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「いま小説にしかできないこと」作家・平野啓一郎
パリ国際ブックフェアに招待されて
URLリンク(nippon.com)
「自分の立場を言えば、原発には反対です。廃止すべきだと思います。あんなことになって、
安全だと言うのはもう完全に説得力がない。今回の震災では、政治、環境、エネルギーといった
様々な問題が噴出しました。ただし、文学はジャーナリズムとは違う。小説を書くということには皮膚感覚
から始まるものがある。ひとりの人間の生活を描くところから出発して、どこかで人間一般に関わる表現に
到達するものだと思います。だから僕は、あくまで小説家として発言し、人々の感じ方を小説家として受け
止める。そして今回のフランス滞在の後、こうした語り合いの成果を通じて、最終的には小説を
書くということにつなげていきたい」
??昨年9月から、マンガ週刊誌の『モーニング』で長編小説の連載が始まりましたね。作品に震災からの
影響はありますか。
「もちろん影響はありますが、すでに構想は震災前から練っていたので、震災を直接扱っている作品では
ありません。原発について、復興について、被災者への支援について語ることは、確かに非常に重要です。
しかしそれ以外にも、小説を通じてしかうまく表現できないことがある。小説家として僕はそう考えています。
例えば時間の問題があります。我々は、千年に一度の自然災害を体験し、十万年も残る原発の廃
棄物の問題に向かい合っている。こうした途方もない時間と、日常の時間感覚をどうすり合わせたら
よいのか。あるいは、昨日まであった街がそっくり消えてしまう、昨日まで自分の隣で語りかけてくれて
いた人が突然いなくなってしまう。そういうことを、小説を通じて根気強く考え、表現していきたい」