12/05/31 20:46:59.40
「象よ!」
昨日は夜中の三時くらいまでずーっと三人で話したり唄ったりしてたから、まだすごく眠たかった。
象よ象よって騒いでるハンチの向こう、空の色はまだうす暗かったし、
私たちの横で焚き火もまだくすぶってたから、多分ちゃんと寝てからまだ二時間くらいしか経ってないと思う。
だからハンチに「わかった、わかった」って言ってからまた目を閉じた。
「はんちももすこしねなよう」
象だか何だか知らないけど、眠たすぎる。
「象よ! とっても大きくて、真っ白なの!」
んん。
「おっけーおっけー」
「チェリー・ローターが見つけたの! とっても大きな象だけど、真っ白なの! ねえ、紡ぎったら!」
「はーんちはーんち。あーとーでー」
象だったら大人しく動物園か森にいなよう。
私はンッショと寝返りをうった。
ハンチが次なんか言ったら一回起き上がって「もう少し寝かせてよ、ハンチだってもう少し寝たほうがいいよ?」って言おうと思った。
でも私たち三人は今まさに森の中にいて、昨日の夜、静かで真っ暗なこの森で盛大に焚き火して、
盛大にうたを唄いまくってた事をクッキリ思い出したから、自発的にシャキンと跳ね起きた。
リィターが、いない。
ハンチに「ねえハンチ? リィターは今、どこで何してるの?」って聞いてみた。
象だか何だかにキャッキャ言いながら駆け寄ってくリィターの姿が想像できたけど、聞かずにはいられなかった。
「チェリー・ローターならさっきまで象との交流を試みていたわ。本当にとっても大きくて、真っ白なのよ。そうね、きっと紡ぎなら、
ジャンボな象だねって言うわ!」ってハンチが言い終える頃には私はスックと立ち上がり、髪を束ね、くすぶる焚き火をバシンと蹴って痕跡を消し、お爺ちゃんに無断で持ってきた刀を手にしていた。
んん相手が野生の動物なら、焚き火の痕跡なんか消しても意味なかったかも。
「リィターは、今、どこ?」
さあ、とか、判らないわ、とか言わないでよって思いながら私はお爺ちゃんの【赤ヒゲ殺シ】の佩刀を始めた。
「だからチェリー・ローターならさっきまで象との交流を試みていたの」
かちゃかちゃ。
ンッショ。
「ハンチ? じゃあ、ジャンボな象さんは、今、どこ?」