ワイが文章をちょっと詳しく評価する![21]at BUN
ワイが文章をちょっと詳しく評価する![21] - 暇つぶし2ch20:836
12/05/06 00:57:10.08
「じゃ、母さん、行ってくる!」着物の袖を襷がけすると、洗濯物が積まれたカゴを抱えて、今日も近くを流れる川に駆けていった。
小梅は16歳になったばかりだ。家は貧しく、母親が肺を悪くしてからは、彼女が家事を切り盛りしている。
小さい頃は気の強いお転婆だったが、少し大きくなると、明るい笑顔に密かに想いを寄せる男の子も多かった。
背丈はさっぱり伸びず、4尺7寸しかないのに、胸元の丸みが醸す色気は、最近、大人の女顔負けだった。
季節は夏。小梅は額に汗を浮かべながら野原を抜け、日差しを跳ね返して光る川べりに降りていった。
「おい、小梅」いつも洗濯に来る岸に立った時、後ろから声がした。振り返ると幼馴染の小五郎がいた。
小梅は顔を赤らめると気まずさを振り切るように流れの方に向き直り、しゃがみこんで洗濯を始めた。
「なあ、おいったら」小五郎が小梅のすぐ後ろまで来てまた声をかける。「何よ」小梅がそっけなく答える。
「いや……その…」今度は彼が顔を赤らめて、俯きがちに口ごもる。
「何よ」小梅は立ち上がり振り返ると、顎を上げ小五郎をきっ、と見据えながら言う。
「…お前…決めたのか…?」ようやく小五郎が小梅から目をそらしながら訊いた。
「よ、嫁入り…」小梅はそれを聞くと途中の洗濯物までカゴに放り込んで、「関係無いでしょ!」とその場から離れようとした。
小梅は町一番の商家の息子から結婚を申し込まれていた。清右衛門と言って小梅より9歳上だったが顔立ちも気性も優しく、
母親が作った竹の水筒や草鞋を納めに店にやってくる小梅を見込んだのだった。
小梅も気のいいお兄さんとしか思ってなかった彼から嫁に来てくれと言われた時は驚いた。
普段の何気ないおしゃべりや仕草が清右衛門の心を捉えたと言われても、そんなものなのだろうかと不思議に思った。
小梅は小五郎が好きだった。2つ年上なのに優柔不断で頼りない、でも何事にも一生懸命な彼が好きだった。
けれど縁談の噂が広がると、二人の距離は遠くなった。小五郎は小梅を避けてるようだったし、
清右衛門の妻になれば、家族の暮らしも楽になるかもしれない、そう思って小梅の心は揺れていた。
「小梅!」小五郎の手が、小梅の肘を掴んだ。小梅は心臓がどくんと高鳴って体が熱くなるのを感じた。
「小梅、俺は…俺はお前が好きだ!」次の瞬間、小梅は彼の腕の中にいた。


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