし」

どうやら、美加の記憶が正しいようだ。
私が紗希ちゃんと初めて会った時、紗希ちゃんは明君のお父さんが連れてきてくれた。…その数ヶ月後に、亡くなってしまうお父さんが。
でも、そうすると―

私「紗希ちゃんと会った時、私たち川原で遊んでいたの。そこに紗希ちゃんが来て、4人になったのよ」
美加「古乃羽と明君と、紗希ちゃんと…明君のお父さんで4人じゃない?」
私「ううん」
私たちは車椅子の紗希ちゃんを加えて4人で遊んでいて、明君のお父さんはニコニコしながらそれを見守っていた。

私「私と明君と紗希ちゃんと…もう1人居たのよ。確か、女の子―」

そう、女の子だ。だから美加と勘違いしていた。

あの女の子は…誰?


823:赤緑 ◆kJAS6iN932
12/02/20 14:08:59.04 fU+mZIGV0
10/10
美加「これから明君達に会う訳だしさ、聞いてみればいいんじゃない?」
悩みこんでしまった私に、美加が言う。

私「…うん、そうだね」
そうだ。聞いてみればすぐに分かることだ。
でも―

美加「何かあるの?」
私「ん…ううん」

聞いてみれば分かる。
あの時、もう1人いた女の子は誰?と。

でも何だか…上手く言えないけど、変な感じがする。
美加が時々感じるっていう「違和感」って、こんな感じなのかな?
ただの記憶違いだとは思うのだけど…。

まぁ、どうせ地元の子か、私と同じように夏休みに帰省していた子だろうな。
明君に聞いてスッキリさせよう。

私はそう考えて、美加と堀塚家に向かう。

―それが「聞いてはいけないこと」だということを、私はこの時思い出すことが出来なかった。





824:本当にあった怖い名無し
12/02/20 16:00:17.50 T6gO9Xja0
赤緑  乙。

面白かったよ。

825:本当にあった怖い名無し
12/02/20 19:43:43.81 TQznhexD0
おk

826:本当にあった怖い名無し
12/02/20 20:29:38.62 TQznhexD0
ウニさん待ちです

827:本当にあった怖い名無し
12/02/21 14:37:36.45 uUl+mtWK0
師匠スレ行けよ

828:本当にあった怖い名無し
12/02/21 18:30:24.02 t53l4aAV0
赤さん乙

829:本当にあった怖い名無し
12/02/22 03:24:59.47 048W2gDZ0
なにこれ?
ここ、ラノベ風とかもありなの?

830:本当にあった怖い名無し
12/02/22 04:18:16.44 JiAar68N0
>>829
ラノベ風でもラノベもどきでも行間空けまくりの携帯小説風でもおk

831:本当にあった怖い名無し
12/02/22 04:27:20.13 UWKwN02S0
そろそろご新規の書き手さん来て欲しいね

832:本当にあった怖い名無し
12/02/22 11:20:08.22 gFJ5Ywn90
パクられるからなー

833:海 ◆2c5xyi71ig
12/02/22 17:59:43.96 3LdBQLau0
test

834:本当にあった怖い名無し
12/02/22 20:10:28.74 TbcI6AcQ0
おk

835:海 ◆2c5xyi71ig
12/02/23 00:21:51.42 ZPAi04cc0
横須賀での出来事

初めて関東に行った私はかなりテンションがあがっていました。
古着やアメカジが好きだったため、喜んで上陸し、伍長と二人で横須賀の街に繰り出しました。
「ドブ板通り」というところがあります。米軍基地から少し歩いたところにあり、
古着屋、雑貨屋、舶来品を売る店が軒を連ねており、私からすると宝の山のように思いました。

836:海 ◆2c5xyi71ig
12/02/23 00:26:38.95 ZPAi04cc0
一軒一軒、覗いていき「あれも欲しいなあ、ああこれもいいな」と品定めをしていました。
とある小物を扱っていた店でのことです。
「なあ、ここ覗いていこうぜ」と伍長が行きたそうだったので、「ええ、行きましょう」
と私もついて行きました。
その店はライターや指輪、ネックレスなどのアクセサリーが多く陳列されていました。

837: 忍法帖【Lv=16,xxxPT】
12/02/23 00:27:57.28 2xEoEIOz0
オカルトSFハイファンタジーメルヘンチックスペースオペラライトノベル携帯小説を出せよ!?♪。

838:海 ◆2c5xyi71ig
12/02/23 00:28:47.82 ZPAi04cc0
「伍長、こんなのに興味あるんですか?」とちょっと冷やかしていると、壁際のケースに
並んでいるジッポライターに目が行きました。
「ベトナムジッポー」と表示があり、ベトナム戦争のとき、実際に米兵が使っていたもの
との紹介文と、表に彫ってある字やイラストは兵士自身が彫ったので、世界に一つだけだ
と書いてあります。

839:本当にあった怖い名無し
12/02/23 06:27:53.39 oPsGMSmu0
それからそれから

840:本当にあった怖い名無し
12/02/23 06:55:35.68 xJ2K6To10
おやおや、ぷっつり切れてるなぁ、
規制に巻き込まれたか、急な召集でもかかったか・・・

841:本当にあった怖い名無し
12/02/23 19:15:46.19 Yx9gfYHN0
世界に1つだけだと書いてあったんだろ
ああ怖い怖い

842:本当にあった怖い名無し
12/02/23 21:07:50.99 ae5bGv5e0
そんなオチ怖くないからやだ

843:本当にあった怖い名無し
12/02/23 23:08:57.31 JIP7kW3h0
実はベトナムで亡くなった兵士のジッポだったってオチか?
前に売っているのを見たわ。

844:本当にあった怖い名無し
12/02/24 06:18:48.23 VHZzFzZN0
海乙

845:1巨人の研究後編コピペ1
12/02/24 12:28:45.42 AVSsPknX0
「さあ、行こう」
その言葉に背中を叩かれ、発進する。大学病院まではお互い無言だった。僕は何かを考えていたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。
大学病院の駐輪場に到着し、弾むように後ろから降りた師匠に目で問いかける。
今度はどうしても同席したかった。何が起こっているのか、僕なりに知りたかったから。
「まあ、いいだろう。一緒に来い」
はい、と言ってすぐに自転車に施錠して師匠の後に続く。
正面玄関から入ると、病院のロビーには沢山の人がいた。さすがに大学病院は大きい。インフルエンザに罹った時に行った、自分のところのキャンパスにある、とってつけたような医務室とは雲泥の差だ。

846:1巨人の研究後編コピペ2
12/02/24 12:29:26.53 AVSsPknX0
師匠は勝手知ったる他人の家、というように人の波をすいすいとかき分けてフロアの奥の方へ向う。案内板を見ると入口から一番奥に入院病棟があるらしい。
通路を抜けて、ようやくその入院病棟の待合いに到着した。
そこに見覚えのある人が待っていた。
ほんのりと桜色をしたナース服を身に付けている五十歳前後の女性。怒っているような、呆れているような表情。
「やっぱり、あなただったのね」
野村さん、だったか。

847:巨人の研究後編コピペ3
12/02/24 12:30:00.30 AVSsPknX0
師匠が以前入院していた時にお世話になった看護婦さんらしい。その後も長くつきあいが続いており、戦時中に撮られたというある一枚の写真にまつわる事件にも巻き込まれていた。より酷い巻き込まれ方をしたのは僕の方だが。
野村さんはかつて受け持った患者という枠を超え、まるで自分の娘のように師匠のことをとても気にかけていて、師匠の方はそれを狡猾に利用しているという構図がほの見える。
「センセイ、気が利くなあ。電話してくれてたんだ。じゃあ、用件は分かるよね?」
師匠は「お願い」というように両手を合わせ、上目遣いにシナを作る。
野村さんは何か言おうとして上半身を膨らませたが、やがて風船が萎むように深い溜め息を吐くと、「ついて来なさい」とだけ言って踵を返した。

848:巨人の研究後編コピペ4
12/02/24 12:30:34.62 AVSsPknX0
その様子から垣間見えたのは、長年の経験が降り積もって出来たかのような諦観だった。
気力が抜けたように見えたが、さすがに職業柄、足取りはキビキビとしていた。近くのエレベーターの方へ歩いて行くのを二人して追いかける。
上へ向かうボタンを押して箱が降りて来るのを待っている間、「その節はどうも」と僕からも挨拶をしたが、じろりと睨まれただけだった。
三人で乗り込むとエレベーターは静かに上昇し、七階で停止した。扉が開くと、真っ先に循環器科という案内板が目に入った。
野村さんはすぐ近くにあったナーステーションへ行き、何人かの看護婦と短い話をした後、僕らの方へ振り向いた。
「こっちへ」
そしてさっさと歩き始める。

849:巨人の研究後編コピペ5
12/02/24 12:31:22.02 AVSsPknX0
確か看護婦長だと聞いていたが、さすがに病院でそういう姿を見ると風格というか威厳のようなものがあった。病棟の廊下を歩きながら「この入院病棟の看護婦長なんですか」と訊いてみたが、「上から下まででベッドがいくつあると思ってるの」と笑われた。
説明を聞くに、どうやら各階ごとに小児科だとか泌尿器科だとかに分かれていて、それぞれに専属のスタッフと看護婦長がいるらしい。
では、その妙な症状を訴えるという患者は、たまたま野村さんが受け持っているフロアにいたのだろうか。
僕が抱いた疑問に先回りするように師匠が耳打ちする。
「センセイが診察した、精神以外の入院病棟の患者は全部で十人。そのうち三人がここにいるはずだ」
「会わせられるのは二人だけだからね」
聞こえていたらしい野村さんが怒ったような口調で言う。「いろいろと難しい人もいるんだから。あなたはだいたい……」
その口から憤懣が出掛かったが、また肩を落としてそれが抜けて行く。

850:巨人の研究後編コピペ6
12/02/24 12:32:02.21 AVSsPknX0
師匠は「いいよ、いいよ。会わせてくれるだけも本当にありがたいことでございます」と卑屈にお追従し、ますます野村さんの溜め息が大きくなる。
「ここ」
廊下を歩き続け、立ち止まったのは四人部屋の前だった。前二つのベッドは空いているのが見えた。
「待っていなさい」と先に野村さんが部屋に入り、奥のベッドにいる誰かと話をしているようだった。衝立でよく見えない。
やがて戻って来て、ゆっくりとした口調で言う。
「いい? 余計なことは絶対に言わないこと。何が余計かは、判断できるでしょうね」
「大丈夫。信用して。でもわたしはどんな立場って設定?」
「医学部の学生が、実習の一環で入院している患者一人一人とお話をしに来たってことにしてる」
「ありがとう」

851:巨人の研究後編コピペ7
12/02/24 12:33:37.49 AVSsPknX0
師匠が目で合図したので僕も一緒に病室に入る。薬品の香りが入り混じった、甘ったるい廊下の匂いともまた少し違う、何と言うか独特の匂いがする。
野村さんは外で待っているようだ。
衝立の向こうにはベッドが二つあった。片方は布団がめくれており、住人は不在のようだったが、もう片方には小学校高学年か、あるいは中学一年生くらいの坊主頭の男の子が興味津々という顔でベッドの上に上半身を起こしていた。
「こんにちは」
師匠が愛想よく首を傾けると、小さな声で「こんにちは」と返事があった。
循環器科ということは心臓でも悪いのだろうか。痩せてはいたが血色は良く、重い病気のようには見えなかった。
ベッドのそばにあった丸イスに腰掛けると、師匠は男の子に「いつごろから入院しているの? 退屈?」と親しげに話しかける。
男の子は「退屈」と言って、はにかんだ。

852:巨人の研究後編コピペ8
12/02/24 12:37:46.83 AVSsPknX0
それからしばらく入院中のことや好きな漫画のことなどを話題にして話が弾んでいたが、やがて師匠から「ここ、夜はお化けとか出るんじゃない?」という何気ない一言が零れ落ちた。
隣のイスに座り、ただ二人のやりとりを聞いているだけだった僕も、師匠が本題に切り込んで行ったことが分かって緊張する。
男の子は何か重大な隠し事をこっそり告げるというような仕草で師匠の耳元に口を寄せた。
「出るよ」
「え? ほんとに?」
わざとらしく驚いて見せている。男の子は頷きながら、入院してからこれまでに見た幽霊の話を始めた。
どの話も妙な臨場感があり、夜に聞いていれば相当怖かっただろうと思える内容だったが、僕が期待したようなキーワードが全く含まれていなかった。
小人に関する話が一つもなかったのだ。
師匠も一切水を向けることもなく、ただひたすら男の子の話に怖がって見せているだけだった。一体どうするつもりなのだろうと思って、やきもきしながらも口を挟めないでいると、師匠はふいに持参した荷物をあさり始めた。

853:巨人の研究後編コピペ9
12/02/24 12:44:30.69 AVSsPknX0
そしてさっき買っていた缶ジュースを取り出す。そう言えばまだ飲んでいなかった。もう温くなっているんじゃないだろうか。
師匠はベッドの男の子からは見えない角度で缶ジュースを持ったまま、「ちょっとクイズをするけど、受けて立つ?」と訊いた。
男の子はうんいいよ、と頷く。
「じゃあ目を閉じて。今から渡すものがなんなのか当てられたらキミの勝ちだよ」
「分かった」
素直に目を閉じる。師匠は男の子の右手を取り、缶ジュースを握らせる。ほっそりした手に三百五十ミリリットルの缶はやけに大きく見えた。
「あれ~。これなんだろう」
男の子は目を閉じたまま首をかしげている。
師匠はもう笑っていない。真剣な表情で缶を見つめている。
「う~ん」と唸って考え込んだ男の子に、師匠は一言ささやいた。
「ヒントは、かん、ナントカ」
それを聞いた瞬間、男の子の顔が綻んだ。

854:巨人の研究後編コピペ10
12/02/24 12:45:51.41 AVSsPknX0
「分かった」
そしてその口から出た答えは、僕の予想していたものとは違った。
思わず「え?」と言いそうになって、慌てて口を塞ぐ。しかし師匠は「せいか~い」と言って笑顔を作ると男の子の手から缶ジュースを素早く抜き取り、後ろ手に隠す。
男の子は目を開け、「あれ?」と言ってキョロキョロしている。師匠のジェチャーに気づいた僕はこっそりとその手から缶ジュースを受け取り、荷物の中に隠す。何故か分からないが、もう男の子に見せたくないらしい。
それは、彼がクイズの答えを間違えたことと無関係ではないだろう。
「ご褒美はこれだ。えいっ」
師匠は誤魔化すように素早く男の子のほっぺたにキスをした。
「じゃあ、もうわたしたちは行かなきゃ」
目を白黒させている男の子を置いて僕らは慌しく病室を出て行く。
廊下では野村さんが腕組みをして待っていた。
「なにか変なことしてなかったでしょうね」
「してないしてない。してないよ、な?」
「ええ。まあ」
「とにかく、本当に余計なことは言わないでよ」

855:巨人の研究後編コピペ11
12/02/24 12:52:35.66 AVSsPknX0
野村さんは何度目かの釘を刺すと、さらに廊下の奥へ歩き始めた。僕は後ろをついて行きながら、さっきの不思議なやりとりのことを考える。その横で、師匠は視線を尖らせながら前を見据えている。
「ここよ」
病室の前に到着し、また野村さんが一人で先に入る。すぐに出てきて、「さっきと同じで医学部生ってことにしてるけど、本当に……」と言い掛けた所に、「余計なことは言いません」と師匠が言葉を繋ぐ。そして待ちきれないと言うように病室の中へ消えて行く。
僕もすぐに後を追う。
今度も四人部屋だったが、手前の二つのベッドには老人がそれぞれ布団を被って寝ていた。その奥にはやはり衝立があり、回り込むと、女の子がちょうどベッドから身体を起こすところだった。
「あ、寝ててもいいよ」
師匠が慌てて手を振ると、「大丈夫です」と静かな声が返って来た。
向かいのベッドは空だった。今度は住人がいるような気配はない。僕の視線に気がついたのか、女の子は「隣の人、昨日退院しちゃった」と言って笑った。
さっきの男の子よりは少し年上だろうか。やはり痩せていて顔や服の袖から出ている手がやけに白い。

856:巨人の研究後編コピペ12
12/02/24 12:54:46.93 AVSsPknX0
「どんな人だったの?」
丸イスを引き寄せながら師匠が口を開いた。
「う~ん。お母さんくらいの年の人」
「そうなんだ」
そんな会話から始まり、また当たり障りのないやりとりがしばらく続いた。僕はすべて師匠に任せきって、邪魔にならない程度に相槌だけを打っている。
「病院って、お化けが出るっていう人いるけど、どうなのかな」
「あ、私見たよ」
さっきの再現のように女の子が体験談を語る。しかしさっきの男の子と同じ話は一つもなかった。
横で聞いているだけの僕には師匠が何を考えているのか分からなかった。
「ちょっとクイズを出すけど、いい?」
「いいですけど」
「今から渡すものが何なのか、目を閉じたまま当ててみてね」
それを聞いた女の子は少し緊張したような顔をする。何かの検査だと思ったのだろうか。
それでも「どうぞ」と言って目を閉じたので師匠は荷物からまた缶ジュースを取り出した。
女の子の右手を誘導して、それを握らせる。

857:巨人の研究後編コピペ13
12/02/24 12:56:16.11 AVSsPknX0
「どう? 何か分かる?」
缶ジュースを右手で握ったまま女の子は考え込む。分かりそうなものなのに、どうしてだろう。
「ヒントは、かん、ナントカ、だよ」
師匠はささやく。さっきと同じ言葉。これでもう分かるはずだ。
分かるはずなのに。
女の子は恐る恐るという様子で、目を閉じたままぽつりと言った。
「かんでんち」
それを聞いた瞬間、鳥肌が立った。
頭が事態を理解する前に、直感が告げたのだ。
乾電池。
さっきの男の子と同じ答え。偶然じゃない。絶対に。
分かった。分かってしまった。一体何が分かったのか、その頭の中の嵐が形になる前に師匠が言った。
「正解だよ。じゃあ今度は目を閉じたまま耳を塞いでみて」
そっと缶ジュースを右手から抜き取る。
そして言われるがままに両手で耳を塞いだ女の子から視線を逸らし、師匠は僕の顔を見る。その瞳が爛々と輝いている。

858:巨人の研究後編コピペ13
12/02/24 13:00:56.59 AVSsPknX0
「これが最近になって急に現れた、精神科にかかる人が訴える奇妙な症状。触覚の異常により、物の大きさを誤認するという事例。目を開けている時には感じない。
つまり視覚により補正される時や、あるいは事前にそれが何なのか認知している時には現れないが、それらを遮断されるとたちまちに現れる不可思議な現象。
小さい。小さい。小さい。何もかもが、実際の大きさよりも小さく感じられてしまう。
缶ジュースを握っているのに、それが乾電池に思えてしまうくらいに」
僕の目を見つめたまま、師匠はささやく。
「わたしは巨人を六つに分類したな。
 第一の分類は『伝説上の巨人』
 第二の分類は『巨人症による巨人』
 第三の分類は『UMAとしての巨人』
 第四の分類は『人類の縁戚としての巨人』
 第五の分類は『妖怪としての巨人』
 第六の分類は『フィクションとしての巨人』
 …………」
言葉を切って、師匠は手のひらで恭しく女の子を指し示す。
「彼女たちこそが、そのどれにも当てはまらない、第七の巨人」
僕は師匠の言葉のそのわずかな隙間の中で息を飲む。


859:巨人の研究後編コピペ15
12/02/24 13:03:33.59 AVSsPknX0
「Giant sensory syndrome, 巨人感覚症候群の発症者だよ」

女の子は目を閉じて耳を塞いでいる。
師匠は彼女に視線を向けもせずに僕を試すように見ている。
巨人感覚症候群…… ジャイアント・センサリー・シンドロームだって?
「ちなみにわたしがつけた名前だ。捻りがないところが気に入っている」
満足げにそう言った時、足音が聞こえて振り向くと野村さんが病室に入って来た。
「なにをしているの」
声が不審げだ。
女の子に耳を塞がせているのは、はたから見るとやり過ぎだったかも知れない。
「いや、もう終わったよ」
師匠は慌てたように立ち上がった。何ごとかと女の子も目を開ける。
「ごめんね、急に用事が出来ちゃって。もう行かなきゃ」
師匠は手を振ると、ベッドに背を向けた。僕も急いで後に続く。
「待ちなさい」
追いすがってくる野村さんに廊下で捕まった。

860:巨人の研究後編コピペ16
12/02/24 13:06:53.29 AVSsPknX0
「あれほど言ったのに何をしているの、あなたは」
かなり怒っている。
「何もしてないよ。余計なことも言ってないよ、な?」
「ええ、まあ」
言い訳はあまり通用せず、それから二人してギュウギュウに絞られた。
やがて他の看護婦の視線が気になったのか、野村さんは来た時に乗ったエレベーターに僕らを押し込んだ。そして自分も乗り込んで一階のボタンを押す。
「だいたい、いつもいつもあなたは……」
僕は際限なく続く説教に、野村さんに普段どれだけ迷惑をかけてるんだこの人は、と唖然としていた。
さすがにシュンとしてうなだれた師匠に少し声のトーンが落ちる。
「そう言えばあなた、最近また検査をさぼってるでしょう。真下先生も心配してるんだから、ちゃんと受診しなさい」
野村さんがそう言った瞬間、到着を告げる音と共にエレベーターのドアが開いた。一階に戻ったのだ。
師匠がバネのように顔を跳ね上げる。

861:巨人の研究後編コピ17
12/02/24 13:21:09.64 AVSsPknX0
そしてエレベーターから我先に出ると、くるりと向き直るや顔を突き出して舌を伸ばした。
「い・や・だ。べろべろべろ~ん」
そして逃げた。
走って。
「ちょっと、待って」
僕も一緒に逃げ出す。
野村さんが後ろから何か大きな声で怒鳴っているが、良く聞こえなかった。「院内を走るな」だろうか。
病院のスタッフや来院の人に何度かぶつかりそうになりながらも、僕らは無事に正面玄関を抜け出した。
少し胸が苦しい。ハアハアと息をつきながら横目で見ると、師匠もこちらを見て笑った。僕もつられて笑う。
それから追っ手が来る前にと、すぐに自転車に乗り、家の方へ向けて出発する。夏なのでまだ日は高いが、街には夕方がひっそりと近づいていた。空の色で分かる。
五分ほど走ってから、街なかで師匠は降りた。僕も自転車を降りて並んで歩く。そして歩きながら考えをまとめた。
巨人感覚症候群。まるで自分が大きくなってしまったかのような感覚を生じている、他者からはけっして目に見ることができない巨人たち。

862:巨人の研究後編コピ18
12/02/24 13:34:15.84 AVSsPknX0
「あの子たちは、目を開けていると普通なんですか」
「そうだな。視覚や知識など、本来そうあるべき大きさを補正できる手段があるならその触覚の異常は起こらないみたいだ。
いつもつけている下着なんかも視覚には入っていないから大きく感じられそうだけど、それは自分がつけているものがどんなものなのか知っているから大丈夫なんだな。
あ、そうか。愛用のコップって書いたのはまずかったか」
アンケートの最後の設問のことらしい。
あれで巨人感覚症候群に罹患しているかどうか調べるつもりだったのか。手に持った時にコップが異様に小さく感じられると? どちらにしてもピンと来る人には通じただろうから、今日アンケートに回答してくれた人の中にはいなかったに違いない。
「でもな。視覚や知識で補正できるって言っても、病状の初期段階に過ぎないからなのかも知れない」
ぞくりとした。
足が止まりかける。周囲には色々な人が所狭しと歩いている。駅前の大通りだった。
「噂を聞いた時からわたしはそれを懸念していた。何か恐ろしいことが起こるなら、そこから先じゃないかと。さっきセンセイに確認したんだ。精神病床の入院患者の中には、実際に『すべてが小さく見える』と訴える人が、わずかながらいるらしい」
まさか。と思った。それが小人の目撃談と関係しているのか。
「最初に、巨人が増えているって言ってたのは、このことですか」
冗談だと言っていたのが、まるきり真実をついていたというのか。まさか、本当に彼らは症状が進むことで触覚や視覚だけでなく、実際に巨人化して行くとでも言うのだろうか。
師匠は笑い出した。

863:巨人の研究後編コピ19
12/02/24 13:39:22.60 AVSsPknX0
「おいおい。それこそフィクションだよ。そんな無茶苦茶なこと起こるわけないだろ。
まあ二メートル半ばくらいまでなら成長ホルモンの過剰分泌による巨人症でも起こりうるから、一概には言えないが。
でもそんな視覚にまで症状が進行している人自体もまだごく少数だし、それに彼らがその目で他の人間を見て、小さい人がいる、と思ったとしても、それが今街じゅうで湧き出している小人目撃談のオリジナルになりえるかな」
そう言われてみると確かにおかしい。
そこまで病状が進んだ人が、人口に膾炙する噂を流す環境におかれているだろうか。精神病床に入院中ならもちろんそんなことはないだろうし、入院していなくとも、これは人間が小さく見えるどころの話ではないのだ。
すべてが小さく見えるのなら、そんなことを言う人の話を周囲がまともにとりあってくれるだろうか。
それに僕自身が否定しているのだ。小人の話を普通の学生の友だちから聞いたのだから。彼らに取り立てておかしなところはなかった。
特に二人目の女の子の話は、小人が牛乳配達の箱の中にいた、というものだった。箱は普通なのに、人だけが小さく見えている。
まるで噛み合わない。
では一体どういうことだ。巨人感覚症候群と、小人目撃談。嵌りそうで嵌らないパズルのピースだ。
「今日のアンケートで小人を見たという人たちの共通点に気づいたか」
「共通点、ですか」
少し考えたが、まだ集計していないのではっきり思い出せない。
「小人を見たという人たちは全員、今までに体験した心霊現象の項目で小人以外にもチェックを入れていた」
「えっ。そうでしたっけ」
そう言われればそうだったかも知れない。小人の話だけ詳しく訊いたので他の話には食いつかなかったけれど。

864:巨人の研究後編コピ20
12/02/24 13:46:13.17 AVSsPknX0
「全員、幽霊を見ていたな」
そうか。僕もそうだ。
足元の小石を軽く蹴り、師匠は自分のペースで歩き続ける。僕はその横に並んで人の波を避けている。
「今日の巨人感覚症候群の発症者二人も幽霊を見ていた。この符合の意味するところが分かるかな」
かぶりを振る。しかし頭の中にはぼんやりした答えのようなものが浮かびつつあった。
「私は巨人感覚症候群の発生原因には、霊感が関係していると考えている。
ある地域に限定して起こっているという部分で、その原因がある程度は絞られてくるだろうが、細菌やウイルスの飛沫感染や、なんらかの公害、そして特定の多層建築物を媒介とした高周波による脳への影響など、どれもしっくり来ないんだ。
それは私自身感じているある感覚の存在のせいだ」
「ある感覚?」
オウム返しに訊く。
「衝動。叫び。そうだ。咆哮のようなもの。説明しにくいが、耳には聞こえず、幻聴ですらない何かそういうものが、頭の中を通り抜けている気がする。今も」
思わず耳を澄ましたが、ざわざわした雑踏の音しか聞こえない。
「霊感の強い人間はこういうものに影響されやすい。そしてその中でも、普段から心の病を抱えている者や、入院中で心身が弱っている者はそれが如実に現れるんじゃないだろうか」
「それが巨人感覚症候群だと?」
言葉とは裏腹に、師匠は確信めいた表情で頷いた。

865:巨人の研究後編コピ21
12/02/24 13:50:17.59 AVSsPknX0
「だけどまだ分からないことが多すぎる。何故自分が巨人だと感じてしまうのか。それが進行した時に何が起こるのか。その衝動、咆哮の主体は一体何なのか…… でも現時点で推測できることが一つある」
「それはなんですか」
ドキドキする。師匠と出会ってから何度味わったか分からない高揚感。
「それはね」と師匠は僕の方を向いて言った。「その衝動、咆哮に影響を受けているのはそういう弱い人間だけではないんじゃないかってこと。
浮遊する霊体。地縛される魂。人間の死後に現れるそうした存在も、影響を受けうると考えている。幽霊に、その者が生前信じていた宗派の経文や祝詞を唱えると苦しがったり嫌がったりする。これはもちろん『幽霊はこういうものに弱い』という生前の記憶がそうさせるんだ。
そして人間が怖がるものを同じように怖がるというパターンも多い。犬がその代表か。そんな幽霊にこの得体の知れない存在からの咆哮はどう影響されるのか」
「同じ、なんですか」
「そうだ。人間と同じように、この街に存在する幽霊も、その一部がこの巨人感覚症候群と同じ症状に陥っている」
空はまだ高く、夕闇にはまだ時間がある。アスファルトは日中の熱をこもらせて、分厚い空気を足元から立ちのぼらせている。
なのに、どこからともなく寒気がひたひたと押し寄せて来ている気がした。

866:巨人の研究後編コピ22
12/02/24 13:53:22.66 AVSsPknX0
「霊体たちが、巨人化をするとでも言うんですか」
師匠は「違う」と首を振った。
「お前は知っているはずだ。霊はあるべき姿で現れると。若く美しいころの姿で現れる女性の霊。その後に殺された時の血まみれの姿で現れる場合。生命活動が停止し、腐乱した状態で現れる場合。腐敗が進み、骸骨となった姿で現れる場合。
どれもありうる。選ぶのは霊自身だ。己のあるべき姿を。生きている人間のようにはこの物質的世界に束縛されないからこそ、そんなことが起こる。中には生前にはなかった姿へと変貌を遂げる場合もある。四肢の増減や五体の変形。動植物との融合。
怪物化。様々なケースがある。そんな霊が、巨人感覚を得てしまったらどうなるか。想像してみるといい。己の周囲にあるものすべてが小さい。小さい。小さい。まるで違う世界にいるようだ。己が望んだわけでもないのに。その時、あるべき姿はなに?」
寒気が。意思を持ったように体中を這い回る。
師匠が僕を試すように見つめている。
「あるべき姿は…… その小さな世界に適合するための身体」
僕は震える声で呟く。その後を師匠が継ぐ。
「そうだ。そのためにみんな小さくなる。彼らはみな、巨人であるがゆえに、小人なんだ」
師匠と僕の間にあるわずかな空間を、見ず知らずの人々が通り抜けて行く。僕は息を止めてその瞬間を目に焼き付ける。

867:巨人の研究後編コピ23
12/02/24 14:01:25.29 AVSsPknX0
向かい合った師匠が真っ直ぐにこちらを見ている。
小人を見る人が増えているということは、巨人が増えているということだ。
自ら冗談だと苦笑した師匠の言葉が頭の中に蘇る。
冗談だって?
ただの方便だ。師匠は始めから分かっていたに違いない。
アンケートで小人を見たと答えた人たちが、全員幽霊を見たことがあったということもこれで説明がつく。彼らは、そしてこの僕も、ただ幽霊を見ていただけだったのだ。
巨人であるかのような感覚を得てしまったがために、小人になってしまった霊体を。だから目撃例がパターン化されない。幽霊の現れ方など、それこそ千差万別だからだ。
師匠は講義終了とでも言いたげな表情を浮かべ、再び前を向くと歩き始める。僕はそれを呆然と見ている。
その周りを沢山の人々が行き交っている。誰も僕らのことを見ていない。スーツ姿の師匠が自転車の後輪に立ち乗りしていた時にあれほど集まっていた視線が、今はもうない。
女が一人ただ歩いているだけでは、大通りの中の取るに足りない景色の一つに過ぎないとでも言うように。
けれど僕は雑踏の中で立ち止まり、自転車のハンドルを支えたまま、彼女の後ろ姿を見つめている。
どうしてみんなは見ていないのだろう。僕と同じように。
信じられなかったのだ。
この人を知らないで、平気でいられる世界が。

(了)

868:巨人の研究後編コピ24
12/02/24 14:02:16.04 AVSsPknX0
(幕のあとで)


―わたしはしっている

ハッとして周囲を見回す。師匠の背中を見つめたまま、つかの間ぼうっとしていたところから現実に引き戻される。
なんだ今の声は?
どこからともなく聞こえた気がした。けれど、本当に声だったのだろうか。耳に声色が残っていない。白昼夢、いや、幻聴だろうか。
雑踏の音が大きくなった気がする。そばを歩くビジネスマンの肩が当たる。よろけそうになりながら、僕の目はある存在に気づいた。
やはり幻聴だったのだろう。それを見たことにより、頭の中でその言葉が連想されたに過ぎない。
大通りを歩く人々の中に、たった一つこちらを向いている顔があった。道路を隔てた向かい側の歩道に、それはいた。身じろぎもせずに、じっと師匠の方を向いている。
白い仮面。のっぺりとして目鼻の形に表面が凹凸している。目の部分が開いているのかも判然としない。距離が離れているせいか、服装もよく分からない。ただ行き交う歩行者の群の後ろに白いその顔が浮かび上がって見えている。
師匠もいつの間にか立ち止まっている。その存在に気づき、睨むようにそちらを見ている。
ただならないものを感じて、僕はゆっくりと師匠のもとへ近寄った。
「なんです、あれは」
「見たことがある。あの仮面」
師匠の声が高ぶっている。震えているようだ。
「なんとかっていう劇団のポスターにあった」

869:巨人の研究後編コピ25
12/02/24 14:02:59.06 AVSsPknX0
劇団?
そう言われてみると覚えがある気がする。確かあまり有名ではない小劇団だったはずだ。街なかでちらほらとポスターを見かけるが、どこの劇場で公演しているのかも知らない。ただ、全員が白い仮面を被って演じている舞台写真が載っていた。
前衛的なのか、それともそういう手法が一ジャンルとしてあるのか。
「ずっと感じていた視線は、あいつか」
猫の毛が逆立つように、師匠の身体の周りに針のように尖った空気が発散されているのを感じる。
今日出発した時から師匠が言っていたのはこのことだったのか。
どうしてこのタイミングで?
そう思った瞬間に、もう答えはあった。どう考えても、一連の巨人あるいは小人に関する出来事と無関係ではない。
白い仮面の人物は少し俯いたかと思うと、クックッ、と小刻みに顔を上下させた。
笑っている。
間を隔てる片側三車線の道路を沢山の車が通る。前が詰まり、大型バスがゆっくりと僕らの視線を遮った。
十秒。十五秒……

870:巨人の研究後編コピ26
12/02/24 14:03:28.76 AVSsPknX0
やがて動き出したバスが去った後には、もう白い仮面は見えなかった。初めからいなかったかのように。
僕は師匠の性格は知っているつもりだ。
気にいらない相手に対してキレると、すぐに行動に移す。たとえ相手が誰であってもだ。何度もそれを見てきた。道路を車が走っていようが、それをかわしながら最短距離で向かって行くのが師匠のはずだった。
その師匠が動かない。
いや、動けないでいる。
顔色が蒼白だ。唇からも血の気が失せている。僕にもあの仮面の人物のただならない雰囲気は感じられたが、師匠はそれ以上に異様とも言える反応をしていた。
僕は何か話しかけようとして、それが出来ないでいる。雑踏に立ち尽くしている僕らを、みんな迷惑そうに避けて行く。
やがて師匠がこちらを向いて、蒼白い顔のまま口の端だけを上げて笑った。
 
(完)


871:本当にあった怖い名無し
12/02/24 14:06:02.40 +cmV2pb50
ウニじゃないけど、ホンモノ?

872:本当にあった怖い名無し
12/02/24 14:32:56.67 EH7aJe9u0
>>871
しね

873:本当にあった怖い名無し
12/02/24 15:20:22.50 wr6Svuj/0
コピペ乙
中編も頼むよ

874:本当にあった怖い名無し
12/02/24 17:19:21.51 +cmV2pb50
>>873
中編は師匠シリーズスレにあり。

875:本当にあった怖い名無し
12/02/24 18:48:28.32 Mvr8MTsJ0
何なの嵐なの?それとも週末に先手打ってウニに嫌がらせ?

876:本当にあった怖い名無し
12/02/24 18:53:13.02 HeOpYb1f0
中編かと思ったら後編やないか~い
乙と言って良いのか?
中編を頼む!

877:本当にあった怖い名無し
12/02/24 18:53:19.86 HA7DpqHN0
ドヤ顔でコピペしてるの想像すると笑えるなw

878:本当にあった怖い名無し
12/02/24 19:07:23.96 3H2tRJA+0
ウニへの嫌がらせなのかみんなに褒めてもらいたかったのか

879:本当にあった怖い名無し
12/02/24 20:00:55.34 IH5pgSvN0
>>845
ひでぇーーー!!!

ウニ本人が投下してるのに、なんでコピペ投下してんだよクズ!!!

お前一般常識ねぇの?!
信じられない!!!

ひっこんでろ!!

本気で頭きたわ!!

880:本当にあった怖い名無し
12/02/24 20:12:37.94 w7rrlyVk0
おk


881:本当にあった怖い名無し
12/02/24 20:31:45.49 w7rrlyVk0
ウニさん待ちです

882:本当にあった怖い名無し
12/02/24 21:24:12.81 ifwssBWvO
>>845

最悪だな…
ウニさんを追い出したいのか!?



883:本当にあった怖い名無し
12/02/24 21:37:23.39 jm7jY4ba0
そんなことで追い出されるようなタマじゃないと思うがw
でも感じ悪いのは確かだな‥‥

884:本当にあった怖い名無し
12/02/25 06:43:04.96 Hq0Hh0qW0
うん(笑)
それにスレ全部読んでないかも

885:本当にあった怖い名無し
12/02/25 13:52:57.58 ZCwwJmZn0
僕の目を見つめたまま、師匠はささやく。
「わたしは巨人を六つに分類したな。
 第一の分類は『伝説上の巨人』
 第二の分類は『巨人症による巨人』
 第三の分類は『UMAとしての巨人』
 第四の分類は『人類の縁戚としての巨人』
 第五の分類は『妖怪としての巨人』
 第六の分類は『フィクションとしての巨人』
 …………」


886:本当にあった怖い名無し
12/02/25 18:41:11.79 HtknXnxa0
何ここの信者・・
読めれば誰がコピペしても一緒だろ
頭来る、って何に対して頭にくるの?「ウニがコピペしなきゃヤダー」ってか?馬鹿じゃん
そもそもpixivで読めるものをここにコピペする意味が分からん
わざわざ忍法帖のレベル上げを地道にしてまですることじゃないだろ

887:本当にあった怖い名無し
12/02/25 20:46:35.15 zwuyLi5C0
>>886
うーん、自分の場合は、カラオケを聞かされてる気分
本人じゃないけど、同じ歌詞、同じメロディーなんだから一緒だろ?

いーえ、違います

または、友達に喜んでもらおうと買っておいたプレゼントを
あれ、渡すつもりだったんでしょ?自分が家の前に置いてきたよ、
って無断で勝手なことされたら

金も出してねーおめーが、ふざけたことしてんじゃねーよ!
訴えるぞ!

ですかね
だからあんまやってほしくないなー




888:本当にあった怖い名無し
12/02/25 20:56:39.45 arB4wzmX0
あなた本人なの?

889:本当にあった怖い名無し
12/02/25 22:32:53.02 vXqws/Dg0
著作権って知ってるかな

890:トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/25 23:24:13.77 KKcRHKWO0
師匠から聞いた話だ。


大学一回生の冬だった。
その日僕は朝から小川調査事務所という興信所でバイトをしていた。
バイトと言っても、探偵の手伝いではない。ただの資料整理だ。そもそも僕は一人で興信所の仕事はできない。心霊現象絡みの依頼があった時に、その専門家である加奈子さんの助手をするだけだ。
助手と言っても、僕のオカルト道の師匠であるところの彼女は、ほとんど一人で解決してしまうので、なかば話相手程度にしか過ぎないのではないかと、思わないでもなかった。
「おい、どうした」
声に振り向くと所長の小川さんが奥のデスクで唸りながらワープロを叩いていた。
雑居ビルの三階にある事務所にはデスクが五つあるが、いつも使われているのは小川さんが座っている奥のデスクと、そのすぐ前に二つ並んでいるデスクだけだった。あとはダミーだ。
いや、見栄というやつなのかも知れない。僕は県内最王手のタカヤ総合リサーチを除いて、小川調査事務所以外の一般的な興信所というものを知らないが、そんなに何人も所員を抱えている興信所なんて普通にあるとは思わない。
しょせん自営業だ。依頼客もそのくらい分かっていると思うのだが。
その使われているデスクにしたところで、師匠の指定席はたいてい開店休業状態。
何日も資料集めをして必要な情報を得る、というようなスタイルではなく、お化け絡みの話とくればとりあえず出向いて、そのままたいてい即解決、という実に効率の良い仕事をしているのでデスクは依頼完了後に報告書を作るためにちょろっと使うくらいだった。
「まじかよ、おい」
小川さんはのけ反るように椅子にもたれかかり、天井を仰ぎながら左手で顔を覆った。その指には煙草が挟まれている。
僕は新聞記事のスクラップを整理する手を止め、振り向いた。
「どうしました」
そう問いかけると、小川さんは忌々しそうにワープロを小突きながら深い溜息をついた。
「作りかけの報告書が消えた」
「保存してなかったんですか。まめに上書きしないと」
「……」
それには答えず、煙草を消してから伸びをして立ちあがる。そして洗面所の方へ向かった。

891:トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/25 23:26:21.42 KKcRHKWO0
小川さんは世に出回りはじめたばかりのワープロのような現代の利器には疎いのだが、字を書くのがあまり得意ではなかったので苦心して使っているらしい。
それでもこうしたトラブルのたびに毒づいて、「エデンのリンゴ」だとわめいた。
知らないなら知らないで良かったのに、なまじ知ってしまったがためにその功罪のすべてを身に背負うことになってしまったことを嘆いているらしい。
やがて洗面所から出てくると、小川さんは幾分さっぱりした顔で「昼飯食いに行こう」と言った。
もうそんな時間か。
「奢りなら」と言うと、すました顔で胸ポケットを叩く。
そんなところに財布が入っていないのは知っているし、どうせボストンなのだろう。いつもツケで飲み食いしては、翌月の支払いの時に、親を殺されたような哀しそうな顔をして払っているのも知っている。
しかし僕も労働基準法違反ではないか、という低時給で働いている身の上なので、奢ってくれるというのなら遠慮などしない。
「服部もどうだ」
もう一つの席にも水を向ける。
服部さんは僕と同じバイトの身だが、本格的に小川所長の助手として働いていて、お化け担当の加奈子さんと異なり、『まともな』興信所の仕事をしている。
「……」
服部さんは無言のまま、弁当が入っているらしい包を手に提げて見せた。
「そうか」
小川さんも苦笑いをして、無理には誘わなかった。
僕は未だにこの服部さんという男性のキャラクターがつかめないでいた。
年齢は加奈子さんと同じくらい。いわゆるフリーターで、この小川調査事務所では無難に仕事をこなしているようだが、いかんせん無愛想でニコリとも笑っているのを見たことがなかった。
自分からは話しかけてこないし、こちらから話しかけても反応がないことが多い。電話対応など、事務的なものはそれなりにやっているが、この事務所にいる人間についてはその全員を嫌っているかのような冷たさだった。
特に眼鏡の奥の目が怖い。

892:トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/25 23:27:42.30 KKcRHKWO0
つねに物静かで存在感が薄く、事務所内に一緒にいてもいつの間にか彼がいることを忘れていることがあった。
一度など、小川さんと加奈子さんと僕とで一全員緒に外出した時、留守にするので当然事務所に鍵をかけて出て行ったのだが、戻って来て鍵を開けると服部さんが一人でデスクに向かって仕事をしていた、なんてこともあったりした。
尾行が得意で、かつて所属していた大手興信所ではエースとして鳴らしていた小川さんに言わせても、「あいつはあれだけで食っていける」とのことらしいが、エース云々からして自己申告なのであてにはならない。
そして加奈子さんは服部さんのことを陰で『ニンジャ』と呼んでいた。名前とも掛けているらしい。
この興信所のバイトに本腰を入れているところを見ると、将来はこの道に進みたいのか、とも想像するが、この仕事はいわば客商売であり、この対人スキルで大丈夫かと他人事ながら心配になる。
「じゃ、ちょっと出てくる」
そう言ってドアに向かう小川さんの後を追いかける。服部さんは顔も上げなかった。


ボストンは小川調査事務所の入っている雑居ビルの一階にある喫茶店で、五十年配の脱サラ組らしい髭のマスターがやっていた。いつも客のいないカウンターを「塗装が剥げるんじゃないか」と心配するほど丁寧に拭いている。
アルバイトで女の子を一人雇っていて、ひかりさんという僕より二つ年上の専門学校生のその人のことを、加奈子さんは「マスターとできてるんじゃないか」と下世話な想像を活発に働かせてニヤニヤしていた。
「いつもの」
カウンターのお気に入りの席につくと、小川さんはそう注文する。これでナポリタンが出てくるはずだ。
僕は少し考えて「メープルトーストとアメリカン」と言った。
この店はコーヒーも料理もたいしたものは出てこないが、メープルトーストだけは別だった。
使っているメープルシロップは市販のものではなく、なんでもマスターにはカナダに移住している親類がいて近所の農家が作っているものを分けてもらっているらしいのだが、それをわざわざ空輸で送ってもらっているのだそうだ。

893:トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/25 23:29:11.22 KKcRHKWO0
親類に「日本で出てくるのとは全然違うから」と、一度おすそ分けでもらったものを食パンに塗ってみると、これが想像以上においしかったため、無理を言って定期的に送ってもらうようにし、喫茶店のメニューに加えたのだった。
確かに美味い。ふんわりとキツネ色に焼き色のついたトーストの食感と、甘みのなかにメープルの独特の苦みと風味があり、これをコーヒーで胃に流し込むのは至福のひとときですらあった。
並べられたものを無言で食べていると、カウンターの奥のテレビが連続通り魔事件の続報を告げていた。
「これ、まだ捕まってないんですね」と僕が言うと、マスターは口髭を撫でながら「みたいだねえ」と心配そうな口調で返した。「でも変な事件だよね」
このところ市内では弓矢を使った通り魔事件が連続して発生しており、その凶器の特殊性からすぐに犯人は割り出されるものと思っていたが、思いのほか未だにその犯人は捕まっていなかった。
「どうです、名探偵」
いたずらっぽくマスターにそう振られて、小川さんは手をひらひらさせる。
「警察を出し抜いて事件を解決する探偵なんて、あれはドラマの中だけの話ですよ」
「でも、そういうのにあこがれて今の仕事についたんじゃないんですか」
僕からの側方射撃にも動じず、「まったくないね。生まれついてのリアリストだから」と言った。
加奈子さんのような心霊現象専門の調査員を雇っておいて、リアリストが聞いて呆れる。
「だいたいメリットがないでしょう。家賃の支払いにもキュウキュウしている自営業の悲哀でしてね。依頼人もいないのに社会的道義で動くような正義超人にはなりたくてもなれません」
「では、依頼があったら?」
マスターにそう訊かれ、小川さんは口ごもった。そしてしばらくして、ふ、と鼻で笑うだけだった。
昼のニュースが終わって、なにかのドラマが始まったのでマスターはテレビを消した。
相変わらずほかの客は来ない。ウェイトレスのひかりさんもカウンター席に腰掛けて暇そうにしている。
食事を終えて一服をしていた小川さんが「よし」と短くなったタバコを灰皿に押し付けようとした時だった。

894:トランプ 前編  ◆oJUBn2VTGE
12/02/25 23:30:15.03 KKcRHKWO0
ふいにカウンターの隅にある電話が鳴った。クラシックな黒電話だ。
マスターが受話器を取り、「喫茶ボストンです」と出る。二言三言交わした後、黒電話をカウンターの上に持って来て、「君に」と受話器を向けた。
驚いたが僕はそれを受け取り、「もしもし」と言った。
『喫茶店で昼飯か、いい身分だな。またメープルトーストだろう。好きだなお前。それより今からちょっと仕事手伝え』
加奈子さんだ。
漏れた声が聞えたのか、横にいた小川さんがクスリと笑う。
『いいか。まずマスターに紙とペンを借りろ』
顔を上げると、すでにマスターが半紙とマジックペンをこちらに差し出していた。先に伝えていたのか。有無を言わさず、というやつだな。
「で、どうするんです」ひかりさんにメープルトーストの皿とコーヒーカップを片付けてもらって、カウンターの上に半紙を置いた。なぜかわくわくして来くるので不思議だ。
『紙にトランプのマークのスペードとハート、クラブ、ダイヤを並べて書け』
「は?」
妙な指示だ。
「並べるのはタテですか、ヨコですか」
『どっちでもいいけど、じゃあタテに書け。で、スペードのヨコに東、ハートのヨコに西、クラブのヨコに南、ダイヤのヨコに北と、漢字で書く。いいか、東西南北だ』
言われたとおりにする。
「書きましたけど」
『OK、じゃあ次は空いてるところに同じようにまず1から13までの数字を書け』
「タテでいいですか。……はい。書きました」
『次はその数字のヨコに、それぞれこう書くんだ。1には山、2には川、3には野原の野……』
師匠は次々に一文字の漢字を口にしていった。僕は言われたとおりにペンを走らせる。
完成したものを確認すると、こうなっていた。



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