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新生児の「意識清明状態」に母子が肌をふれあい、授乳をすることで
母親の我が子に対する愛着心が刺激されることは事実としても、それがその後の母子関係や
子どもの基本的生活習慣の成立に影響を与えることを科学的に示したものがあったら見てみたい。
アメリカの心理学者アイアーは、母子愛着関係(ボンディング)についての研究のレビューを行い、
クラウスらの結論を批判している(「母性愛のまぼろし」大修館)が、日本では多くの小児科医が
その理論を現在でも金科玉条のごとく信じているようなのである。
最近わたしが編集委員を努める育児雑誌に、開業しておられる小児科医から投稿があった。
内容は「出産直後の愛着関係の不成立がその後の小児虐待の原因だ」というものであった。
わたしは編集委員の一人として困惑してしまったが、多くの編集委員の先生方は、
あたりまえの結論、と考えておられるようだった。
最近は母性論に加えて「3歳児神話」が育児関係者の間で大きな論争を呼んでいる。
論争になった理由は、一部の育児関係者にとっては自明のことであった「3歳児神話」を厚生白書が
「根拠がない」として否定したことだ。
しかし冒頭のキレやすく耐性のない子どもの増加という事態が、再び「やはり3歳までは母親が
子育てを行うべきだ」という方向に振れ始めている。
ただこの論争がいままでと一味違うのは、最先端科学を担う脳科学者までが参加していることだ。
その代表者が、意識を支える脳の構造について斬新なアイデアで精力的な研究を続ける澤口俊之氏である。
「わがままな脳」などの一般向けの啓蒙書をたくさん書いている澤口氏であるが、最近「幼児教育と脳」(文春新書)
という脳の発達と育児についての本を出した。そのなかで知性をささえるフレーム構造の発達のためには、
母親が子育てをする必要があるという理論を展開し、「少なくとも生後8歳までは母親は家にいること!
そして適切で豊かな愛情を(子どもに)そそいで欲しい」と結論している。
子育てに深くかかわらざるをえない小児科医は、こうした論争にどのように臨むべきだろうか?
(さかきはら よういち・昭和51年入局 東京大学医学部小児科講師)