12/08/12 17:48:28.08
このスレ、リコールで。
3:トータル・リコール
12/08/15 21:10:41.03
ドーン、と凄い音がした。
「またやったな」と僕は思い、頭の中で、クラッシュした車の残骸を想起した。何度も見ている光景だ。
音がした近くの国道は、緩やかなカーブになっており、事故が絶えない。
僕は近くに住む者として一応様子を見に行った。
トレーラーが横倒しになっていた。他に車はいない。元々さびれた場所だ。民家もない。
「大丈夫ですか?」と僕は運転席のほうに声をかけてみた。
「ああ、俺はいい」エアバッグをかき分けて、スキンヘッドで目つきの鋭い男が顔を見せた。無事らしい。
「悪いが積み荷を見てきてくれ。逃げられたら困る」
家畜でも運搬していたのか、と思って、僕はトレーラーの後ろに回ってみた。
横倒しになった荷台の扉が壊れて半開きになっている。
そこからごそごそと音がして、何本かの白い手が、にゅっと出てきた。
それは、全裸の少女だった。一人、二人……いやたくさんだ。何人もの金髪の少女が、ゾンビ映画のような緩慢な動きで中から出てきた。
「皆、同じ顔をしている!」
少女達は、状況に慣れてきたのか、だんだん動きが速くなり、四方八方に歩き出していった。
「捕まえろ、一人残らずだ!」運転手も車から出てきて僕に命令した。彼はスタンガンのような物を彼女たちに打ち込んで、動きを封じ、手際よく荷台に放り込んでいく。
僕も手伝わざるをえなくなり、素手で裸の美少女を捕まえた。
白い肌に触れる罪悪感みたいなものはすぐに消えた。彼女たちは人間ではない。
騒動が終わってから男から聞いた話だが、彼女たちは新型のアイガンドロイドで、初期不良のために回収されたのだという。
「全部リコールだよ。全てプログラムを入れ直しせにゃならん。個々に微妙な個性があるから一度にできない。やっかいな商品なんだ」
男はどこかに連絡を取った。暫くして小型のワゴンが数台到着し、彼女たちは全員無事に?回収された。
僕は男から僅かばかりのチップ(ピンク色の外国の紙幣のようだった)をもらって、何か損をしたような気分になって、誰もいない自宅に帰った。
どうやら鍵をかけ忘れたらしい。僕は開いたままのドアから家に入って行った。
「お、おじゃましてます」
「君は!」
あの何十体もの裸の少女たち、その一人が、僕の部屋の炬燵に入ってテレビを見ていたのだ。(完)