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第十一回ワイスレ杯参加作品(989を訂正)
あなたへ
あたいとあなたは例えものの弾みで喧嘩する事があったとしても必ず元のさやへもどれる心と身体と脳波のリズムを共有していた。
あたいとあなたの絆はそんなにあまっちょろいものではなくて肉体を超えて時代の枠を超えて人が交し合う言葉を超えて結びついたもので誰も理解できない代物だった。
あなたと一緒に野原で蛍つかまえたよね。蛍があたいの胸の狭間に舞い込んで来てさあ。あなたはあたいの胸を開いて片手で捕まえたよね。
哀しい時はさあ、いつも、あなたの溝のあたりにあたいが顔を埋めて泣いたよね。
あなたのちょっとした文才を見出したのはあたいだったよね。あなたに小説応募させて良かった。すばる文学賞獲って良かったね。
あたいを夢中にさせたのは同じクラスにいたあなただけだった。他の男はあたいにモーションをかけるもあたいを良く分かっていなかった。あたいはオリオン座が好き。あなただけが知っていた。
あたいはオレンジと白と青が好きだった。南国に行きたいとあなたにいったね。一日中さあ、あなたと一緒に眩しい陽を浴びていたくてさあ。黒は嫌い。葬式のイメージだからね。あなたはあたいと同じ趣味だった。
あなたはまだ高校2年なのに。どうしてこんな事に……、この世に神様はいないの。本当に本当にどーなってんのぉー、どーなってんのぉー、どーなってんのぉー
あたいは泣いた。高速でバイクごとトラックに撥ねられてしまったあなたはもう帰ってこない。街中の葬儀場であたいの叫び声はいつまでも留まらなかった。