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韓国の食堂街を訪ねると、テレビのグルメ番組で紹介されたことを自慢する看板がやたら目につく。番組の影響力は「3カ月は
店の前に行列ができる」とも言われるほどだ。だが、制作現場をのぞくと視聴率アップに奇妙なメニューが考案され、動員された
「なじみの客」が「おいしい」を連発。番組に乗せるからと店から数十万円の金をせしめるブローカーも暗躍する。そんな視聴者を
欺くようなグルメ番組の舞台裏を告発した映画が韓国で物議を醸している。
■キャビア焼き肉
「私はテレビに登場する店がなぜおいしくないのか知っている」。映画「トゥルー・マッ(味の韓国語)・ショー」は冒頭、そんな挑発的
なナレーションで始まる。
世界三大珍味のキャビアを載せた豚の焼き肉。高級食材を使っているはずなのに、普通の焼き肉の値段に若干上乗せした安さ
で提供されていた。
「キャビアは細心の注意を払って加熱せず、氷とともに出さなければならない」と説くフランスの名門料理学校のシェフは番組の
ビデオを見せられ、あぜんとした。
料理は食堂を制作会社に紹介したブローカーが、食堂を特徴づけるために考案したものだった。放送の2年後、メニューには
なかった。店主は監督の取材に「あれは放送用のメニュー」。ブローカーは「キャビア」はチョウザメではないほかの魚の卵と暗に認め、
「高価な素材を使えばおいしいのか。焼けば同じだ」と開き直った。この食堂はグルメ番組に30回も出演したという。
■テレビ局は反発
映画を制作した金載丸(キムジェファン)監督(40)は元テレビプロデューサー。題名は劇場社会を描いた米映画「トゥルーマン・
ショー」(1998年)から着想、「味の世界を通じて極端に商業化されたメディアを追及したかった」と語る。
映画は今春の全州国際映画祭で観客賞を受賞。「グルメ番組をめぐる不正行為の実態を暴露した」(朝鮮日報)と活字メディア
はこぞって好意的に評価し、単館系映画館中心の上映ながら、ネットでは18日の映画人気ランキングで2位になるほど話題を
呼んでいる。
内情を「暴露」された放送局は戦々恐々だ。
金監督の古巣テレビ局MBCは「店との金銭授受はなく事実に反する」と上映禁止の仮処分を申請。裁判所は棄却したが、
MBCは「動向次第で本訴訟も辞さない」と警戒を緩めない。別のテレビ局SBSは本紙取材に「社内調査の結果、問題はなかった」
としながら「臆測が出ている以上、問題の芽は摘まなければならない」とし、映画でやり玉に挙げられたグルメコーナーをなくした。
韓国放送通信審議委員会も映画が指摘した「捏造(ねつぞう)」の有無の確認作業に入るなど波紋は広がる。
■受け手の判断力
金監督は“やらせ”は一部と断った上で、「メディアの情報は自分で判断しろというメッセージだ」と強調。実際に自ら食堂を作り、
ブローカーとの交渉やグルメ番組の撮影風景を隠しカメラで撮影。大量の青トウガラシを入れた激辛豚カツを涙目で「常連客」
がほおばる姿が今年1月、地上波に乗った。いかがわしい制作システムを逆手に取り、テレビ局側をだました格好となったこの痛快な
シーンに映画館の観客は爆笑する。
金監督の概算では韓国のグルメ番組で紹介される店は年間9千軒余り。視聴者は知らずに激辛豚カツを食べることもあれば、
時には偽りの情報の発信源にもなりうる恐ろしさをも映画は暗示している。
ソース(西日本新聞) URLリンク(www.nishinippon.co.jp)
写真=「KBS、MBC放映」と書かれた看板を掲げるソウル市の食堂。韓国では放送局のグルメ番組にも取り上げられた店と
強調するこうした看板をよく見掛ける
URLリンク(www.nishinippon.co.jp)