この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条 - 暇つぶし2ch103:「ストッキング」「電話」「ラブレター」
13/02/04 10:42:23.72
 ―俺は今、選択を迫られている。


 時刻は深夜。
 自室のベッドの上に正座し、目の前にある‘‘選択肢’’と睨み合う。
 目の前にある三つのアイテム。
 ストッキング、電話、ラブレターの三つ。俺の今後の学園生活を左右する重大なアイテムだ。
「何故に―」そう、呟かずには居られなかった……。

 
 それは、今日の学園での出来事だった。
 俺、笹蒲 鉾矢は自分で言うのもなんだが、学力底辺、運動得意の健康優良児で朝はいつもギリギリで教室に滑り込み、
休み時間は友人とエロ談義に花を咲かせるというどこの学校にでもいそうなそれはそれは普通の男子学生である。
 その日の朝も遅刻ギリギリで教室に入り予定調和のお小言を頂き3時限目には弁当は空箱へクラスチェンジした。

 最初の異変起きたのは昼休みのことだ。
 第二の昼飯を買いに購買へ行こうと歩いていると前の方から異様な集団がやってきた、 学園名物『薩摩行列』だ。
 地元大地主の娘、薩摩 揚子と彼女に集められた選りすぐりの下僕達による行進である。その一糸乱れぬ動きから彼女の調教技術の高さが窺えるだろう。
 その行列はいつの間にやら俺を取り囲みその中から一人の女子、件の主こと薩摩 揚子が歩み出てきて「やれ」と声をかけると一人の下僕が出てきていきなり
俺を押さえつけ彼女の前に這い蹲らせた。
 地べたに這い蹲る俺を見下ろしながら薩摩 揚子は言った。
「ここ暫くの間貴方を観察して確信したわ、貴方は私の下僕となるにとても相応しい資質をもっている。是非私の下僕になりなさい、私の下僕になれば将来の安泰を約束しましょう」
 そういうと彼女は徐にストッキングを脱ぎだし俺の頭に載せた。
「それは契約の証となるものよ。私の下僕になるのなら明日、そのストッキングを咥えて私の元へきなさい」
 そう言い放つと薩摩 揚子と行列は彼女たちの王国へと帰っていった。
 いきなりのことに呆けながらも俺はとりあえずストッキングを一嗅ぎの後シャツの中へしまい、購買へと第二の昼飯を買いに急ぐことにした。

104:「ストッキング」「電話」「ラブレター」
13/02/04 11:16:13.84
 二番目の異変は放課後、学園玄関でのことだ。
 運動大好きだが規律が苦手な俺は勿論帰宅部であり一日の授業全工程を終えれば羽が生えたように軽やかに速やかに帰宅する。
 教室を優雅に飛び出し小走りで廊下を渡り靴を履き替えるために玄関にある下駄箱を開けたそのとき!!
 なにやら一つの見慣れぬ物体があった。それは長方形で厚さ1~2㎜といったところだろうか、全体は白く中心部にはなにやらファンシーで
キュートな心臓を模した形のシールが貼られている。
(……これは、なにかな?)その非現実性あふれる物体に脳の活動フル回転で思考。あらゆる可能性が頭を駆け巡る。
(これは!! もしや、アレなんじゃあないのか!?)だんだんと目の前の物体と思考が一致していきその正体の見当がつくにつれてテンションが上がってくる。
「ラ、ラ、ラ、ララ~ラ、ラーラ、ラアー!!」
 その正体に確信を持った瞬間思わず声を上げてしまった、周囲の視線が刺さるが今は痛くも痒くも無い。
 恐る恐る、しかし急ぎながら中身を確認する。 自慢じゃないがラブレターなど今まで一度ももらったことが無いのだ。
 当然ながら中には手紙が入ってた宛名は勿論俺、笹蒲 鉾矢となっていた。
 うれし泣きしそうになりながら早速手紙を読んでみる。
「一目見て運命を感じてからずっと、あなたを見ていました。朝起きる前に二度目覚ましを止めるところから夜寝る前に一人プレイに励む所まで。
あなたは私と一つになる運命なのです。明日の昼休みに校舎裏で待っています。 竹輪 麩美」
(……これは、なにかな?)その非現実性あふれる物体に脳の活動フル回転で思考。あらゆる可能性が頭を駆け巡る。
(これは……もしや、アレなんじゃあないのか?)だんだんと目の前の物体と思考が一致していきその正体の見当がつくにつれてテンションが下がってくる。
 俺はずっと監視されていたのか!? まず始めにその恐怖に身を震わせる。この世には触れてはならないとても怖い者達がいると話には聞いていたが
まさか自分が関わることになろうとは誰が予想できただろうか? 恐怖のあまり破くことも出来ずとりあえず手紙を鞄につめ、震える体に活を入れ全力で家に帰った。

105:「ストッキング」「電話」「ラブレター」
13/02/04 12:03:42.98
 最後の異変は家に帰り自室へ戻ったときのこと。
 今日あった二つのありえない出来事から逃避のために「ははは、面白いな~」と声に出しながら漫画を読み漁っていると
携帯電話のランプが光っているのに気付く。どうやらお隣に住む幼馴染の 捏串 つみれ から電話があったようだ。
 留守電が入っていたのでとりあえず再生してみる。
「ごめんね、こんな時間に。でも、どうしても伝えたいことがあったの。ちょっと緊張しちゃうな、留守電で良かったかも。
えと、ね。今までずっと言えなかったんだけど……あの、君の、鉾矢のことがずっと……好きだったんだ。だから、ね。
お付き合いして欲しいの、鉾矢の恋人にしてください!! いきなりでごめんね、でも明日一日電話でも良いので返事まってます」
―ツー、ツー。
 なんだろう? アイツは一体いきなり何を言い出すのだろうか? 俺のことが好き?
 今日は一体何だって言うんだ!? ありえない事が起きすぎじゃあないのか!?
 どうしよう? 返事、返事か。
 アイツ、幼馴染である 捏串 つみれ は幼稚園の時から一緒でその外見はとても可愛らしく人当たりの良い性格で異性だけではなく同性からの人気も高い
中学までは何をするにもいつも一緒で俺の後ろには必ずアイツが居た。
 周りの大人たちからも「二人はいつ結婚するの?」などとからかわれたものだ。
 だがしかし、ただ一点だけどうしようの無い問題がある。
 性格もよくとても可愛らしいアイツは―俺と同性なのである。
 同性、異性ではない、俺は男、アイツも男、女子ではない。
―ナンダコレ?
 いつの間にやらアイツは俺にそんな感情を抱いていたのか?
 どうしたものだろうか? どう返事するにしても、いや断る以外にありえないがこれはどう転んでも気まずくなるのは必至!!
 アイツは何故告白なんてしてきたのだろうか? 人の思いは抑えきれないということだろうか?
 どうしよう?とグルグルグルグル頭を回す体も回る。
 そうこうしてる内に前の二件まで思い出して逃れようの無い現実に絶望しのた打ち回り、ただ時間だけが無為に過ぎていった。

 そして時刻は深夜。
 自室のベッドの上に正座し、目の前にある‘‘選択肢’’と睨み合う。
 目の前にある三つのアイテム。

―ああ、明日が来なければ良いのに

106:名無し物書き@推敲中?
13/02/04 12:06:27.83
長すぎる上に微妙…


次は「演技派」「隕石」「胃腸薬」

107:「演技派」「隕石」「胃腸薬」
13/02/04 12:41:09.02
 行儀がいいとは言えないが、朝刊を読みながらパンをかじる。
 今日の社会面は、「演技派の名優逝く」で脇役俳優の逝去を報じている。
テレビドラマや映画で何度か見たことのある俳優だ。中でも、刑事物のドラマでの渋い演技は
当時子供だった自分でさえ今でも覚えている。
 その隣りには、「あわや大惨事!白昼の住宅街に巨大隕石落下」の記事。
ベッドダウンの住宅街に隕石が落下したものの、幸い落下地点の住宅は留守で
死傷者は出なかったという。ちょうど出掛けていたその家の住人の爺さんが、
「八十年生きてきてこんなに驚いたことは初めてです」とインタビューに答えている。
 亡くなった俳優は六十五歳で、助かった爺さんは八十歳。人生なんてわからないものだ。
この自分だって、今の会社の人員整理でどうなることか。この年で転職活動は出来ればしたくない。
 そんなことを考えていると、持病の胃痛が出る。救急箱から胃腸薬を取りだす。
 会社に行くのは苦痛だが、行かなければ食べていけない。「とかくこの世は住みにくい」
学生時代から愛読している漱石の一節を呟く。これから出勤だ。また満員電車か……。



次は「徒花」「影」「後悔」

108:「徒花」「影」「後悔」
13/02/04 16:14:34.48
 千恵子は店内のストゥールに腰を下ろし朝からウォッカを呷っていた。
 若い頃、均整のとれていた肉体にはその後の不摂生を物語る脂肪がつき、白髪混じりの
頭は四十代とは思えず老婆の様な雰囲気を漂わせている。
 灯りを点けず、暗く影を落とした店内にTVだけが妖しく光を放っていた。
 「フラワーモーニング、本日のゲストは女優の樹山ユウコさんです。よろしくお願いします」
 「よろしくお願いします」
 「樹山さんはカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞する等、日本映画界期待の若手女優
さんです。今日はその樹山さんのルーツにとことん迫ってまいります」
 TVに映る若く美しい女優の姿が、千恵子にある後悔を思い出させる。千恵子は若い頃、TVに
映る彼女と同じ世界に居た。歌手からスタートした彼女の芸能キャリアは、何度かの芸名変更
を経て女優咲花シズカという人間を作り上げた。出演映画がヒットし一時は名声を博した彼女だが
その栄光は長くは続かなかった。結婚を機に一時芸能界を引退した彼女は子供を流産してしまう。
この事が千恵子の精神を酷く不安定にさせた。夫との関係は冷えその後離婚。芸能界に復帰するも仕事
は以前の様には上手くいかず、再婚するも一年と持たずに離婚した。
 自分にとっての居場所を見失った千恵子は覚醒剤に手を出し逮捕される。服役中、千恵子は自らを
徒花だと感じた。女優として花開くも落ちぶれ、子を生せず、ただ枯れ行く花なのだと。
 出所後、彼女に残ったものは僅かな貯えから開いたこの小さなスナックだけだった。最初の頃こそ
元女優がママを務めるスナックという事で客も入ったが、十数年経った今は閑古鳥が鳴いていた。
 「わたしもこの子みたいに実を結びたかった……」
誰に伝えるでもなく、口をついたエモーショナルな叫びは、千恵子がかろうじて保っていた一線を越えさせ
るには充分であった。大量の睡眠薬を口に含み一気に胃へウォッカで流し込む。昏睡しストゥールから転げ
落ちた千恵子が目覚める事は二度となかった。
 「―樹山さんが女優を志されたキッカケは何だったんですか?」
 「小さい頃に咲花シズカさんという方の映画を見て私もこんな女優さんになりたいと思ったからです。咲花さん
の演技は本当に華やかであの人がいなかったら私は女優になってないと思います」

109:名無し物書き@推敲中?
13/02/04 16:15:05.54
次は「悪口」「遊園地」「奇跡」

110:「悪口」「遊園地」「奇跡」
13/02/05 00:01:23.01
「順序よく、3列にお並びくださーい」と、係員が言う。
でも、行列があんまり長くって、先頭がもう見えない。

これで遊園地と言えるのか?
と、悪口を言っても始まらない。
並ぶ他にする事は見当たらないのだから。

ようやっと入場の前には、さらにくじ引きが待っている。
ここで運がよければ、赤いレーンに並べる。
それはもう、小さな小さな、奇跡に近い確率だが。

「おおおっ!」と声が沸きあがる。
何百回と並んだ客が、赤いレーンを引き当てたのだ。
歓喜の涙をあふれさせる客に、セーフティバーがゆっくりと下がって・・・
彼はこの世に生まれてきた。

たった100年弱の期間。
だけど、それは気が遠くなる程の行列と奇跡の結晶かもしれない。
そりゃあ、あの世の単位では1時間足らずかもしれないけど、まあ。

次のお題は:「ヴァイオリン」「涙」「フォークリフト」でお願いします。






気が遠くなる程の待ち行列と奇跡で、この世に生を得た。

111:名無し物書き@推敲中?
13/02/06 12:58:09.15
 夏の日の午後、男は普段通り倉庫内仕分けのアルバイトに勤しんでいた。彼は所持しているフォークリフト免許を生かして、生活の糧を稼いでいる。
 この職場には、一年程通っている為、男の作業は手慣れたものだった。
 彼が仕事に没頭していると、倉庫内にけたたましいブザーが鳴り響いた。腕時計を見ると、時刻は15時をしめしていた。
「休憩するか」,
 男は呟き、倉庫内の休憩所に向かった。
 いつものように、備え付けられている自販機のほうへ歩いていくと、先客の後ろ姿があった。それがこの倉庫の事務員である事は、彼にはすぐにわかった。
「あ、お疲れ様です」
「お疲れさんです、新人さんですか?」
 振り返った事務員の女性に、挨拶された男は、返事と共に訊ねた。初めて見る顔だったからだ。
「はい、最近この会社に入りました。酒井です、よろしくお願いします」
「あ、自分は田島です、よろしくお願いします。まあ僕は、只のバイトですけど」
 酒井は、美人でスラリとした、印象の良い女性だった。歳も田島より若く見える。
「まだ分からない事ばかりなので、良かったら会社の事、色々教えてください」
「自分で良ければ、まあ、分かる範囲で教えますよ」
 田島はそう答えると、自販機で買ったジュースを手に取り、近くにあるベンチへ座った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします」
 酒井は微笑みながら、田島の隣に座った。
 

112:名無し物書き@推敲中?
13/02/06 13:00:02.94
 普段は一人で休憩時間を過ごしている彼にとって、これは意外な事だった。だが、彼女は人当たりが良く、とても話しやすかったので、田島は自分でも驚く程に、饒舌になっていった。
「酒井さんは、なんか趣味あるんですか?」
 仕事の事は一通り話終えたが、田島は、彼女との話をやめなかった。酒井に惹かれ始めている、自分に気付いたからだった。
「私は、クラシックが好きだから、休みの日には、ヴァイオリン教室に通ってます」
「へえ、ヴァイオリンですか。すごいですね。自分には縁のない趣味だな……」
 楽器などほとんど触った事もない田島は、彼女との接点が絶たれた気がして、少し落ちこんだ。
「やってみると楽しいですよ。良かったら田島さんも始めてみてはどうですか? 今度は私が教えますから」
 酒井はそう言うとニコリと笑った。その笑顔を見た田島の心は、みるみるうちに晴れていった。
「じゃあ、自分も、やってみようかな」
「是非、始めてください」
 会話を遮るかのように、再びブザーが鳴り響いた。
「休憩終わりか……じゃあ、自分、仕事戻りますんで」
「はい、お仕事頑張ってください。また、よろしくお願いします」
 涙を流す程ではないが、残念な気持ちを抑えつけて、田島は作業に戻っていった。
 彼はフォークリフトを運転しながら、思わぬ所で訪れた出逢いに、淡い期待を募らせずには、いられなかった。
 

113:名無し物書き@推敲中?
13/02/06 13:06:26.88
次は「銃」「美女」「煙草」

114:銃と美女と煙草
13/02/10 12:37:54.83
都心に現れたその怪獣は、昔のテレビに登場した着ぐるみの怪獣達とは似ても似つかぬものだった。
大きさはまあいい。円谷プロの怪獣サイズだ。しかしその外見は、何たる手抜きだろうか。ただの人間の赤ん坊なのだ。
誰か穿かせたのかもわからぬオムツを腰に纏った、性別不明の赤ん坊が、街を壊しまくっていた。
赤ん坊に善悪の判断はない。ただ好奇心の赴くままに彼(もしくは彼女)にとってのミニチュア玩具である建物や乗り物を叩き、投げ踏みつぶして歓喜していた。
「だめだ我々では手に負えん」
警官隊の銃など何の役にも立たなかった。
弾が当たった個所を、赤ん坊は痒そうにボリボリと掻くぐらいである。
「自衛隊を呼べ」
「その必要はないわ」
「誰だ君は、こんな所にいないで避難したまえ」
狼狽する警官隊を尻目に、白衣にミニスカートの美女が巨大赤ん坊に近づいていく。
「なにをする気だ?」警官たちは理解に苦しんだ。
すると白衣の美女は突然踊り始めるのだった。赤ん坊の目が美女の動きに囚われて左右に動く。
「なんかどこかでこういう映画を見たことがあるな」
「でかい猿の映画ですよね」警官達は美女の踊りに見とれて完全に見物モードになった。
赤ん坊の後方で大きな発射音がしたのはその時である。赤ん坊は驚いて目を丸くした。
後方にはいつの間にか、美女の仲間らしい二連結戦車がおり、弾を撃った直後だった。
弾はオムツ越しに赤ん坊の肛門に突き刺さっていた。
それはタダの弾ではない。
それは一本の巨大な煙草だった。赤ん坊に突き刺さった方は咥える側で、反対側には火がついていた。
美女は警官隊を振り返った。
「これは大型の麻酔弾です。大型のモンスターにはこれくらいしか役に立たないわ」
「ほう、どれくらいで効き目が出るのかな」
美女は腕時計を見て言った。
「あと一時間ほどで奴は眠りにつきます」
「一時間もかかるのか!」
一時間ほどして、巨大な赤ん坊は、廃墟と化した街の真ん中でぐうぐうといびきをかき始めたという。

次「脳腫瘍」「液晶テレビ」「マネキン」

115:「脳腫瘍」「液晶テレビ」「マネキン」
13/02/11 22:29:41.17
馬鹿の一つ覚えで7オンス頼む。
ワゴンの上でバーナーに炙られ、牛肉の塊が回されていた。
シェフが青竜刀のようなナイフで、こんがりしたところをそぎ落とし、
皿に載せてくれる。

倍の大きさがありそうだ。
私は肉を旨そうに喰うのには自信がある。
◆◆◆

窓際の席でマネキンのように整った肢体と顔の女がステーキを食べていた。
静かで迅速なナイフとホークの扱い。それに正確な咀嚼。
出来過ぎな光景で、液晶テレビの画面を眺めているようだった。
向かいの席の男、顔色が心なし悪い。
◆◆◆

彼女、美味しそうに食べているつもりなんだろうな。
今日は脳腫瘍の手術があったんだよな。
よく食欲のでるもんだ。
俺はワゴンの上の塊が明滅的に脳に見えてぞっとした。


次は、「外科医」「二月」「体重」でお願いします。

116:「外科医」「二月」「体重」
13/02/13 19:11:45.56
水商売の業界で「にはち」といえば、客の出入りが減る二月と八月を指す。
それでも常連客は、定期的に通い続けてくれる。
散々な、今月の売り上げを嘆き加代子は、携帯電話のアドレスを眺めた。
ふと、長いこと顔を見ていない高校時代の彼氏の名を目が探し当て、そして無意識に目を背ける。
未だに電話も出来ないくせにアドレスに残っている彼の名前に、我ながら未練深いと呆れる程、本当は大好きな彼だった。
私の家庭の事情で、高校を中退しそして水商売の道へ進み、彼には釣り合わなくなってしまった自分。
私は、彼にパラレルワールド《平行世界》の幸せを視る。
けれども、それは現実世界には、ありえない切なく苦しい妄想だった。
ふと、店のドアが開きカウベルが来店を告げる音を上げる。
それは、幸せに繋がる音だった。
「加代子、俺、外科医になって君を迎えに来たよ。」
そこには、体重こそ高校時代とは違うけれど、当時と同じ優しい笑顔の彼が立っていた。



次は、「運命」「バイク」「梅」でお願いします。

117:「運命」「バイク」「梅」
13/02/21 17:47:30.92
「まかどは、運命って信じる?」
 ほらむが聞いてきた。最近、少し仲良くなった二人は、昼休み、中庭のベンチで一緒にご飯を食べていた。
「運命? このご飯の梅、うんめー、とか?」
「聞いた私が馬鹿だったわ」
 ほらむは弁当の蓋を閉じて立ち上がり、すたすたと校舎の方へと歩いて行く。
「待って、ほらむちゃん! 私の方が馬鹿なんだよ! こんなのってないよ!」
 気を取り直してベンチに戻ってきたほらむが言った。
「私は、運命なんて信じない。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」
「ほらむちゃん?」
「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる」
 ベンチに座って、前を見据えたまま、ほらむの握りしめた拳が震えている。
「まかど、私、バイクに乗れるの。あなたを乗せて、どこまでも一緒に走って行くわ」
 そう言ったほらむの顔に笑顔が戻った。
「ほらむちゃん、バイクの免許持ってるの?」
「1回ぐらいは、魔法少女になってみるといいわ、まかど」


次は「未来」「信頼」「魚雷」

118:名無し物書き@推敲中?
13/02/25 17:50:33.47
「光る眼」 「奇跡」 「名残」でよろしく~

119:名無し物書き@推敲中?
13/02/25 21:11:31.62
 加藤元気は齢三十六にして素人童貞である。玄人しか知らない。人より見劣りするルックスに少々薄い頭を筆頭に低めの身長に重すぎる体重、沸き立つ体臭、むず痒い足、と加藤には様々な個人的特徴があった。
どの特徴も個性だね、素敵だねと言えばそれはそうだが、しかし加藤は個性などとはこれっぽっちも思っていなかった。呪いだと思っていた。そう、俺は呪われている身なんだ。
前世で魔女でも倒した騎士なのだ。その業が来世である自分に廻ってきたのだと思ってみたりもした。そしてそういう時、加藤はお気に入りのAVを見て一息つくのだ。
すると加藤は賢者になり、俺は何を前世などと思っているのだ、俺は前世系ではないぞ、来世もない、未来も信じないぞと萎びた息子に向かって情けない笑みをこぼしたりするのだ。
 加藤は間の悪いことが多かった。その日もそうだった。月に一回の楽しみ。格安の風俗店でお気に入りの姫を抱く。それだけの楽しみのために、ナクドマルドで高校生に顎で使われ、ひいひいと嘆き時給六五〇円で働いているのである。
しかして、その日は姫は飛んだ後だった。どこへ行ったとも知れず、他の店に行ったんじゃないですか、ゲヒヒと笑うボーイに加藤はお得意の俯き加減からの愛想笑いを返したりした。
そして、ボーイに勧められるまま紹介された醜悪な見た目の嬢に部屋に閉じ込められ、バイブで尻の穴を魚雷のように鋭く一突きされただけで加藤は果てた。人間の尊厳、男の矜持などあったものではなかった。
 帰り道、キャバ嬢を名乗る輩からメールが届いた。信頼しているダーリンにしか届けません、あなたと一緒に同伴したい、お店は歌舞伎町のここだからね、と書いてあったので、
馬鹿にするな文章から年齢がばれるぞババアと送り返すと、後日、アダルトサイト閲覧名目で三万円の支払いメールが届き、肝を冷やし、四畳半のアパートで震えた加藤であった。

次回は「光る眼」 「奇跡」 「名残」らしいです。よろしく。

120:「光る眼」 「奇跡」 「名残」
13/02/26 17:31:04.85
私の目は夜に輝く。
この光る眼を気味悪がられてはいけないと、母は私に暗くなる前に帰ってくるようにきつく言いつけた。
ある日私は友達の誘いで山へ木の実を採りに行くことになった。

最初は山の麓近くで木の実を探していたけど、中々数が見つからなくて痺れを切らせた友達が、もっと深くに行こうと言い出した。
私はあともう少しすると日が落ち始めるので止めようよ、と止めては見たのだけれど。
結局押し切られて一緒に山の奥深くまで木の実を探しに行くことになった。
ある程度深く進んだところで沢山の木の実を見つけることが出来て、友達も私も大はしゃぎで木の実を集めた。
そうして満足がいくまで木の実を拾うと、もう日が落ち始めて辺りが暗くなり始めているのに気付く。
私はハッと自分の眼のことに思い至り、急いで帰ろうと友達に促す。
友達も暗くなってはたまらないと二人で帰りを急ぐ。
だけれど二人とも帰り道を忘れてしまって、迷っているうちにどんどんどんどん日が暮れていった。
私は光る眼のことを気付かれるのが怖くて友達の一歩先を常に歩いた。
友達は先に行かれるのが不安らしく私の横を歩こうとする。
私は見られてはいけない、と歩幅を大きくして足を速める。
友達もそれに追いつこうと負けじと足を速めた。
もうどこを走っているのかなんて考えてもいなかった。

そんなことをしていると、知らないうちに山頂まで来てしまっていた。
ずいぶんと開けた場所で真ん中にポツンと二人掛けの椅子があった。
走り回ってくたくたになっていた私達は、喜び勇んで椅子に腰掛ける。
ハアハア言いながら顔を上げてみると大きく光る月が見えた。
とても綺麗で感動して見入っていると友達がこちらをみて「あんたの眼光ってる!」と驚いた声を上げた。
私は恐怖した、次にどんなことを言われるのかとビクつきながら友達のほうへ顔を向けると、そこには同じく眼を光らせた友達の顔があった。
思わず私は「あんたの眼も光ってるわ!」と指差して言った。
私たちは何だか可笑しくって互いに指を指しあいひたすらに「光ってる」と笑いあった。
それは月が見せた奇跡だったのかそれともただの幻だったのだろうか。
笑いつかれて眠ってしまった私たちが、心配して探しに来た親たちに発見されたのはその数時間後だった。

121:「光る眼」 「奇跡」 「名残」
13/02/26 17:37:55.69
眼が覚めてからすぐに私達は村中の大人にお叱りを受けた。
私も友達も叱られているのに昨日のことを思い出しては笑ってしまって、お叱りが終わるのは結構な時間がたったあとだった。

あれ以来、友達の目が夜に輝くことはなくなったが二人の体験は村中に広がっていて
夜に輝く目を見られた私は決まってこういうことにしている。

―「お月様の名残」



次は「消灯」「相貌」「サルガッソー」

122:「消灯」「相貌」「サルガッソー」
13/03/01 00:34:10.12
瀬久原教授は病の床にあった。妻も子もなく、一生をかけて作り上げた
メイドロボットだけが教授の世話をしていた。50年後のおまいらである。
「教授、お薬を飲んだらもう寝る時間ですよ」
微笑むロボットの相貌には、昔彼が愛した架空のヒロインの面影がある。
教授は薬を受け取ると、コップの水で一気に飲み干した。
「じゃあ、電気消しますね。おやすみなさい」
消灯時刻だ。この厳格なスケジュールは、ロボメイドならではといっていい。
だが、教授は知っていた。ロボはロボでも、彼女は単なる機械ではないと。
いや、それは彼女にとってのことか、あるいは彼にとってのことか―。
「なあ、○×△」(注:適当な名前を補って下さい)
「はい?」立ち去りかけた軽い体が、暗闇の中で振り返る気配がした。
「かつて幾多の男たちを吸い込んだ、ワカメで有名な三角地帯を知っているかね」
「サルガッソーですよ、教授」
闇の中でほころんだ無邪気な笑みを、教授は確かに見たような気がした。
これが教授の幸福な日課だった。
そして―そして、闇の中でぺろりと出した小さな舌を、教授はまた知ることがなかった。
彼の人生最後の夜にも。

次「山の水」「川の滝」「野原の海」

123:「山の水」「川の滝」「野原の海」
13/03/05 14:12:25.12
―夏休み、某日。
どこかの山の中、俺たちは唸っていた。

ことの始まりは夏休み最初の日、せっかくの夏休みなので皆でどこか普段行かないところへ遊びにいこうという話になった。
やはり夏だということで海と山の二つに分かれたのだが、人数もちょうど半分だったのでそれぞれで分かれていくことになった。
俺たち三人は山でキャンプという名の修行もどきをしようということになりそれなりの準備をして勇んで山へ入ったのだが…。
メンバー全員が水を忘れるという大暴挙、しかし皆そのときはどうかしていたのか「これも修行!!」とどこかにあるという水源を探すことにした。
音を頼りに、探してみると案外早く見つかるもので見つけたときはその滝みたいになってる川を見て
「これこの前写真で見たやつに似てるな、ラインの滝だっけ?」
「ちげーよ、精進川の滝だろ?」と余裕のやり取りをしていた。

水も確保できたので早速修行を開始する、漫画やアニメやゲームなどで得た知識を実際に試すのだ。
現実的なものからビーム系の非現実的なものまで様々な修行をし渇いた体に水分を補給するため川へ向かう。
そのとき俺たちはとても大事なことを忘れていたのだ…。
『山の水は生ではいけない』
煮沸してからではないと体に悪いのだ。
そんなことなど頭になかった俺たちは川を枯渇させてやるとばかりにゴクゴクとそれはもう腹が膨れるまで飲んだ。
しばらくして、案の定俺たちは三人とも腹を抑えて唸りだす。
草むらに行っては帰りの繰り返しでもはや修行など頭になかった。
そして俺たちは話し合い泣く泣く下山することとなった。

腹を抑え唸りながら俺たち三人は思った
(野原の海案に賛成しとけばよかった……)


次は「賽の目」「最高」「フラッシュサプレッサー」


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