13/11/17 10:11:43.48 D0Dgeg71
「何を言っているのだ。教えて呉れ。あの子供たちは何を言っているのだ。」(中略)
「いつ来て見ても変らない、とほざいたのだよ。」
変らない。私には一切がわかった。私の疑惑が、まんまと的中していたのだ。変らない。これは批評の言葉である。見せ物は私たちなのだ。
「そうか。すると、君は嘘をついていたのだね。」ぶち殺そうと思った。
彼は私のからだに巻きつけていた片手へぎゅっと力こめて答えた。
「ふびんだったから。」(中略)
「みんな知らないのか。」
彼は私の顔を見ずに下から答えてよこした。
「知るものか。知っているのは、おそらく、おれと君とだけだよ。」
「なぜ逃げないのだ。」
「君は逃げるつもりか。」
「逃げる。」
(太宰治「猿が島」)
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俺たちはみんな、この猿が島にいるのだ。ただの見世物として、もてあそばれているのだ。
そして、この猿2匹は、その猿が島から逃走したけど、その先にも実は何もないのだ。