12/02/05 19:40:30.55 BZOPZSWb0
「まあ、待て。起こってしまった襲撃は我々の今後の作戦行動に障るものである、という点では一致を見ている。ここは我々の方の大方針を、まず定めるべきではないか?」
「その提案も既に聞き飽きたけどな。なんだい、順番から言えば、今度は融和策かな?」
「意地の悪い物言いで茶化すものではない。ただ、かの神の主張を冷静に検討してみてはどうだ、と言っているのだ」
「奴の、得意満面のプロバガンダを鵜呑みにして戦いを止めろと?」
「あれこそ甘言というものではない。奴は確かに“紅世”真正の創造神。有象無象の願いを束ねて、言った通りのことは実現するかもしれん。だが、それ以外のことはどうだ?」
「それ以外、人を喰らわずとも済む世界が新たに作られ、我々の世界と“紅世”の間における壁ともなり、ほぼ全ての“徒”は去る……それ以外に、なにか不安要素でも?」
「ハハハ!アンタとも在ろう者が、随分と脳天気な未来像を描くもんだ。人を喰らわずに済む世界?そいつは結構なことだが、ただそれだけのことでしかない。
奴の言った通りの“存在の力”に満ちた世界ってのが、どれだけ危険なシロモノか、少しでも想像してみたか?」
「……いや」
「使える力が無限にあるってことは、今、この世界で行われている以上の……いや、それとは比べものにならないレベルで奴らにやりたい放題を許す、って予想はできるよな?」
「そう、なるじゃろうな。強大な者に限らず……否、卑小な者こそが、今まで抑えてきた身の丈に合わぬ欲求に駆られ、あるいは興味本位で気軽に、世界の理を乱す挙に出るじゃろう。無限になる木の実を、一体誰が大事に扱おうか」
「でもさあ、無駄に浪費しまくっちゃったとして、その“存在の力”自体が無限なら、世界に与える影響も最小限で済むんじゃないの?人だって喰らう必要なくなるわけでしょ?」
「心の箍を外された者らが、最小限で済むほど紳士的に振舞ってくれるか、私には甚だ疑問ですね。この“棺の織手”や“瓊樹の万葉”、果ては“探耽求究”のように、世界の構造を弄りバランスを左右する暴挙に出る者が、無限の力を得てしまうんですよ?」
「ま、そういう連中は間違いなく新世界を目指すわな」