12/01/02 19:17:18.75 Y/d1QeiD
万物は流転する、と言った哲学者がいただろう。僕はそいつに言ってやりたい。そんなもん、嘘だって。
何度君の墓前に手を合わせても忘れることはない。そして褪せることもない。今でも同じように僕は小学校のそばに住んでいるし、子供たちも毎朝元気を振りまいている。独りか、二人か。違いはそれだけだ。
三年前の命日。ろくに中身も入ってない財布を持って、貴金属店に君を連れて行った。買うつもりはなかった。でも、君はついてきてくれた。指輪を買う予行演習。
声をかけようとする店員さんを無理やりながら追い払って、ウインドー越しに眩い光を放つ指輪に目をやる。本当に買う時のために、君の好みを聞いておくんだ。
今でも、覚えているのかな。あの時の約束を。僕は墓前に花を添えて、反芻する。
「いつかこの指輪、受け取ってくれますか」
「はい、喜んで。首を長くして待ってます」
もともとは三題噺です。キリン、薬指、雪だるま。
単純明快と言いつつ単純明快じゃないことやら、最初と最後で方向が食い違ってたりしますね、これ。