ワイが文章をちょっと詳しく評価する![21]at BUN
ワイが文章をちょっと詳しく評価する![21] - 暇つぶし2ch43:974
12/05/06 02:15:47.28
「あのコを追いかけて!」
 ぼくの腕を掴んできたのはスーツ姿のきれいなお姉さんだった。
お姉さんの指差す方向に、うちの学校のブレザーを着た女子生徒の後ろ姿が見える。
女子生徒がビルの角を曲って姿を消す寸前、横向きに見えた胸がすこし揺れた。
 次の瞬間、地面を震わせるほどの衝突音があたりに鳴り響く。
お姉さんに引っ張られてビルの角を曲がると、大型トレーラーが横倒しになっていた。
「あのコったら……」
 前方に眼をやると、ブレザー姿の女の子は長い髪をはためかせて遠のいて行く。
小さく見えるのは、遠近法の加減だけではなく、高校生にしては小柄な女の子のようだ。
走るスピードは人間の能力を超えている。まるで二足走行のスポーツカーだ。
「あなた、箱崎裕介くんでしょ。一目見てすぐに判ったわ。あのコの初恋の相手というのは、あなたね」
 お姉さんの言葉の意味を考えていると、またも何かが爆発するような音が響き渡る。
「あのコ、今度は何にぶつかったのかしら……」
 目の前の二十階建てのビルがゆっくりと倒れて隣のビルにもたれ掛かり、斜めに傾いた形で静止した。
ビルの一階部分の半分が根本から千切れて崩壊している。
お姉さんは携帯電話にむかって「車とビルの事後処理お願いね」と話す。
「あのコはロボットですか……それとも、最終兵器とか……」
「わたしたちの星では普通に人間で、あたしのひとり娘よ」
 わたしたちの星!? それに、娘って……と、いうことはこのきれいなお姉さんは、あのコのお母さん!?
傾いたビルの上階から避難してくる人たちを横目に、ふたりで少女のあとを追う。
「しかし、なぜあのコを追ってるんですか?」
「朝ご飯がまだなのよ。あのコって、ご飯抜くと力が出ないタイプだから」
「へっ?」
 女の子は校門の前に立っていた。始業時間を告げるチャイムが鳴っている。
「急いで来たのに、もうーどうなってるのよ!」
 遅刻など、ぼくからすれば些事なことだが、彼女は地団駄を踏んで悔しがっている。
「かぐや、朝ご飯よ。ちゃんと朝食を摂らないから、普段の半分の力も出てないでしょ」
 いえ、力なら充分出てますよ、この星では基準以上のね。それより……何かが始まる予感。
ぼくが初恋の相手だという女の子。その長い髪の女の子が、ゆっくりとこちらに振り返る。


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