10/12/19 04:33:22
在中国の丹羽宇一郎大使が中国への政府開発援助(ODA)を事実上「増額」するよう
意見具申したことは、誤ったメッセージを中国に送りかねない危険性をはらんでいる。
政府・与党内でも対中ODAに厳しい声が上がっているなかだけに、受け入れられる可能性
は低いが、丹羽氏起用を「政治主導」の象徴と位置付けた民主党政権の責任も問われている。(酒井充)
丹羽氏は意見具申のなかで、ODA強化による環境ビジネスや人材交流の促進が、
中国に進出する日本企業の利益や日本の国益につながるとの見解を示した。
経済成長が続く中国との関係を一層強化するねらいで、民間人としては初めて中国大使に
起用された丹羽氏だけに、経済面からのアプローチを図ったものとみられる。丹羽氏は20日
からの南京視察も経済外交の一環と位置付けている。
しかし、内閣府が18日に発表した世論調査で、中国に「親近感を感じない」との回答が8割
近くに達するなど、国民の対中感情が急速に悪化しているなかで、安易な増額はとうてい
理解を得られるものではない。
中国は9月の沖縄・尖閣諸島沖での衝突事件を受け、レアアース(希土類)の輸出停止など
の措置をエスカレートした。中断した高官レベルの対話は再開したが、衝突事件そのものに
ついては中国人船長らの非を認めていない。
そもそも日本の対中ODAは昭和54年12月、当時の大平正芳首相が訪中し「より豊かな中国
の出現が、よりよき世界につながる」と表明したことで始まった。戦後補償の色も濃く、中国の
改革・開放政策を支持していく手段という位置づけだった。
しかし、30年以上が経過し、日中の勢力図は大きく変わった。中国の国内総生産(GDP)は
55年当時は日本の5分の1程度だったが、今や日本を抜いて世界第2位の経済大国になること
が確実となっている。東南アジアやアフリカなどに積極的な財政協力を行い「支援大国」にまで成長
した。軍事費も21年連続で2桁の伸び率を示し、沖縄近海での中国海軍の動きも活発となっている。
中国は長年、日本の協力によるインフラ整備の実態を自国民に知らせず、感謝の言葉もないと
いう状態が続いた。日本側が増額に踏み切っても、感謝されるような効果はとうてい期待できない。
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