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※コンポジションを「遠心分離」する働き:
「遠心分離」を実行するのは視線である。デューラーの聖ヒエロニムスは、書見台の上にかがみ込んでいることにより、
鑑賞者をして、覗き見をしているような感覚に陥らせる。
一方、もし彼が背を起こして、じっと視線を向けてきたらどうなるか?
そうした場合の最も有名な例が、ヴェラスケスの「侍女たち」であることは言うまでもない。
ヴェラスケスの「侍女たち」:URLリンク(es.wikipedia.org)
最も主要な参加者(フェリペ4世夫妻)は絵画の外に居り、まさに鑑賞者と同じ位置を占める。
夫妻を、絵にとって必要不可欠な存在とさせているのは、絵の登場人物たちの視線である。
傲慢にして図々しいこの至高の誘引力が、鑑賞者をして、絵の中の場面がフレームの境界線を越えて広がっている
と信じさせ、その空間の彼方に鑑賞者を押しやるのみならず、そこに鑑賞者を釘付けにしてしまう。
それは、表現(representation)の力を増大させ、表現できないものではないにせよ、表現されていないものを
喚起するに至り、鑑賞者に無限の空間を開く。