12/05/06 03:08:01.48
「コレが美味しい季節になりましたねー♪」
女子高生が二人、コーンアイス片手に歩いている。
「先輩、ね、先輩?」
先輩と呼ばれた背の低い少女は、二段重ねの巨大なアイスを顔の前に持って格闘している。右から舐めれば左に崩れ、左から舐めれば右に崩れるから必死だ。
「欲張ってラージのダブルなんかにするから」
(しかし、すっごい胸だな。まさにラージのダブル……ゴクリ。)上から覗き込んだ後輩は思った。
「だって、おいしそうだったんだもん」
「手伝ってあげましょうか~」
ペロリと舐めようとする後輩。
「ちょ、だめー」
そうこうしているうちに、二人は駐輪場に着いた。
「どーなってんのぉー」
「どうしました先輩ー あっ」
「これじゃ座れないー スポっ」
「サドルが……ないですね って! いやいやちょっと、なんでそこにアイスを挿すんですか何のためらいも無く」
「うーん、どうしよう……」
背の低い少女は、鞄を自転車のカゴに入れ、自由になった両手を組んだ。
「サドル泥棒ですね、聞いたことあります。人気あるから……」
(アイスをサドルのパイプに挿したのは説明なしか……)後輩は思いながら言った。
「サドルに人気とかあるんだ」
「いや先輩が人気あるんですよ、ストーカーですよ!」
「えー えー はずかしいー」
そう言いながら背の低い少女は、照れ隠しのように自転車に跨り、スタンドを上げないままペダルを漕いでみせようとした。
「あっ 先輩、何やってんすか!」
「冷たっ」
跳び降りようとして後輩もろとも倒れこむ背の低い少女。それとは反対方向にガラガラと倒れてゆく自転車の列。
「もう、どーなってんのぉー」
午後二度目の「どーなってんのぉー」がとびだした。
(先輩ごめんね。サドルは代わりに私のあげるからね。)後輩は背の低い少女を必要以上に抱き締めながら思った。