11/06/06 01:59:12.54 発信元:122.49.254.171
天邪鬼、と形容するのにこれ以上見合う人間とは私はお目にかかれたことがない。
人間は嘘をつく生き物だが、彼の嘘は人を傷つける類のものではないから不思議だと思う。
相手に憤りなり安心なりを与える、いわば火をつけたりあたためたりしてくれるようなもの。
私が心を読めると告げ、それを納得した後に出た言葉が『そりゃタッグ組むには最高の力だな』だった時は(心の声も同じことを言っていた)本当に一瞬呆気にとられた。
深い地の底で、地熱のそばで、たくさんのペットたちに囲まれて暮らしていても充足しているけれど。
京さんはまるでどれくらい昔に見たかも忘れてしまった太陽の光を思い起こさせるように温かくて、もう少しだけそばにいたくなる。
「……そうですか、それはよかった。じゃあ、申し訳ないですがもう一眠りさせてもらってもいいですか? やっぱり疲れてるみたいです」
「そうしろそうしろ。疲れを引きずっちゃ勝てるもんも勝てないからな」
「じゃあ、ありがたく」
一言だけそう言って目を閉じる。せっかく起きて触れ合っているのに、眠ってしまうのはもったいない。
ただ、疲れているのは確かなのであえてしゃべらずに伝わる温かさを全部受け取ろうと思って。
『……よっぽど疲れてたんだな。んじゃ、次はできるだけ無理させないようにやってみますかねっと』
――あぁ、あたたかい。
聞こえている心の声を聞こえないふりするのに難儀しながら、私は胸の奥が陽気に包まれたように心地よく感じていた。
じゃあ、私も京さんが頑張りすぎて倒れることがないように気合をいれなくては。
日の光に憧れるだけでなく、同じ場所に立つパートナーとして歩めるように。
おしまい