12/03/16 19:14:02.71
少年は悔しさからか絶望からか、硬く目を閉じた。嫌だと。現実を拒否するためにギュッと目を閉じたのだ。
手足に負荷がかかる。異形達によって抑えられる。伝わる体温。聞こえる息遣い。それ等もまた生きていることを実感させられる。
固くつむったまぶたの裏、走馬灯が再生された。スクリーンの裏に流れたその光景。我ながらつまらない人生だったなと思う。しかし、つまらなくて良かったとも思った。俺が歩んだ人生が俺の人生で良かったと。
刹那、感じたのは痛み。右肩への鋭いような鈍いような熱い痛み。不思議と少年の唇からは悲鳴ではなく、笑みが浮かんだ。 壊れたように、制御されないその唇からは音が溢れ出す。
痛い。何かを刺されているような、熱い何かを入れられているような、酷く軋む痛み。まぶたの裏に火花が散り、爪が食い込むほど手を強く握りこんだ。
不意に、手足にかかっていた負荷が消える。解き放たれた手足をジタバタとさせる。しかし何かに当たったなどという感触はなく、ただ痛みの残る肩を酷使しただけであった。
何が起こったのか目を開けて確認する。太陽は眩しく、閉じていた目には酷く滲んだが次第に慣れる。帰ってきた視界には誰もいない静かな街が映っていた。