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1894年 阿津田神宮前参道にて、初代栄三郎が茶店を創業。
1895年 馬車の発着所として、阿津田神宮駅開設。
1910年 屋号を栄三郎本舗とする。みたらし団子のほか、餡入り団子、うぐいす団子を発売。
1923年 阿津田神宮駅舎内にてみたらし団子販売開始。
1954年 阿津田神宮駅改築工事。
1962年 昭和天皇ご来駕のおり、みたらし団子を召され、「当代随一の団子」とのお言葉を賜る。
1963年 「あつた団子」の商標登録。
1977年 阿津田神宮駅舎改築。三階建てビルヂングにブティック、玩具店などとともに店舗出店。
国内初の駅複合施設と話題を呼ぶ。
1980年 宮中市に二号店、三号店出店。製造工場増設。
1997年 阿津田線廃線。
2005年 阿津田市と宮中市が合併。
2010年 JR阿津田神宮駅廃止。駅ビルヂング老朽化のため取り壊し決定。
「ふうー」大きなため息とともに六郎が丸めていた背中をぐっと伸ばす。「うちの団子屋も
こうして見ると、歴史だなあ」文字を綴っていたノートをパタンと閉じる。
幾多は六郎のでっぷりした腹を横目で見つつ、こいつも年取ったな、そんなことを思う。「いや、
大したもんだよお前んちの団子屋。この阿津田神宮駅とともに生まれ、発展し、そして……」
「みなまで言うな。俺の代で店ぇ畳むのは忍びねえが、これも何かの巡り合わせだ」
「宮中市との合併が利いたよなあ。人の流れがガラっと変わっちまって。この駅ビルも取り壊し
かあ」幾多は、がらんと人気のない駅ビル内を見回す。「いろいろあったなあ、俺、人生初デート
はこの駅ビルにあった映画館なんだぜ」
「『テアトルあつた』ね。常に二本立てでお得だったよなあ……って、初デートのお相手って誰
だよ? 聞いてねえぜ、二組の近藤か?」
「ハハハ、まあいいじゃねえか、中学ん時の話だよ。それよりお前、これからどうするんだ」
「まあ、なんとかなるさ。お前みたいに大学なんか行ってねえけど、一応和菓子作りの腕はある
からな。宮中市の菓子屋で働かせてもらうか、それか……」六郎は椅子からおもむろに立ち上がる
と、何も置かれていない陳列棚のガラスを叩いた。「全く新しい土地へ行って、全く新しい人生を
始めるのもいいな。ここは駅だ、出発の場所、ここから、どこへだって行けるんだ」