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ただ、今年に入ってからネットの世界で日護会が注目されているのは活動そのものよりも、それまで蜜月状態にあった在特会との
「決裂」である。昨年、信濃町で共同生活を送っていた日護会会員の間で、男女関係のもつれによるトラブルが発生した。
その過程である男性会員が自殺未遂を起こし、結果として除名される。これで事態は沈静化するものと思われたが、その除名
された男性を在特会が会員として受け入れたことから、両者の間で罵倒合戦が展開されたのであった。両団体のトップが直接に
顔を合わせることなく、ブログや動画を通して言い争うというところが、いかにもネット右翼らしい。
「ふざけんな、テメー」
「もういい加減にしろ!」
黒田と在特会の桜井が携帯電話で罵倒し合いながら、その様子をそれぞれが管理する動画で実況する。まるで子どもの
口げんかだ。桜井と黒田の双方と付き合いのあった「元ネット右翼」が呆れながら言う。
「愛国だの何だのと主張しながら、リアルな人間関係が貧困な連中が大半だから、つまらないことで離合集散を繰り返す。
仲間割れはしょっちゅう。男女間のトラブルも多い。結局、国家以外にアイデンティティを持たない者の集まりだから、大人として
自立できていないんです」
シビアに過ぎる物言いではある。しかし、現実社会から遊離した「ネット右翼」の言葉を耳にしていると、あながち的外れな評価とも
言えないような気がするのだ。
■苦悩する“ダルビッシュ”
(中略)
同じように私の前で迷いを見せたのが、徳島県教組襲撃事件(注2)で逮捕された星エリヤス(24歳・事件後無職・注3)である。
188センチの長身、ハーフ(母親がイラン人)独特の端正な顔立ちが特徴の星は、在特会の仲間からは「ダルビッシュ」と呼ばれて
いた。確かにモデルとしても通用しそうな美男子である。意外なことではあるが、在特会の中にはわずかながら、彼のように外国人の
親を持つ者も存在する。
星はハーフとしてこれまで生きてきたことが「しんどかった」と私に打ち明けた。
「僕が何人なのか、何人とのハーフなのか、これまで何千回と聞かれてきた。日本生まれの日本人なのに、外見ではそれを認めて
もらえない。だからこそ日本人として認められたかった。在特会の活動に参加し、日の丸を掲げているとき、僕はようやく日本人である
ことを強く自覚できたように思う。しかも在特会のメンバーは僕のようなハーフを何の抵抗もなく受け入れてくれたのです」
在特会は彼を「愛国者」として承認した。最初は躊躇していたが、街頭で「朝鮮人は出て行け」と大声で叫んでみると、何かが
吹っ切れたような気がした。
「活動を重ねるごとに、だんだん感覚が麻痺してきた。なぜか朝鮮人への憎悪も増してくる。正直に言えば……僕はアホやったと
思う」
逮捕された後、急速に「熱が冷めた」という彼は、現在は会の活動から少しばかり距離を置いている。
「振り返ってみれば、在特会のメンバーの多くは、友達がいなさそうな人ばかりだった。僕には、入会する前は趣味の音楽を通じて
多くの友達がいたのに、在特会の活動に熱中しているときは、彼らが僕からどんどん離れていった。他人にどう見られているかという
ことが、わからなかった。いま、後悔はしていないけれど……以前と同じような運動をしたいとは思わない」
星は明らかに揺れていた。
伏し目がちに話す星を見ながら、なにかせつなくなった。日本人として生きたいと願う星に、高揚と自信を与えてくれたのは紛れもなく
在特会である。そして同時に、必要のない他者への憎悪まで植えつけられたのだ。
星だけではないはずだ。在特会のようなネット右翼の組織に集う者たちは、「在日特権」こそが世の中の様々な矛盾を紐解くカギだ
と信じ込み、その剥奪を目指すことが「愛国」だと思い込んでいる。
ソース(G2、ジャーナリスト・安田浩一氏) URLリンク(g2.kodansha.co.jp)