12/04/12 23:16:15.19
翌日。朝イチ車に乗り込んで帰省。昼前には地元に着いた。
事情を分からぬとは言え、清美との約束があったので、そのまま指定された某国立病院へ。
入り口で清美が僕の姿を見るや、いきなり乱暴に僕の腕を掴んで引っ張った。
その状態で連行された先は、病棟の一室前の廊下。
廊下のベンチに座っていたのは、忘れもしない。彼女(智)のご両親と妹さん。
「坂本、入院している人って、まさか・・・」
「流石にあんたも分かったか。智よ」
僕に気付いたご両親が歩み寄って、僕の手を強く握った『娘を助けてください』と。
それからやっと清美が事情を説明してくれた。
2週間前にひき逃げ事故に遭い、それから意識不明の状態が続いていると言うのだ。
意識が戻るようにと清美やご家族、親戚の方達が毎日のように呼びかけているのだが、一向に戻る気配がなかった。
それが昨日、突然うわ言のように『・・・中村君・・・』と言ったのを主治医が気付き、急遽僕に召集がかかったと言う経緯らしい。
清美は僕の両肩を力強く掴み、
「智を助けられるのは、あんたしかいないんだよ!だから、頼む、頼む!」
『その辺の男よりも男らしい』とクラスで評判の清美。クラスの男子から『姐さん』と呼ばれていた清美。
そんな清美の目から涙がこぼれるのを初めて見た。