13/02/13 19:27:36.91
「わが鞍へ乗られよ」
と、孫市は小みちを馬上へ抱き上げた。
「かようなことをなされて。―はずかしゅうございます」
と、粉雪のなかで、小みちは顔を伏せた。
「孫市め、殺してやる」
「姫さま、滅多なことを申してはなりませぬ」
雑賀衆の凱旋を見守る群衆のなかで、侍女は萩姫の袖をそっと引いてたしなめた。
「あの者は、わたくしをわが妻に申し受けたいとまで申したのじゃ。その足で堺へゆき、
半年ぶりに雑賀へ舞い戻ってきたかと思えば、このザマじゃ。許さぬ。殺す」
萩姫は、懐中の短刀の鯉口を切った。