11/10/29 13:03:10.76
脱原発の世論が強まる一方で、日本の政治家や知識人には原発推進派が依然として多い。しかし、核兵器の開発技術を
維持するために原発を継続すべきとする賛成論が公に語られることはほとんどない。
写真=広島・ 元安川で行われた「ピースメッセージとうろう流し」(今年8月6日)
URLリンク(jp.wsj.com)
石破茂元防衛相は、先月発売された隔週刊誌「サピオ」のインタビューで持論を展開した。「原発を維持するということは、
核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れるという『核の潜在的抑止力』になっている」
石破氏は、核兵器を持つ必要はないとしながらも、「原発をなくすということはその潜在的抑止力をも放棄することになる」と
警鐘を鳴らした。同氏は、自民党政調会長を務めていた8月にもテレビ番組で同様の発言をしている。
石破氏の意見は激しい抗議を引き起こす代わりに、原発のメリットを今一度考えるきっかけとなっているようだ。読売新聞は
先月の社説で、「日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約(NPT)体制の強化に努め、核兵器の材料になり得る
プルトニウムの利用が認められている。こうした現状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実」として、
政府に原発継続を求めた。
ただし、これが少数派意見であることには変わりない。政府は、核兵器の製造・保有・持ち込みを禁ずる非核三原則を堅持
する意向を表明している。1967年の非核三原則に続いて、日本は1970年代にNPTにも署名・批准した。また、1996年には
核兵器を保有しない国として初めて包括的核実験禁止条約にも署名している。
一川保夫防衛相は先月のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、非核三原則に基づく既存政策を変更する予定は
ないと述べた。
原発継続提唱者の大半は核抑止力以外の理由を掲げる。野田佳彦首相は、電力不足への懸念を理由に、代替エネルギー
の開発が進むまで少なくとも向こう数十年はエネルギー・ミックスに原子力を維持する姿勢を示した。また、日本の国策を立案する
官僚の間では、脱原発への政策転換は、価格が不安定な石炭を用い、二酸化炭素排出量の増加にもつながる火力発電への
依存が高まるという意見がよく聞かれる。
最近の調査は、3月の福島第1原発事故を受けて、脱原発の世論が拡大していることを示している。しかし、商業用途の
原子力利用が広く支持されていたときでも、核兵器の導入には大多数が反対していた。1945年に広島と長崎に原爆が投下され、
世界で唯一の被爆国となった日本には長年の「核アレルギー」がある。
核兵器開発に向けた動きは見られないものの、専門家の多くは、使用済み核燃料を再処理して濃縮ウランとプルトニウムを
取り出す技術を有する日本は、核兵器開発に必要な材料を持ち合わせていると話す。また、弾道ミサイルと技術的にほぼ
変わらない政府助成の商用ロケットを用いることで、核兵器の発射も可能だという。
安全保障の専門家は、約40年間にわたる政策を変更して防衛目的の宇宙開発を可能にした2008年の法律や、弾道ミサイル
の誘導に必要な大気圏再突入技術を用いて2010年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」などが、弾道発射に用いられる
可能性のある日本の先進技術を浮き彫りにしたと指摘する。
しかし、日本にとって、日米関係の礎をなし、なおかつ強力な抑止力を提供する米国の核の傘を離脱するのは有意義でないと
する安全保障専門家がほとんどだ。
米国務省で30年間日本と関わった経験のある独立コンサルタントのケビン・メア氏は、日本が核兵器開発を行うのは政治的に
難しいとの見方を示す。また、コストや世論、防衛政策を理由に、日本が核兵器開発に乗り出すとの懸念を米国が抱いたことは
ないと明かした。
一方、中国、北朝鮮、ロシアなどの国に囲まれている日本にとって、問題はより複雑であるとする意見も聞かれる。ワシントン大学
の非常勤教授で日本の防衛技術に関する著作もあるサーディア・ペッカネン氏は、日本は「潜在的な核保有国」として十分な技術
を有しており、他国は核兵器に対する日本の判然としない姿勢を懸念していると述べた。
ソース(ウォールストリートジャーナル日本版) URLリンク(jp.wsj.com)