12/04/01 19:05:41.51
自らのミスでは無く上司の失敗だったのに、詰られ罵倒され挙句の果てに蹴り飛ばされる。ありふれた日常。
溜息を吐くと、ふと以前みた飛び込み自殺のニュースを思い出した。
通勤ラッシュの時間帯に会社勤めの男が線路へ飛び込み自殺をしたらしい。俺は死ぬなら迷惑を掛けずにで死ねと憤りを感じた。しかし何故男が自殺したのか今なら分かる気がした。
きっと、疲れたのだろう。多分男も俺と同じような最低の職場に勤めていたのだ。そのうちに感情がすり減り、怒りも哀しみも感じなくなる。そうなるとふと思うのだ。疲れたなあ、死ねば楽になるだろうなと。
―死ねば楽になる。
幾度も噛みしめた。死ねば全てから逃げ出せる。ただこのまま死に一自殺者として処理されるのには抵抗がある。社会に対して復讐をしたい。
魔が差した、いや憑き物がついたのか。社会的に衝撃的な自殺方法だけを考えていた。
案外難しい。悩んでいると上司に吐かれた暴言を思い出した。
―馬鹿が余計なこと考えてるんじゃねえ。単純なことだけすりゃあ良いんだよ。
駅で出来る単純な自殺方法と言ったら飛び込みだろう。―一つ思いついた。実に単純だけれど衝撃的ではある。
電車が通過するという放送が聞こえた。一度息を吐き切り、その後肺を空気で満たす。両腕を広げ線路へと走り出した。
何人かがこちらを振り向く。気にせず走る。二、三人の体が手に触れた。そいつ等を離さぬように腕に力を込める。俺のやろうとしている事に気付いた誰かが悲鳴を上げる。
線路が近い。腕に抵抗を感じる。ホームの端まで来た。足を軽く曲げ、飛ぶ。
体に軽い衝撃。二人巻き込んだ。絶叫。被害者のものか、それとも俺のものかもしれない。
電車が近づくというより、大きくなる。俺の下で二人がもがいているが、手遅れだ。電車はどんどんと大きくなる。瞬間、暗転。俺の瞼が勝手に閉じたらしい。不思議と安らか。
ああ、終わりだ。
朝のニュースで線路への飛び込み自殺を報じていた。電車を待っていた客を何人か巻き込んで死んだらしい。全く迷惑な話だ。
会社に行きたくない、と思う。我ながら子供っぽいとは思うが嫌なものは嫌だ。暴力をふるう上司にサービス残業。死ねば楽になれるだろうか。
憂鬱な気分で駅への道を歩いていると、ふと今朝ニュースで見た飛び込み自殺を思い出した。