12/02/06 23:05:52.93 0
歓喜の咆吼を上げる。
「ののわっ、ののわさんぅ! ふぉッ」
興奮が噴火を起こし、頭の中を溶かち尽くちて、思考がマグマの様にどろりとはぜた。
すべすべした肌に頬を寄せ、においを嗅ぐ。“彼女”は体を強張らせるが、俺は一向に気にしない。
腰のラインに舌をはわせ、彼女を味わう。このしょっぱさは、彼女の味なのか、俺の涙の味なのか。
「っ……、う゛ぁ~い」
殺風景な俺の部屋に、天女のような『ののわさん』の声が響く。この声色だ。このために、俺は生きている。
変態だと罵られても構わない。世界全てから忌み嫌われても構わない。彼女自身から嫌われてもいい。
涙が溢れ、顔が痙攣する。
「俺は、ののワが好きだ…っ」
ののわさんが悲しそうに俺を見つめた。
そう。俺は、『ののワさん』のためのプロデューサーだ。
ののワさえいれば、春香なんていらなかったんだ。
だから、もう少しだけ。できることなら永遠に、俺のために歌ってくれ。俺に、夢を見させてくれ――。
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40センチメートルほどの背丈。赤子のような体型に、爪も指もない、なめらかな体皮。
「う゛ぁー…い!」
彼女、『ののワさん』に初めて出会ったのは、プロデュースするアイドルを選ぶため俺が二度目に事務所を訪れた際だった。
菊地真をさがそうと社長室を出たところで、ヴァーイ、という甘い奇声に耳をくすぐられた。
トテトテと小さな手足を激しく動かして、俺の前に姿を現したいたずらっ子。その愛くるしい天使が、『ののワさん』だった。
走り回る“彼女”を、当時まだアイドル候補生だった天海春香が抱き上げ、恥ずかしそうに小さく礼をした。