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ブルース・キャットン「南北戦争記」
第一版1960年という、あちらにおける南北戦争定番通史の初訳、というかいままで翻訳がなかったことのほうが大問題。
北部の勝利がほぼ確定するに至るまでの軍事的流れを、各登場人物に対する鋭い寸評を交えつつまとめた後、戦争の背景事情に触れてから、終戦と戦後処理までをまとめてある。
戦記書には欠かせない地図だが、ルイジアナまでの北米大陸をカバー裏に記し、重要戦役における付図も充実している。これは原著にはなく訳者が作成したそうな。
著者の軍事的見識については、ゲティスバーグにはさらりと触れるにとどめ、同時期に陥落したヴィックスバーグ攻防戦を、「ミシシッピ川の川筋を北軍が抑え、南部連合を2つに裂き、挽回不能の損害をもたらした」故に重視しているあたりで察していただきたい。
本邦における南北戦争の軍事書籍というと、M文庫の地図で読む南北戦争がこれまでトップだったが、
いささか高度な素養が要求される戦術書である同書に対し、こちらは、一般読者が読むことを想定し、戦術レベルから経済レベルまでをトータルに概括する「戦争史』となっている。広く一読をおすすめする。