12/02/22 00:45:52.68
某所の論争を見ている方は察しつくかもしれないが、
以前紹介した『プルトニウム』でも査察を扱った項の最後に登場している人物だ。
核査察に関しての当事者本の著者としては、これ以上ないですなぁ
(後述するように、もう一段下位の実務家の本も和訳されている)。
実のところ、『プルトニウム』は1990年代で終わっており、
イラク問題を受けて作られた追加議定書を扱うにも、UNSCOMの査察を総括するにも
まだ早すぎた点がある。査察の他に、大量破壊兵器開発を制約するための
キャッチオール規制も、未整備だったしね。
一方、核不拡散関連の制度解説本、レポート、白書は多々あり、2000年代以降の状況を知ることはできる。
査察の有効性について考察した研究もある。
しかし、本書の価値は「査察を実際に不穏な国に実施した際の記録」であるという点にある。
マニュアル的な本とはそこが違い、記述に血が通ってくるわけだ。
その意味では、本書のような本こそ、「詳細な」査察記録と言える。
「書評家」が「○○が無い」と嘆いてる場合、その書評家自身に問題があることが多いが、実際には
日本という国は、こういった分野でも、文献を「最低限」揃えて世間に問うことは上手く、読む側にも
情報収集という点でのリテラシーが問われる(とあるバカ共のザル監視網と言ったら!)。