12/04/01 19:54:38.44
中三期修学旅行の帰り、列車が駅に着いたと同時に、支配能力者〈ジャッカー〉の力が発動された。振動する車内。僕と幼馴染の梨奈は座席の横で目を合わせ、警戒をする。
「この車両はもう一度京都へ向かいまァす」連結ドアから男子が現れる。
「寺門だ」梨奈が言った。
「奴がトレインジャッカーだったのか」旅行の間、バスジャック、寺院ジャック、様々な能力者と遭遇した。僕の機転と梨奈の度胸で難を逃れてきたが、やはり旅は終わるまで気を抜けない。
同級生の目は虚ろになっていく。支配能力はカテゴリ内の人間をその名の通り支配する。車掌なども寺門の意のままだろう。奴は余程京都が気に入ったらしいが、帰れなくなるのは困る。僕は立ち上がった。
「残念、寺門よ。ここを離れる前に、僕の能力を使わせて貰う」周囲の物品が浮き立つ。「ステーションジャックだ。駅オタで悪かったな」駅内全ての人間の意思を掌握した。同時に、車両内は奴の能力範囲でもある為、衝突が起こる。
「ぐっ」支配力の強さは互角。いや、負けているか。能力者同士は打ち負けた者が即支配を受ける。やばい。
「範囲限定は能力を強めるからなァ。俺の車両支配を破ることはできねェぜえ」
「どうかな」最後の手段だが仕方ない。「―梨奈」
「おうよ」ミサンガを外し、梨奈の能力が発動。浮遊していたバッグや携帯等が天井についた。「私は列島ジャッカー。範囲が広い程弱いって言ったの、訂正しなよ」
天性のアイドル気質である蟹山梨奈のジャックは日本全土を覆う。影響力が強すぎるため自ら使用制限を課すほどの、強大な独裁能力だ。
「なッ……」寺門の能力は瞬時に飲み込まれる。
「愚民ども、ひれ伏しなさい」梨奈はローファーとソックスを脱ぐ。吸い寄せられるように近づき跪いた寺門は、彼女の裸足を舐め始めた。他の生徒や教員も次々にそれを求め群がる。
「……」僕は唾を飲んだ。梨奈の能力は今この瞬間も肥大し続けている。この地球全てを支配下に置く日も近いだろう。
だが……君のファン第一号はこの僕だ。
「どけ」人を押しのけ、抱えた彼女の顔。「んっ―」
柔らかい唇に、唇を押し付けた。