10/11/13 12:07:32
ママちゃんのオリ設定ばっかの糞小説なんぞ、よくもまあおもしろがって読めるもんだな?
さすが低脳どもの巣窟www
12:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 12:10:35
>>10
逆にまともで常識人なキラは本物だと言っても信じられなくて隅で体操座り
13:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 12:43:34
楽しんだ者勝ちだよ負け犬君
14:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 13:06:38
>>11
このテのスレは大体がオリ設定だろうが
どうせどのスレでも同じ事いってるんだろゴミ虫www
15:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 13:42:03
>>11
天気もイイことだし表の空気吸ってこい
16:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 13:43:47
文句あるなら、オリジナル設定の無い、全ての住人に支持される作品を書けば良いと思うんだ
あ、君のあだ名は男なら「ふくだくん」、女なら「もろさわさん」に決めたからw
17:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 13:43:56
>>11
おめえのパパちゃんもそろそろ金属バットを持ち出す頃だぞ。
最初で最後の親孝行としておとなしく殴り殺されてやれやゴクツブシ豚w
18:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 13:48:22
なんでこう煽りが絡むとレスがすすむのかね・・
飲兵衛先生や98氏投下待ちの禁断症状?
787氏のも面白いんだがね、特にぶっ飛び具合が←これが嫌なのか>>11は?
19:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 14:00:15
>>18
NGに突っ込んだりできるのにしっかり読んで絡んでくるドMのお馬鹿さんなのさ
20:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 14:09:51
>>16
じゃあオカマだったら?w
21:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 14:47:19
これで紳士、か
やはり人に品性を求めるのは絶望的だな
22:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 15:03:40
自分をヒトだと勘違いしてる躾の悪い畜生の増上慢に鞭をくれてやるのも
紳士のノブレスオブリージュってやつだろ
23:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 16:44:30
>>7
議論の結果、「世界征服を目指すスク水でペッタンコな幼女」のきらが本物と認定
24:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 16:46:50
>>23
それはきらでキラじゃねぇww
25:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 17:05:08
シャアが見ているのだぞ、シャアが!
26:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 17:11:32
>>25
あんた時代ちげーよww
27:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 17:17:04
>>23
様をつけろよこのオタンコナスがぁ!
28:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 22:58:20
死んだ時代が判らんヤザンらしき人がルナマリアに憑いてるんだ、別に気にはならん
たとえ名無しでも男性が取り憑いてるだけで自暴自棄で狂暴になりそう
29:通常の名無しさんの3倍
10/11/13 23:18:55
>>28
すまんが、前スレで氏自身が取り憑いてる事を否定してる
867 :787 ◆x0o.lpJmC2ij :2010/11/06(土) 19:03:06 ID:???
そんなあなたに大ヒント
ネタバレになるけどこの際いいや、言っちゃう
『鋼-HAGANE-』でググッて頂戴
って
30:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:45:30
みなさんこんばんは、最近、ラクスのパートを書くときは
URLリンク(www.nicovideo.jp)
を聞きながら楽しんでおります、787です。
ここ数日の流れで心が折れそうになりましたが、16話が出来ました。
次から投下しようと思います。今度も誤字無ければいいけど・・
31:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:46:27
~アスラン達がディオキアで小休止をとる数日前
「まさか、喜望峰廻りになるとはねぇ……」
ユウナ・ロマ・セイランは、目の前に広がる海原を、憂いのこもった目で見つめていた。
大西洋連邦の圧力によってオーブが送り出した増援艦隊。
オーブ艦隊の旗艦である『タケミカズチ』のブリッジである。
スエズ基地への増援という名目であったが、まっすぐインド洋を突っ切るのではなく、
南アメリカを回り、大西洋を抜けて喜望峰を回り、スエズへと入るルートを取っていた。
ZAFT勢力下である現在の大洋州と赤道連合南部を避けるためというのが理由だ。
「ですが、わかりません。ZAFTと戦うという無理難題であれ、
どうして我々が黒海まで出向く必要があるのでしょう」
隣に立つアマギ‘戦時三佐’が、ユウナに問うた。ユウナは、
「インド洋だと観衆がいないんだよ」
派兵先が黒海方面だという理由は明白だ。
今現在ZAFTの勢力で一番目立つ働きをしているのは『ミネルバ』であり、
それを反連合色が日増しに強くなっていく、
ユーラシア東側やアフリカの民衆の眼前で、徹底的に叩きつぶす気なのだ。
それにより、世界各地のZAFT&反連合勢力の士気をそぎ落とす事に繋がり、
オーブの戦力も削れ、結果として大西洋連邦の一人勝ちという寸法だ。
「納得できません。我らオーブは、他国を侵略せず、侵略させず、他国の闘争に介入せず。
この三原則があってこそ、今の我々があるのではないですか?」
「わかってるさ。ウズミ閣下が生前おっしゃった『オーブの理念』。
それはオーブが胸を張って誇って良いと思っていたよ。
でもね、それはすでに二年前、連合に攻め込まれた時点で崩壊していたんだ」
「それは……」
二年前、ヘリオポリスにおいて連合との技術協力で『GATシリーズ』を完成させ、
あまつさえその技術を盗用し『アストレイシリーズ』を作ったという過去がある。
そして、理念を強硬に守り通した結果は…言うまでもあるまい。
「悲しいけど、これも戦争なんだよ。
僕らは、自分たちの手で、中立を壊す傷口を作ってしまった。
そのツケが、こうして回ってきた。それだけのことさ」
アマギは何か言い返そうと思ったが、ユウナの顔を見て、止めた。
「それに、これはカガリが下した決定なんだ。
『綺麗事を並べて国を焼くなんてもうたくさんだ』って。
びっくりしたよ、いったん部屋にこもったから心配してたんだけどね」
ユウナはブリッジの天井を見上げて、数日前オーブでわかれ少女の事を思い出していた。
「『連合の思惑には一度乗ってやるさ……』か、いやぁ…怖かった」
32:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:47:10
※※※※※※※
「カガリ、いるのかい?」
アラファス島・オーブ行政府。首長執務室の戸を、ユウナはトントンとノックした。
例の『アークエンジェル』と『フリーダム』の映像を水面下でちらつかせた、
大西洋連邦の高圧的な姿勢に屈し、オーブはとうとう条約締結にまで至ってしまった。
それだけではなく、同時に行われたオーブへの出兵要求。それすらも、断れる段階ではなくなっていた。
その事にショックを受け、カガリは執務室に引きこもってしまったのだ。
老人達はしてやったりという顔をして、議会を去っていった彼女の背を見送ったが、
ユウナは、何か彼女に違和感を感じていた。
押さえつけていた何かが開放され、彼女の胸中で鎌首をもたげた音が、彼には聞こえたのだ。
「入るよ」
ノブをひねってみると、鍵はかけられていない。彼はそっと、扉を開けた。
「……カガリ?」
彼女は、業務机の上にあった装飾など全てを叩き落とし、机の上に地図をひろげていた。
一枚の世界地図である。
それも、赤・青・黄の三色に塗り分けており、ユウナは、勢力図だと悟った。
「……ん? ユウナか」
カガリは、先程の怒りの表情はどこへやら、彼の予想に反して冷静だった。
「まさか、私が部屋で暴れているとでも思ったか?」
「まぁ、そんな所かな。…これでも十分荒れてる方だと思うけど」
ユウナの小言を無視し、カガリはじっと地図を見つめる。
大西洋連邦、東西ユーラシア、赤道連合、南アフリカが青に塗りつぶされ、
アフリカ共同体(アフリカ北部・中央)、大洋州、が赤。
残っている東アジア共和国が黄色という塗り分けであった。
「これが…オーブ」
カガリは重い口調で、オーブを青く塗りつぶす。
「私は、お父様を裏切った女になってしまった」
「そんな事…」
無い。そう言いかけて、彼は口をつぐんだ。彼女の目が、猛禽さながらの目つきになっている。
何かが、彼女の中で壊れたのか、押さえつけていた感情が爆発したのかはわからない。
彼女は、ゆっくりと部屋の中を歩き回って、張られた窓から青天を見上げて、言った。
「だが、これで『お父様』に拘る理由もなくなった訳だ」
ユウナは愕然となった。父親のウズミを慕い、
その後を追おうと懸命になっていた少女の言葉とは思えない。
「こうしてみると、当初の連合はプラントに対し優勢だったな。
しかし、この数ヶ月で、趨勢は変わった。……ミネルバの手によって」
カガリはまた赤いインクを筆に付けると、ユーラシア東側(東欧・中東)地域、
そして、赤道連合南部(東南アジア東)を真っ赤に塗りたくる。
カガリは、自分に言い聞かせるように語っている。
以前の彼女なら、どれほどの材料が向こうにあろうと、先程の議会で強硬に反戦を口にしていただろう。
そう、……彼女の父のように。
33:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:47:52
彼女は手元の筆をくるくる回しながら、言う。
「私は、今までお父様の言葉こそが正しいのだと思っていた。
『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない』
…お父様の掲げられた理念こそ、最も崇高な考えだとな」
「…………」
「でも、それでいいのかって思ったのも事実だ。
国を焼かれ、家族を失った者達からすれば、
私の言葉はすべて荒唐無稽、無知蒙昧な子供の戯言だろうからな」
シン・アスカのあの言葉を思い出す。
『自分の口にした言葉で誰が死ぬかとか、真剣に考えたことがあるのかよ!?』
あれが心に突き刺さったのは、本当に考えたことなど無かったからだ。
「だから今オーブが、世界から孤立しない、国民に見捨てられないためには、
何をすべきなのかをずっと考えていたんだ。…綺麗事で国を焼くなんてもうたくさんだ!」
カガリは、脱ぎ捨てていた首長用のスーツを着直し、ユウナに向き直って、
彼は、グッと息を呑んで彼女と相対した。
これほど緊張するのは初めてだ。今までの彼女にはない『何か』を、全身に浴びせられている。
「オーブは、大西洋連邦の要求を呑み、派兵する」
「それが君の答えかい?」
「ああ。連合の思惑に一度は乗ってやるさ……。
今溝を掘っておくのは得策ではないし、連合・ZAFT双方のオーブへ手を出す気力も削がせる。
プラントとは対立することになるが……、デュランダル議長は聡明な方だ」
「……なんでここで議長の話が?」
「あ、いや! それはだな……」
あとでプラントとの対立に落としどころを見いだす気が満々だ。
急に先程までの雰囲気が雲散し慌て出す彼女を見て、ユウナが腹をかかえて笑いだした。
カガリは少し機嫌を悪くして、
「笑うな! 私なりに一生懸命考えてだな…!」
「いや、ごめん。僕と全く考えていることが一緒だったから、つい…」
「すまないな、片づけを手伝わせて」
「気にしないでよ。こう見えても、今喜んでるんだよ、僕は」
カッとなって叩き落とした装飾や文房具などを、
我に返ったカガリは拾い始め、ユウナはその手伝いを始めた。
「君はもうちょっと本音を口に出さないようにすればいいのに」
「う、五月蠅い……? これ…」
ふと、カガリは写真立てを拾って、黙り込む。
ユウナは散らばった書類をケースに入れ直すと、彼女の後ろに近づいて手元をのぞき込んだ。
「ウズミ閣下の写真…」
「……怒ってるかな、やっぱり」
カガリは、そっとそれを机の上に置き直して言う。
この決断は、正直今までの自分の歩んできた道を否定する事なのである。
「怒ってると思うよ。でも、きっとわかってくれるさ。
カガリだって、オーブを想っての決断なんだ。
酷に生きる事は過酷に死ぬ事より何倍も力が要るんだから…」
「ありがとう、ユウナ」
彼女は肩にポンとのせられたユウナの手を握った。
34:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:49:30
※※※※※※※
「そんな事が……」
「アスランには悪いけど、ミネルバにはボロボロになってもらわなきゃ。
……僕たちオーブの、カガリの決断を無駄にしないために」
「しかし、そういう意図であれば、ミネルバを叩くのは得策とは思えませんが…」
「今は僕らは連合側だよ?
一事に全身全霊で当たれない国を、寝返ったところで誰が信用するんだ」
ユウナはアマギにそう言い聞かせる。
そして、本国で今懸命に国民の怒りとぶつかり合っている彼女に思いをはせる。
念のため、国防軍トダカ戦時准将を傍らにつけている故、親父達首長達も迂闊に彼女に進言できまい。
彼は、典型的な、オーブに忠誠を誓った猛将である。きっと彼女の良き支えとなるはずだ。
「後はデュランダル議長が『曹操』のような器のある人物であることを祈るばかり、か。
……まるで『張繍』だね、僕らは」
機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
~Revival of Red Comet~
第16話
「地球軍に増援、ですか」
シャア・アズナブル、アスラン・ザラ、ハイネ・ヴェステンフルスら三名は、
ミネルバ艦長室に召集され、タリアの口から、軍本部から下りてきた情報を聞いていた。
タリアは、真後ろのパネルを地図のモードへ切り替えると、
アフリカ北部から南ヨーロッパ、中東地区を映し出す。
「アフリカ共同体から送られてきた情報よ」
ジブラルタル狙いなのか、黒海方面狙いなのかまだわからないとの事だ。
「この時期ならば、スエズへの補給路確保と見るのが妥当でしょう」
「ええ、ここでスエズが落ちれば、趨勢は一気にこちらに傾きますから」
シャアとアスランが言う。
ガルナハン基地陥落以降、ユーラシア東の勢力図は一気に塗り替えられた。
東欧、中東、北アフリカがZAFT側に付く事を表明し、
南アジアを初めとする赤道連合も、
だんだん反プラント色を弱める傾向がある。
「これからが大変ね、せめぎ合いになるのは避けられないでしょ」
ハイネが、タリアのその言葉に返すように、
「その増援はともかく、現時点のスエズの戦力はどれほどの規模なんです?」
「数は勿論だけど……入った情報が正しければ、『彼ら』がいるわ。
インド洋で出くわした地球軍の連中」
やはりな、と、シャアとハイネは内心そう思った。でなければ、彼らがあそこにいるはずがない。
それにしても、厄介なことになった。
「これより本艦は出撃するわ。
マルマラ海入り口、ダーダネルス海峡でこれを迎え撃つ。
発進は〈06:00〉。いいわね」
35:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 00:50:05
支援
36:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:50:41
「「「 了解! 」」」
タリアは、新たにミネルバに加わったハイネに目をやる。
ミネルバクルーの中で唯一の『特務隊』の人間である彼には、確認を取っておく必要があった。
「貴方も、よろしい?」
「ええ、それはもう」
「ならいいわ。アスランだけ残って、後は発進準備に取りかかって頂戴」
アスラン本人は、何故自分が残されるのか疑問に想った。
シャアとハイネは、アーサーの後を追って艦長室を退室する。
一人残る彼に、タリアは残酷にも、
「今度、地球軍の増援として出兵したのは……オーブ軍だそうよ」
一瞬、アスランの中では‘考える’という行為そのものがストップした。
足下がふらつき、彼は思わず部屋の壁に手をかけて、倒れかけた体を支える。
「オーブ? ……なんで?」
「言いにくいけど、あの国も連合の一員になったという事ね。
驚いたわ、オーブの姫が決定したそうよ。連合に組するって」
「カガリが!? まさか! ありえない!」
アスランは顔を真っ赤にして、艦長室の壁を叩く。
鈍い音と、アスランが荒く息を吐く音が部屋に響いた。
「悪かったわね、この黒海への地球軍侵攻阻止は、
軍本部からの命令なの。避けることは出来ないわ」
アスランは、戸惑いを隠せなかった。オーブは、第二の故郷と言っても良い所である。
そして、自らが愛した人たちが住んでいる国だ。そこと戦うのか?
「今はオーブも地球軍なのよ、アスラン」
タリアは厳しい声で告げ、アスランはゆっくりと身を起こして、
「……はい」
軍に復帰した以上、ZAFTと敵対するならば撃たねばならない。
それはわかっていたが、彼の胸中は複雑な感情が渦巻いている。
退室し、レクルームに向かおうとしたアスランに、話しかけた男がいた。
「ハイネ…」
「少し、いいか?」
甲板へと移動した後、ハイネは手すりに手をかけて、
「オーブにいたのか、大戦のあとずっと。
……いい国らしいじゃない、あそこ」
「ああ……」
アスランはチクチクと心を刺す痛みに耐えながら言う。
東南アジアの綺麗な海に、暖かな気候。プラントにはない、緑と青で彩られた島々。
「このへんも、綺麗だがな……」
黒海を見つめながら、ハイネは言い、アスランに向き直る。
「戦いたくないか……オーブとは」
アスランは、思わずハイネに目をやる。
責める気などけっぺんも無い、穏やかな顔だった。
37:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 00:51:55
しえん
38:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:52:23
「…………戦いたいとは思わないよ」
「そっか……。じゃあ、どことならお前は戦えるんだ?」
「え…!? いや、どことならなんて……戦わないのが一番だと思っただけで」
「俺もそうさ」
ハイネはまた黒海の海面に目を戻し、
「でもよ、アスラン。今は戦争なんだ。
お前のように、誰もが終わらせたがってる。
そのために、俺たちは軍人やってるんだ。そうだろ?」
アスランは、彼の言葉に何も言い返せなかった。
「割り切れよ。でないと死ぬぞ」
「はい…」
アスランは、頭の中の雑念を振り払うように、力強く言った。
※※※※※※※
「その仮面、外してはいただけないか? ロアノーク大佐」
タケミカズチのブリッジ内で、招いた地球軍士官にユウナは言い放つ。
すでにブリッジ内の空気は張りつめており、誰もが固唾を呑んで彼らを見つめていた。
士官がネオ・ロアノークと名乗り、ユウナと握手した直後の言葉である。
「…それだけは勘弁願います、司令官殿。
顔の醜い傷を曝したくはありませんので」
「……そうか」
ユウナは素っ気なく言い放つと、ブリッジに設置された戦略パネルをながめ、
「先日の紅海戦で我々の存在はすでに知られているだろうから、
航行速度から見て、敵はマルマラ海付近で待ち受けていると考えてもよろしいな?」
「さすがはオーブの軍を仕切っていらっしゃるだけはありますな、私も同意見ですよ」
この間までの高圧的な態度は何処へやら、スエズに到着した段階から、
連合側の態度は慇懃なものであった。目の前の男が地球軍の一士官であり、
ユウナがオーブの司令官という立場を考えれば自然なのかも知れないが、この態度は異様だ。
(此奴……僕たちを矢面に立たせる気だな)
ユウナはジッとパネルを見つめた後、
「しかし、我々は小勢だ。敵はあのミネルバ、我が国の領海付近で六隻の戦艦を潰した艦。
アレ相手に正面から挑むのは得策ではないな」
そこで、とユウナは続けて、ダーダネルス海峡の地図を拡大し、旧トルコ行政区・チャナッカレ県の部分を映し出す。
「現在編成された連合・オーブ混成軍の中で、
唯一あの艦との交戦経験がある、『J.P.ジョーンズ』。
つまり貴公の艦だが、囮としてダーダネルス海峡付近まで、ミネルバをおびき寄せてもらいたい」
「なっ……!?」
ネオの口から驚きに満ちた声が漏れ、ユウナは内心ほくそ笑んだ。
あの仮面で表情は読めない。恐らく、眉をひそめていたりするのだろう。
「問題はありますまい。貴公等は一度あの艦との戦闘をくぐり抜け、
あまつさえ損傷すら与えている。おびき寄せるなど訳もないはずでは?」
ユウナがその後語ったのは、ミネルバがダーダネルス海峡に差し掛かった瞬間、
チャナッカレ県・ビガ北東部からオーブ軍全軍でミネルバを挟撃するというものだった。
ネオは言い返そうとしたが、作戦として成り立っている上、
形の上ではオーブに軍を出してもらっている立場なのだ。
彼には、これ以上言う権利すら与えられず、ブリッジを後にする他なかった。
39:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:53:23
※※※※※※※
シン・アスカはノーマルスーツに着替え、怒りにまかせてロッカーを叩く。
隣で着替えていたのは、アスランだった。
「おい、シン。どうした?」
「別にどうもしませんよ! 相手はオーブと言っても、今は地球軍なんでしょ!?」
イライラを隠さずに、シンはエレベーターに駆け込み、アスランは彼の隣に並び、エレベーターのボタンを押す。
「君は……」
アスランが、優しい表情でシンに向かって言った。
シンは、彼の顔を睨みつけたが、彼のその表情に少し戸惑い、
「な、何です?」
「君は……本当はオーブが好きだった。そうだろ」
「はぁっ!?」
シンは一瞬、アスランの言動を理解できずにいた。自分がオーブが好き?
まさか、そんなことあり得るはずがない。
「オーブが好きだから、君はそうやって怒ることが出来るんじゃないか」
「違います!」
シンは荒々しく返して、俯く。肩も手も、震えていた。
怒りによるふるえなのか、悔しさによるものなのか、シンにはわからなかった、
悔しさ? 何故自分は悔しがっている!?
『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない』
心底憎んでいたはずの、ウズミ・ナラ・アスハの顔が、頭に浮かんでくる。
シンは頭を振った。消えろ、…そう念じながら。だが消えなかった。
「……俺も、オーブは好きだよ」
アスランはシンの顔を見つめながら言う。
「だが、今は撃たなければならない。戦争を終わらせるためにな」
シンは、アスランから放たれる‘オーラ’とも言うべき何かに気圧された。
何か、以前より少し大きな人間になったような、そんな気がしていた。
エレベーターがハンガーに到着したことを知らせるブザーが鳴り、
空気の抜ける音と共に扉が開く。
「行くぞ、シン」
「は、はい!」
「地球軍艦隊確認しました。空母が一、戦艦五。
…敵艦から熱紋射出を確認! 西南西、数十五!」
バート・ハイムが、ブリッジに響き渡るように告げ、クルーの顔は引き締まった。
やはりここか、タリアはそう思ったが、先に海峡を抜けた相手の早さだけは予想外だった。
「MSです! 機種は、『ウィンダム』と『ダガー』」
「オーブ軍じゃない、か……!? バート、索敵範囲を拡大させて!
オーブ軍は別方向に潜んでいるわ。MS隊は、二手に分け出撃させる!」
タリアは、インパルス、セイバー、カオス、そしてシャアのザクに出撃するよう下知した。
シンはオーブの出身だし、アスランも以前まであの国にいたのだ。
相手が連合の方がいくらかやりやすいに違いない。
それに、長期戦になった場合にすぐ戻ってこれるパイロットを先に出した方がよい。
そう言う判断である。ハイネを始め、レイ、ルナマリアは艦内で待機となった。
40:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:54:32
一方、シャアはコクピットの中で、妙な胸騒ぎを感じていた。
「何だ……?」
ザワザワとした、不快な感覚だった。
地球軍やオーブ軍のような、軍人の出す殺気とは別物の、子供の癇癪にも似た感じ。
シンのものでも、アスランのものでも、レイのものでも、ルナマリア達のものでもない。
もっと別の、遠いどこかから此方を窺っているような……
『アズナブル機、カタパルトへ』
「了解だ」
艦内にメイリンの声が響き、シャアはザクを移送クレーンの下まで移動させた。
(あれは南ではなかったな。北か……?
いや、そちらは我々のテリトリーだ。何が潜んでいるというのだ)
「シャア・アズナブル、ザク、出るぞ!」
かけ声と共に、シャアの赤いザクが空へと射出され、
中央カタパルトから射出されたグゥルの上に飛び移る。
彼の後ろを、インパルス、セイバー、カオス等が追従していた。
「敵は以前のような規模の艦隊ではない。
だが油断するな、オーブ軍が側面を突いてくる事もあり得る。
敵をなるべく母艦から引き離し、ミネルバの斜線上までおびき出す!」
「「「 了解! 」」」
地球軍艦隊から、ミサイルのシャワーが打ち上げられる。
それらは初めからシャア達を狙わず頭上を通り過ぎ、まっすぐミネルバへと飛んで行く。
アスランのセイバーが、振り向きざまに背部ビーム砲でそれらの大半を焼き払い、
残りはCIWSに撃ち落とされた。
『アイツらがいないみたいね』
『こっちが疲れてきた頃に出す腹づもりだろ!』
ノエミに対しシンは怒鳴ると、先陣を切るウィンダムに真っ向勝負を挑み、
相手が放ったライフルを身をひねってかわすと、すれ違い様に脇腹にビームを撃ち込んだ。
シャアの赤いザクが、グゥルの上から空中へ飛び上がり、
ダガーの懐に飛び込み腹部を撃ち貫くと、機体を蹴りつけて別の機体に向かっていく。
曲芸さながらの動きに、連合側のパイロット達が怯み、その隙をカオスとセイバーがついた。
カオスの脚部サーベルがウィンダムを両断し、セイバーのライフルが放った光が、
別の機体のコクピットを焼き焦がす。
『なら、疲れる前に全部叩き落とす!』
シャアは背後に迫ったウィンダムに、逆手で持ったサーベルを突き立てながら、
シンのその言葉を聞いて、どこか自棄になっている気がしていた。
(故郷が敵になればそうもなろうが……)
空になったグゥルの上に再び降り立つと、視線の先にいる地球軍艦隊から、
また次々とMSが発進してくるのに目をやって、嫌な予感がした。
肝心のミネルバが、レーダー上でどんどん前に出てきているのだ。
自分たちを援護する気だろうが、シャアは、自分たちが敵の掌中に転がり込んだことを察した。
「ミネルバ! 左後方!」
41:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:55:21
※※※※※※※
「ミネルバの艦長さん、意外と冷静さに欠けてたね」
ユウナは、ミネルバが連合艦隊に近づいていっているのに目をやって呟く。
タイミング、流れ共に最良だった。
今出て行けば、連合とZAFT双方にオーブの武威を見せつける好機となるだろう。
だが、妙な不安が彼を襲っていた。このまま出て行ってはいけない。
しかし、彼は躊躇せず、タケミカズチのハンガーへと下りていく。
彼は、セイラン家の紋章を刻んだ、薄紫のノーマルスーツを着込んでいた。
ハンガーには、ムラサメとアストレイのパイロット達が、整列して彼を待っている。
ユウナは、彼らを見下ろせる一段高い位置に立ち、
「ユウナ・ロマ・セイランである」
覇気のこもった声で、言った。彼らの間に流れる空気が自然に締まる。
「此度の出兵は、諸君等にとって度し難いものと思う。
『これはオーブの理念に反する』と、叫びたい者もいるだろう。
……それは別に構わん。
そう思うなら、この戦いは何としてでも、我らの勝利で終わらせねばならない!」
ユウナは、一段一段、彼らと同じ高さへと下りていきながら叫ぶ。
「理不尽、横暴な大西洋連邦の要求に耐え!
理念を破らねばならなくなった無念に耐え!
その結果得るものが敗北である事は、決して許されるものではない。
今ここで、我らが為すべきはこの苦難を乗り越え、
故郷で待つ家族達に、『勝利』という朗報を持ち帰ることに他ならん!」
パイロット達の顔に、力がこもっていく。
この戦いに勝ち、オーブを高みへと導き、大西洋の横暴におびえることのない強い国となる。
そのために、自分たちはここにいるのだ。
「私も、諸君等と痛みを分かち合う為に、ここへ来た。
諸君、オーブを、そして家族を、これ以上戦火にさらさないためにその力を貸してくれ」
最後の一段を下りて、パイロット達と同じ目線に立ち、彼ら一人一人の肩を叩きながら、ユウナは言った。
そして、振り替えって一機の機体を見上げる。
マゼンダと白と赤。三色で塗られた一機のMSを。
『MVF-M11C ムラサメ』
オーブ国有企業『モルゲンレーテ』が、アストレイに代わる主力量産機として開発した可変MSである。
各自機体へと搭乗していくパイロット達を見やりながら、
「喧嘩は嫌いだけど……まぁ、仕方ないよね」
彼は、右手に持っていたメットを、自らの頭にかぶせ、昇降用ワイヤーを掴む。
(マゼンダって……なんか悪役っぽいよなぁ。紫は好きだけど……)
そんな事を考えながら、コクピットに滑り込んだ。
42:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 00:56:09
※※※※※※※
『後方7時の方角より熱紋反応。数は二十一、MSと推定。
機種特定。……オーブ軍です。『ムラサメ』と『アストレイ』。
艦船は、空母が一、護衛艦六!』
通信機越しに、オーブ艦隊が現れたという報が入り、
遠目に、ミネルバからMSが出撃していくのが見える。
ハイネとルナマリアが上空を陣取り、レイが甲板で待ちかまえるのを……
シャアやアスランは、ミネルバの援護に向かいたいところだが、それが出来ない状況だった。
「オーブのMSか……!? “Z〈ゼータ〉”だと!」
脇目にオーブ製のMSを見やったシャアは驚愕した。
~『本当に排除しなければならないのは、地球の重さと、大きさを想像できない、あなたたちです!』
~『大尉はファを連れて退がって下さい! ハマーンとシロッコは、僕がやります!』
自分が目をかけた少年の声が、頭に甦る。それと同時に、怒りを覚えた。
身勝手だが、『思い出に土足で踏み込まれた』…そんな気分である。
だんだん、ウィンダムとダガーの数が減っていくことが認識でき、
シャアはさらに、サーベルを振るってウィンダムの胴を横薙ぎに切り裂いた。
そして、ミネルバが急速回頭してゆくのを視認し、通信が入る。
『これより、タンホイザー発射態勢に入る!』
グゥルが射出され、甲板のレイ機が上空へと上がり、
ミネルバが離水しながらオーブ艦隊へと艦首を向けた。
現在の戦力差は、ミネルバ一隻に対し、向こうは約十三隻だ。物量で言えば向こうが圧倒的に勝る。
そして、プラント側は『領土的野心はない』と表明している以上、ミネルバは単独で動かねばならなかった。
ディオキアからは、アフリカ共同体が援軍を出してくれたという吉報が届いていたが、
それが間に合うかは定かではない。
そして、一撃で艦隊を殲滅できる戦術兵器であるタンホイザーを使えば、
相手の機先を制する事が出来、優位に立つことが可能なのだ。
オーブ軍人の苦しい立場を、シャアは理解していたが同情はしなかった。
(こうなる結果を招いた自分自身を呪え……)
『艦首砲、射線軸よろし!』
『よし、起動開始。照準は……オーブ艦隊!』
その声と共に、ミネルバの艦首がゆっくりと開いていき、
大蛇が大口を開けたように、ミネルバが誇る牙が姿を現す。
『タンホイザー機動。照準、オーブ艦隊。
プライマリ兵装バンク、コンタクト。出力安定。最終セーフティ解除』
砲口に、次々と光が点っていく。
オーブ側も、ミネルバがやろうとしていることに気が付いたらしい。
マゼンダのムラサメを先頭に、オーブのMS部隊は散開し、艦隊は転進しようとした。
だが、もう遅い。
『てぇーっ!』
勝った。ZAFTのパイロット、そしてミネルバクルー全てがそう確信した。
オーブには、あのカニ型やクモ型のような、バリアを搭載したMAなど配備されていないのだ。
しかし、意外な形で、彼らの思惑は砕かれることになった。
43:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 00:56:56
支援せねば
44:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 01:00:16
『きゃぁああああああ!』
「ミネルバ! どうした、何があった!」
一瞬、閃光がミネルバの艦首を突き抜けていた。
ミネルバの艦首は爆発し、煙を上げながら、ユラユラと海上に落ちていく。
閃光の放たれた場所は、オーブ側でも、地球軍側でも無かった。
出撃前、シャアが感じ取った違和感の元である、北方から。
戦場にいる全ての者が、その手を止めて、そちらへと目をやった。
その方向に目を向けたシャア等が見たものは……
「……白いMS? 『ガンダム』だと……」
十枚の羽を広げ、大空に佇む天使の如きMS。
前大戦で猛威を振るい、伝説にまでなったMS。
『あれは……『フリーダム』!? ……キラ!?』
第16話~完~
~~~~~~~~~~~~~~~
これで終了です。もはやユウナが「誰!?」レベルまでいってしまったorz
それと戦闘描写が少なくなってしまったのも悔やまれます。次回で挽回せねば・・
誤字脱字あればどしどし言ってください。
それと、気に入らなかった場合は私のトリをあぼ~んして頂きたい。切にお願い申し上げる。
では、またこんどお会いしましょう(・ω・)ノシ
45:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 01:46:50
乙でした。一度拝読した限りでは誤字らしき誤字は>>40の
×⇒「~ミネルバの斜線上まで~」
○⇒「~ミネルバの射線上まで~」
ぐらいでしょうか。
またやっぱりタンホイザーブチ抜かれてしまいましたが、シャアの事前の
感覚から察するまでもなくどう見てもキラツーです本当にあ(ry
上で誰かが言ってたAAのザフト合流を不可能にするためのラクスの差し金かな?
アスランがアスランでいられるか凸に成り下がるかの正念場でもあるわけで
続きを楽しみにしてます。
46:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 01:50:51
>>45
確認しました。>>40「斜線上」→「射線上」ですね
ありがとうございます
47:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 02:01:33 /sAWdZtn
787さん
乙です~
最近ペースはやくて逆に心配に(笑)
48:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 02:03:53
やべ上げちまった
スマソ
49:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 03:34:04
787さん乙っした
原作でもそうだけど、アスランはこのフリーダムの武力介入以降が綺麗なアスランになるか、汚い凸になるのかのターニングポイントだなw
50:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 08:26:16
乙ですが、一読しての誤字報告をば
31.オーブでわかれ少女
→オーブでわかれた少女
36.けっぺん
→欠片(かけら)
あと、厳密に誤字と言えるかは微妙なれど、違和感あるのが
31他.タケミカズチ
→タケミカヅチ
39.下知
→下令
の辺り?
個人的には、単語の選択として「撃つ」より「討つ」の方がよさ気な文が幾つかあったりもしますが、誤字ではないですね
51:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 09:00:16
乙であります
シャアは飛行する可変MS見たら乙をいの一番に連想するのか
52:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 09:04:35
あと一文字違えばだったら確変だっのに
53:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/14 09:23:33
>>50
ありがとうございます。ちくしょう、この間は無かったのに・・
>>31「オーブでわかれ」→「オーブで別れた」
>>36けっぺん→欠片
教養無ぇなぁ、俺orz
ただ、
・「タケミカズチ」ですが、これは後藤リウ先生の小説版に遵守したものですのでこのままで。
・下知については、
下知(げじ)~1 上から下へ指図すること。命令。
「―ヲ受ケル」〈和英語林集成〉
「四国の者共に、軍(いくさ)ようせよと―せよかし」〈平家・一一〉
2 「下知状(げじじょう)」の略。←命令書のことです
「鎌倉殿御―を添へて遣はさる」〈義経記・八〉
なので、正しいと判断しています。
54:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 09:35:14
後藤リウのノベライズはあの脚本になんとか整合性を取らせようとして
苦心惨憺してる様子が透けて見える労作ですた
ただ途中でそれを放棄したような面もありましたが
ここはしかし787氏にはZ、いや乙と言っておかねばなるまい。
きれいなユウナがこの先生きのこれますようにお祈りいたしまする・・・
55:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 13:20:16
シャア、ガンダム顔のバーゲンセールに何思う
56:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 13:23:39
このフリーダムとキラがオリジナルじゃない可能性もあるな
というかラクスに裏切られて意気消沈のキラとAAの面々が乱入するとも思えんし
57:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 13:45:42
>>56
逆に自棄になったオリジナルって可能性は?
「もうどうにでもな~れ」って感じで
58:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 13:48:19
CCAってなに?
59:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 13:52:24
>>58
逆襲のシャア
Char's Counter Attack
でCCA
60:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 15:03:12
なるほど! ありがとう
61:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 16:02:31
AA組が他に行き場が無くなってオーブに戻るのかもよ
そのためのミネルバ攻撃。
陽電子砲出されたら艦隊はヤバいし放射能汚染の心配もあるし
62:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 16:47:41
単純にAAはオーブには戻れない、連合が黙っちゃいないし。
そしてAA組をネオ指揮下のファントムペインへ貸与
63:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 18:24:43
>>62
まぁ、戻れんわな
形だけとはいえ、オーブが連合に下った以上、下手するとブラックラクスに
影で操られるだけの存在になりかねん。
これじゃ、逃げた意味ないし。
となると、やはり>>10になるか...
しかもクルー全員のクローンまで出てくると...
64:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 19:08:49
>ブラックラクス
スーパーラクスもいたりしてなw
ブラックラクスの方がしつこく復活してくるんだろうけど
65:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 19:27:46
>>63
「ならばここはこの再生トールが行くとするか」
「いや、このハサミマードックが行かねばなるまい!」
「いやいやこの目の見えるマルキオが参りましょう!」
「操舵技術を知らないノイマンが行き申す!」
「それじゃ弱いじゃねえか!」「ここはこの全裸紳士が」
「ほほほほほ!ここはこの眼帯無しのヒルダが行かせてもらうよ!」
「だめだよそんなの!」「なんでこの時期にヒルダがAAにいるんだ!?」
「このコスモXのコスモドライバー久々に炸裂させるとするか!」
「この、実は正体がムウのネオ・ロアノークにお任せを!」
「いや、この本当にムウじゃないネオの方が強いぞ!」
「この人食いELS様もちょうど腹が減ってきたところだ!」「あぎゃーーっ!」
「こんなのと戦ったかなあ…」
「あーっアスランがいきなりズボンのベルトをーーっ」「げえーーーっ!!」
「しかし一万人以上いるとちっとも決まらねえぜ」
66:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 19:35:54
ローディスト乙…というかそのネタかなり古参でないと分からんだろw
67:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 20:53:48
>>65
涙でた・・・
そういえば本誌はどうなったの?
68:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 21:03:40
数年前に読んだ時はかなり腐女子読者寄りになってたけど……最近本屋にいかないから分からんな
このご時勢だから廃刊になっててもおかしくないけど
69:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 21:32:02
>>68
ウィキより
2003年10月5日
ラポートが倒産したことにより9月13日発売の10月号を最後に休刊となる。
10月15日発売予定だった11月号は、完成済みだったが発行されなかった。
2003年12月15日
少年画報社系の大都社によって発行が継続されることになり、2004年1・2月合併号から再開される。
(この号よりタイトルロゴが2代目のものに戻る。その理由は語られていない。)
2008年12月 - 「ファンロード・モバイル」開始。
2009年3月14日(4月号)
巻末で、大都社からの出版が休刊になる告知がされる。
休刊中は他の出版社での復刊を模索しつつ、モバイル版の運営をしながら本誌の投稿も従来通り受け付けていた。
2009年7月16日
発行元をインフォレストに移し、コスプレ情報誌「COSMODE」の増刊『ファンロード改』として復刊。
2010年1月16日
発売予定だったVol.4が、誌面リニューアルのため発売延期になることがモバイル上で告知される。
2010年6月9日
グライドメディアからegg増刊『投稿道F』(とうこうどうエフ)と改称して4度目の復刊を果たす。
2010年11月8日
発売予定だった第4号発売の中止をTwitterで発表。新たな引受先を模索する予定としている。
70:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 21:35:05
>>69
この情報ってこのスレに必要な情報なの?
71:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 21:42:31
>>69
㌧クス
しかし>>70の言うとおりスレに全然関係無い話だからこのへんで自重しよう
72:通常の名無しさんの3倍
10/11/14 22:43:36
戻れなきゃ傭兵になるって手も
73:通常の名無しさんの3倍
10/11/15 12:28:51
787氏乙でした
今回も楽しく読ませていただきました
では誤字を
36 組する→与する
最近、誤字探しが楽しくなってきた
74:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/15 16:13:45
どうも、「兄より優秀な弟など存在しねぇ!」
と弟に連ザⅡ挑んでボロ負けしました787です。
>>73
辞書読んで確認しました。
>>36~タリアの台詞中「組する」→「与する」
です。ありがとうございます。
75:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 14:07:05
レスがこうも空くのはめずらしいな
亀レスだが787乙でした。また誤字ですか(笑)
今度はがんばってください・・自由が誰乗ってるか気になるし
76:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 17:18:57
最近気がついたけどオールレンジ攻撃の真の恐怖はその後に来るダッシュ斬りからのビームサーベルの連撃なんだな
77:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 18:00:23
>>76
それが旧型なのにキュベレイINハマーンが強い理由
プルツーがマシュマーに圧倒されたのもファンネルをオールレンジにしか使わない経験の無さから来ている。
CEだと一番ドラグーンを使えるのはクルーゼ(次点でネオ)で他は浮遊砲台以上の仕事してない
78:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 18:52:08
ライフル1発orドラorファンネル1発ND格闘はVSシリーズの常識よ
79:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 18:55:47
>>77
ストフリなんかまさにそうですね。
80:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 19:04:13
プルツーの場合マシュマーの得体のしれない所にビビッてた様な
その後マシュマーは自爆しているし、予感めいた物があったんじゃないかと
81:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 19:47:30
>>80
そりゃ、プルツーじゃなくてもあのテンションの高さにはビビるわなw
82:通常の名無しさんの3倍
10/11/16 22:31:35
黒い三連星もどきを強化マシュマーさん的な設定にして、ラクス様バンザーイと言わせると、
あーらふしぎ、違和感なし。つうか、ラクス様のためにとかいうのを主人公サイドの人間につけるって、どうよ。
83:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 00:36:58
>>82
「姫と騎士」ってコンセプトなら違和感はないな。
未来戦争という意味でならわけわからんが。
84:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 09:19:01
>>83
つスターウォーズ
85:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 10:43:13
>>83
つターンエー
86:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:22:57
みなさんこんばんは。
弟のゲルズゲーがトラウマになりつつあります、787です。
第17話が出来ましたので、誤字脱字を自分なりに見直してから投下します。
30分後を目途に投下したいと思います。
※注意
この作品はオリ要素が多いです。
気に入らない方はあぼ~んするなりスルーをお願いします。
87:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:48:16
ではいきます
ミネルバのブリッジは、誰もが状況把握に追われ、何が起こったのか理解できずにいた。
衝撃でブリッジモニターが一時死に、それらの回復を待たずに、
黒煙を上げながら船体がバランスを崩し海面へと着水する。
「タンホイザー被弾、FCSダウン!」
「被害状況知らせい! 艦内各員は艦首の消火作業へ!
浸水箇所はあり次第閉鎖、FCSは再起動急いで!」
タリアがブリッジ各員に下知し、メイリンが艦内にそれを通達。
パニック状態になったクルーがブリッジにいないことが唯一の幸いだった。
タリアは、回復したメインモニターに映る、天界から舞い降りた天使気取りのMSを睨みつける。
「『ヤキンのフリーダム』……、二年前の亡霊が一体何の用なの?」
そして、奇妙なことに、フリーダムは連合、ZAFT、オーブを見回し、
周囲が攻撃の意思を表さない限り、攻撃をしないらしい。
その中で、オーブ軍側のムラサメとアストレイ達は、
思わぬ乱入で混乱し、フリーダムに銃を向けようとしていたが、
先頭のマゼンダのムラサメが、彼らを制した。
「待て、『彼』の意図がまだわからん以上攻撃はするな」
彼、確かに自分はそう言った。ユウナ・ロマ・セイランは、不思議に思った。
何故、あのフリーダムのパイロットが男だと思ったのだろうか。
ユウナは、彼らに迂闊に動かぬよう命令すると、
自らフリーダムから距離五〇〇まで近づいていき、
「フリーダムのパイロット、聞こえるか。
私は、オーブ遠征軍司令官、ユウナ・ロマ・セイランである。
貴殿の所属と階級を直ちに明らかにされたい。
これが認められない場合は、敵性非合法戦闘員とみなし排除する!」
サーベルをフリーダムに向けて通信を開き、彼は通告した。
『…………』
しかし、返事がない。ユウナの予想が正しいとするならば、
搭乗しているのは、アスハ家別邸の住人であり、カガリの知人の可能性が高い。
もしかしたらと、そう期待している甘い自分を、ユウナは恥じることになる。
「……くっ」
フリーダムが、ライフルを此方に向け、有無を言わさずビームを発射したのである。
まるで、親の言うことしか聞かず、攻撃意識を向けた瞬間反撃する小さな子供のように。
『ユウナ様!』
ユウナは咄嗟に身をひねりやりすごしたが、アマギ三佐の声が通信機越しに聞こえ、
オーブ艦隊からフリーダムにミサイルが次々と発射されていく。
迂闊に前に出たからだと、そうユウナは後悔していた。トップが撃たれれば、部下がどう出るかぐらい予想は付くのに。
(僕もまだ甘ちゃん、か……)
フリーダムがオーブのミサイルを迎撃して、せき止められた時の流れがまた元の勢いを取り戻す。
地球軍艦隊の前衛で事態を見据えていた『J.P.ジョーンズ』から、ウィンダム部隊が新たに出撃する。
「スティング・オークレー、カオス、行くぞ!」
「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!」
「セリナ・バークレイ、ウィンダム、出ます。
……ステラ、今回はガイアはお預けよ。あたしのフォビドゥンで我慢してね」
「……うん」
ネオは虎の子達を投入する事を遅らせて、正解だと思った。
88:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:49:36
今現在、オーブ軍とZAFTは奇妙な乱入によって混乱状態であり、
ミネルバを叩きつぶすには今がベストなタイミングだ。
「よぉし、奇妙な乱入で混乱したが、幸い状況は此方に有利だ。
手負いのミネルバ、今日こそ沈めるぞ!」
ネオは気合いを込めて号令し、艦隊を前進させるよう通達した。
「気になるのはオーブの動きだが……。
ま、あの大将のことだ。ああなっちまえばやることは一つだよなぁ」
攻撃を開始してしまったオーブ軍へ、有無を言わさず攻撃しだしたフリーダムを見、
アイツがこちらに矛先を向けないことだけを祈っていた。
「大佐。私はあの『ガンダム』が此方へ向かい次第出撃ですか?」
「そうだ。お前だけでも残っていてもらわんとな」
※※※※※※※
「やはり来たか。だが奴は出ていないようだな」
シャア・アズナブルは、モニタの向こうに浮かび上がる地球軍を見やり、
紺と白のウィンダムが出撃していないことに気づく。
切り札は最後までとっておくものだが、この段階で出さない事は意外であった。
次に、オーブ側のムラサメ、アストレイらを、
無差別に撃墜していくフリーダムに目をやる。
「だが、あの『ガンダム』も何とかせねば危うい。…どうする? シャア」
またも襲いかかってきたウィンダムとダガーの群を前にして、
シャアは自らに言い聞かせるようにして、
「シン、アスラン、ノエミ。
我々も一端下がるぞ、ミネルバの防衛に……?
アスラン、どうした!?」
シャアはセイバーの挙動がおかしい事に気が付いた。動揺したことが外から見てもわかる。
しきりとフリーダムの動きを気にしており、心ここにあらずといった具合である。
「ハイネ! 聞こえたらでいい。シンとノエミをミネルバに戻す。
合流して地球軍の迎撃に当たってくれ。私は、アスランを連れ戻す」
『アスランがどうしたって? おい!』
ハイネはシャアの通信を聞いて何が起きているのか一瞬理解できずにいたが、
まっすぐオーブ軍間を飛び回るフリーダムへ向かうセイバーを視認すると、
納得したように、シンとノエミを囲むウィンダム達へ攻撃していった。
グフの象徴的な兵装の一つであるビームソードを、
ノエミのカオスに斬りかかろうとしたウィンダムの後ろ姿に突き通し、
「そぅら!」
グフの機動性で振り回し、迫るウィンダムの部隊の中へ投げ込むように放ると、
腕部ビームガンをたたき込み爆散させる。
「ミネルバの火線上まで引き込むぞ、それまで保てよお前等!」
89:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:51:25
「あいつ、何で! ……キラッ!」
「アスラン、戻れ! 我々の任務はミネルバを守ることだぞ!」
シャアはセイバーの後ろ姿に何度も呼びかけるが通じない。
急性ストレス障害に近い、軽いパニック状態になっているとは容易に想像が付く。
~だが、何故アスランともあろう者がこうも簡単に?
シャアはグゥルの速度を最高まで上げ、セイバーに追いすがると、
ザクを宙へ浮かせセイバーの横腹に軽く掌底を入れた。
衝撃が走り、アスランは体を左右に揺さぶられ、我に返る。
「目が覚めたか? アスラン」
「た、隊長……。でも、アイツ……アイツは!」
「話は後でゆっくり聞いてやる。今は奴を気にかけるのをやめろ!
急いで援護しなければミネルバが沈むんだぞ」
「くっそぉ、やらせるかぁ!」
シンはウィンダム小隊が放つビームをかいくぐりながら叫んだ。
頭部バルカンを権勢がてら放ち、一機が飛行ユニットにヒットし墜落していく。
この高度ならまず助かるまい。シンは目もくれず突っ込み、
ダガーにライフルの銃口を突きつけ、盾にしつつ別のダガーへと押しつけると、二機ごと撃ち抜いた。
すると、その爆煙の向こうから、Gタイプがヌッと顔を出す。
カオスであった。シンは一瞬ノエミかと思ったが、カラーが違う。
(深緑? ということは!)
デブリで受けたあの時の屈辱を思い出し、シンはライフルをカオスに向ける。
だが、前もって抜いておいたのだろう、サーベルを振るったカオスがそれを切り落としていた。
「落ちな、白いの!」
二の太刀を浴びせてくるカオスの刀刃をかわし続けるという、
危機的状況となったシンは戸惑わなかった。
カオスが縦に斬りつけてくる機を狙い、若干下を向く体勢になったカオスを見て、
今なら足のサーベルが来るまで時間がかかると踏んだ。
奴が右手に握っていたライフルを両手で掴み、
「これならどうだぁっ!」
「……何っ!?」
カオスの手からライフルをもぎ取ったシンは、銃身を握ったまま、
棍棒のようにしてカオスの横っ面をぶん殴ったのである。
VPS装甲とはいえ、内部への衝撃までも和らげるわけではない。
特に、MSの頭部は繊細かつ重要なセンサー類の塊と言って良く、
そこを硬い物体で殴られればどうなるか、想像は難くない。
「くそっ……メインモニターが死ぬ!? 何!」
カオスのパイロット、スティング・オークレーは焦った。
まさか、このようにして反撃してくるなど予想だにしていなかったのだ。
そして……
「カオスのライフルって言ったって、元はZAFTのなんだ……よし!」
シンは、ライフルをインパルスのマニピュレータに接続させると、
シンクに成功した事に喜びを感じた。
元々、セカンドステージMSとして同時期に開発されたものであり、共用できないわけがない。
「以前の俺だと思うな……落ちるのはお前だ!」
「くっ……」
90:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:52:19
機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
~Revival of Red Comet~
第17話
「誰もいねぇ海からってか、させるかよ」
ハイネは、水面に映った二つの影を見て、MSクラスの物体だと悟ると、
その場にいたダガー二機の内一機を切り倒し、もう一機にウィップを絡ませ、急降下した。
接続回線が開いたのか、通信機越しに敵パイロットの悲鳴が聞こえるが、彼は気にしなかった。
……気にすれば躊躇ってしまうから。
「元気なお魚さんに、撒き餌の大盤振る舞いだ、受け取れ!」
直進して来る二機の眼前に落ちるようにハイネは腕をしならせダガーを放り投げると、
目の前を飛んでいくダガーの本体にビームガンを何発か撃ち込んだ。
ダガーは火花を散らし水柱をあげて海中に落ちていくと、
しばらくして爆発が起こり、より大きな水柱ができあがる。
海水が吹き飛ばされ、二機のMSが姿を見せた瞬間をハイネは見逃さなかった。
「そこぉっ!」
両腕のウィップをそのMS達の腕部に巻き付けると、
「大漁大漁っと」
グフのスラスター推力が高い事をハイネは感謝した。
切られないよう左右に小刻みに振り回しながら、
彼はMS、アビスとフォビドゥンヴォーテクスを、近くの小島の上までグイグイ引っ張っていく。
いかに相手が水中用とはいえ、特性を生かせない体勢であれば一機で二機は引っ張れる。
そして、アビスとフォビドゥン両機を陸地へ放り出し、
「ミネルバを沈ませる訳にはいかねぇんだ。恨むんじゃぇぞ」
ビームソードを抜いて、彼は言い放った。
「キラ…どうして、くそ!」
一方アスランは、フリーダムの乱入に今だ疑念を振り解けずにいた。
だが周りに群がり始めたウィンダムの相手をしなければならず、
もどかしい気持ちを抑えながらビームを相手にたたき込む。
背部ビーム砲で無理矢理散開させ、分散した敵小・中隊をシャア、レイ、ノエミ等が落としていく。
ルナマリアはと言うと、ブラウンのウィンダムを視認するやそれへと襲いかかり、
それを援護しようとするダガーやウィンダム達を片っ端から叩ききると言う離れ業をやってのけていた。
次第に、オーブ軍からの攻撃も激しくなっていた。
フリーダムの猛追を振り切ったムラサメが、低空飛行でミネルバに接近するのだが、
ミネルバ側面のCIWSの壁に阻まれ、そこをレイが撃ち落とすか、そのままCIWSによって蜂巣になるかだった。
フリーダムはフリーダムで、その名の通り自由気ままに、戦場を縦横無尽に飛び回り、
辺り一面に『死』をばらまいていた。
連合側のMS群に飛び込めば、一斉射撃で複数のウィンダムを撃墜。
オーブ軍へ突貫して、アストレイ数機を一の太刀二の太刀で輪切りにした。
アスランは、その姿が受け入れられずにいた。
キラは、彼の知るキラ・ヤマトは、あんなやり方をする人間ではない。
まして、喜々として人を殺すような悪鬼でもない。
そしてアイツは……
91:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:53:39
「……!? 不味い! ハイネ!」
小島の上で時代劇さながらの大立ち回りを見せているオレンジのグフを、
まるで得物を見つけた梟のように見やったのだ。
「あ……、何だ?」
ハイネは、アスランのブルーのG二機の間から距離を取り、上空のフリーダムをみやった。
二機も同様で、上空に浮かぶMSが此方を標的にしたことに気が付いたらしい。
アビスの胸部大口径ビーム砲が火を噴き、フリーダムめがけて赤い光の奔流が向かうが、
あっさりとかわすと奴は十枚の羽を広げ、三機めがけて突進してきた。
牽制のつもりか、肩部のプラズマキャノンを数発放ち、
フォビドゥンがアビスをかばうようにして、シールドを前に構えやり過ごす。
しかし、奴はそれが狙いだったらしい。
急制動をかけて視界の遮られたフォビドゥンの懐を蹴りでこじ開けると、
サーベルを腰から逆手で抜き、瞬時に両腕を切り落とした。
バランスを崩したフォビドゥンは、仰向けに倒れ、
追撃しようとしたフリーダムを止めたのは、アビスだった。
奴の眼前にランスを突きだし、フリーダムは後ろへと飛び退く。
その隙を縫って、アビスは両腕を失ったフォビドゥンを抱えて海へと飛び込んでいった。
「ちっ、残ったのは俺だけかよ……」
ハイネはフリーダムが逃げた二機に目もくれず、
真っ直ぐ自分を見つめていることにおぞましさすら感じた。
善悪の是非も解せぬ子供が、そのまま大きくなればこうなるのだろうか?
ハイネはふとそんなことを感じながら、
此方に距離を詰めてくるフリーダムを右前方に飛びやり過ごす。
しかし、体に掛かるGが気にもならないのか、
地面を蹴りつけ急激にフリーダムが後方へ加速をかけ、ハイネのグフ左に追いすがる。
「バケモンか、てめぇは!」
ハイネは左腕のビームガンで応酬しようと試みたが、
奴はグフが向けようとした左腕を掴むと、グフの体を引き寄せて、
「ぐぁああ!」
背負い投げを敢行し、グフを地べたへ背中から叩きつけ、
ハイネは全身を襲う衝撃と痛みに苦悶の声を上げたが、意識を失わなかった彼は、
とっさにウィップを伸ばしフリーダムの足を絡め取ると、
お返しとばかりに足をすくって引き倒した。
「『特務隊』を嘗めるんじゃねえ! 俺はハイネ・ヴェステンフルスだ!」
ハイネはたまったものをはき出し緊張を解くように、啖呵を切った。
同時に、フリーダムが伝説になった理由も理解した。
ここまで手こずる上に、また何事もなかったように立ち上がろうとする奴を見て、
強さが尋常ではなく、二年前の自分ならどうなっていたか想像すると、ゾッとした。
それに……
「しっかし、ヤバイなぁ…こりゃあ」
先程地べたに叩きつけられたとき、腕部ビームガンが不調をおこしたのだ。
よりにもよってこんな時に……、そうハイネが冷や汗をかいたとき、
上空から赤い影がフリーダムに襲いかかった。
92:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:55:08
「大丈夫か、ハイネ!」
「シャアか!」
ミネルバ周辺のウィンダムが撤退すると同時に、
シャア・アズナブルはこの小島の戦闘を察知し駆けつけたのである。
ハイネが背負い投げをかまされる瞬間、彼も内心ヒヤリとしたが、
「無事なら何よりだ」
「遅ぇよ……」
シャアは改めて、伝説となった『ガンダム』と対峙して確信した。
出撃前感じていた子供の癇癪に近い感覚、それを発していたのはコイツだ。
一緒に家族で出かけるのをワクワクしながら待つ……
クリスマスや誕生日の前日、プレゼントは何なのか期待する……
新型ゲーム機を買って、テレビに繋ぎ電源を入れるあの瞬間……
そんな子供達が放つ、どんな‘楽しみ’なのか喜々として待っている子供の感情だった。
「戦場でふざける気か……」
シャアの胸中を、沸々と怒りの感情が滾る。
戦場での命のやりとりを、まるで子供の遊び、
ゲームのように楽しんでいる目の前のパイロットは、
「……気に入らんな」
シャアはザクを急加速させ、フリーダムに真っ正面から突っ込んでいく。
馬鹿っと叫ぶ声が後ろから聞こえたが、自分はあくまでも正気だ。
フリーダムは余裕を見せ、サーベルを右手で抜いてシャアを待ちかまえ、
ザクが眼前に迫ったときに勢いよく振るった。
その瞬間、フリーサムのパイロットは『勝った!』とばかりの喜びの感情を露わにするが、
「甘いなっ!」
シャアは屈んでそれをやり過ごすと、左手で奴の右手を掴み持ち上げ、
がら空きになった胴体にシャアは思い切り蹴りをぶちかました。
掴んでいた衝撃でフリーダムの右手は砕け、サーベルは刃を失い地面に転がる。
奴は、一瞬自分が攻撃を受けたことを信じられないようだった。
シャアは落ちていたサーベルを踏みつぶし、
一歩前へ出で、威嚇するように奴へと近づいていく。
奴に乗っているパイロットが、癇癪を起こしている事に気づくが、同時に恐れを感じたことも、シャアは察した。
フリーダムは、一歩、一歩、後ろへと後ずさり、三歩に達したとき、地面を蹴って大空へと飛び上がっていく。
ザクは、グゥルがなければ空へ上がることは出来ないし、
後ろにいたハイネのグフは飛べるが、損傷を負った今では追いつけるか不明瞭だった。
「ハイネ、撤退するぞ」
「まだ俺はやれるぞ!」
「無理だ。外から見ればわかる」
※※※※※※※
93:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:55:59
「生存しているMS部隊へ告ぐ。……総員艦隊へ帰投せよ。
我々は一度撤退し体勢を立て直す」
ユウナ・ロマ・セイランは、
憤然とした心中を押さえつけ、オーブ軍全員に号令した。
ユウナ・ロマ・セイランは、この瞬間、多くの兵を無駄死にさせた司令官になってしまった。
~これほどまでに屈辱的な結果に終わると、誰が予想しただろう?
まさかあのタイミングで、ミネルバの艦首砲が破壊されるとは思いもしていなかった。
それは、オーブ艦隊の壊滅を免れた幸運と見て良い。しかし、問題はその後だった。
ミネルバを沈める覚悟、そしてカガリの苦渋の決断を背負う覚悟を持ってここに来た、
全てのオーブ軍人の心をあの死の天使は踏みにじって行ったのである。
まるで、軍人としてここに来た者達をあざ笑うかのように、遊んでいった死の天使。
タケミカズチに帰投したユウナが見たのは、屈辱に身を震わせる将兵達の姿だった。
「ユウナ様!」
アマギ三佐が、自分の元へと駆け寄ってくる。
ユウナは、申し訳ない気持ちになった。とても顔向けできない。
「……すまない、私があのような判断をしていなければ」
「何を言われます! 貴方様が命令せずとも、恐らくこうなっていたでしょう」
周りの兵士達が、アマギに同調して、ユウナを元気付けようと声をかける。
ユウナにとって、その一言一言が重く、足取りも次第に重くなった。
ロッカールームでノーマルスーツを脱ぎ、シャワーを浴びながら、
彼は何度も、タイルの壁を殴りつけ、拳から血がにじみ出す。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
そう己を責めながら、ユウナは天井むけて雄叫びを上げた。
凄惨な結果だった。
ネオ・ロアノークは、帰投したスティング達の機体、
帰還したウィンダム・ダガー部隊の少なさを見て臍をかむ。
カオスは頭部破損、フォビドゥンは両腕損失、セリナのウィンダムは装甲が何ヶ所か融解。
アビスは機体そのものに問題は無かったが、アウルはあの死の天使に恐怖を抱いたらしい。
帰投するや、荒れて自分の部屋にこもってしまったのである。
スティングも相当ショックだったそうで、一度勝った相手だと油断したのが敗因であったが、
やはり機体の頭が無くなったことが堪えたようだ。
ステラはフリーダムへの恐怖心が強すぎたのか、コクピットから引きずり出すまでに苦労した。
周りが全て敵に見えるほど心に刻み込まれたに違いない。
「やはり私も出撃するべきでした…」
「いや、気にするな。終わったことを逐一気にするほど、俺たちには時間もないしな」
医務室のベッドに横たえられ、うなされているステラのおでこを撫でながら、
ネオは後ろで後悔の念に駆られるファブリスに言う。
「……にしても、カオスはどうするかなぁ~。
ガイアとアビスは予備パーツ掻っ払ってきたから良いけど、あれだけ持って来損ねたからな」
ネオは頭を抱えた。
アーモリーワンで、カオスの予備パーツだけ強奪に失敗し、
今現在、カオスの扱いでメカニックは頭を悩ませている状態だというのを思い出した。
「ヘタに弄くれば妙なものが出来上がりかねんしな…」
この結果を『あの上司』にどう報告しよう。
そう考えるに連れて、ネオのお腹はキリキリと悲鳴を上げていた。
94:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:57:18
※※※※※※※
「タンホイザー発射寸前でしたからね。
艦首の被害は相当なもんですよ、時間がかかりますね、これは……」
「そう……」
マッド・エイブスの言葉に、タリアは力無く頷いた。
地球軍・オーブ軍双方は、フリーダムの突然の乱入で被った被害と、
ZAFT側の援軍であるアフリカ共同体艦隊が接近との情報を受け、
彼らが接近してくる前に避ける為、撤退していった。
しかし、エーゲ海は海峡を挟んですぐである。その警戒のためにミネルバは、
一時的にイスタンブルの港へ現地政府の許可の元寄港している。
タリアは、タンホイザーが存在していた箇所のゆがみ具合を改めて認識し背筋を悪寒が走った。
ただ……
「ミネルバの船体はいいのよ。船体は……」
彼女の目線は、タラップの向こうがわに並べられている黒いものへと注がれる。
遺体袋である。中身は、言うまでもあるまい。
「とにかく、可能なだけ早急にお願いね。ごめんなさいねいつも」
「いえ。それが仕事です」
マッドはそう言って、破損部位の取り外し作業に加わるため、タラップから艦内へ戻っていった。
タリアは、タンホイザーと遺体袋、双方を交互に見てため息をついた。
敵との戦闘でもなく、突如現れたMSによる攻撃。
きっと、死した者達は自分たちに起こったことを理解できぬまま、身を焼かれたに違いない。
それを思うと、彼女は憤りを感じずにはいられなかった。
「聞かせてもらおうか、アスラン」
「……はい」
ミネルバ艦内、ブリーフィングルーム。
シャアとアスランは、誰もいないこの部屋の中で、二人向き合っていた。
先ほどの戦闘での挙動不審。シャアは勿論、シンやレイからも、彼に何があったのか、という疑念の声が出ている。
「本来なら命令違反で責められても文句は言えんが……」
シャアは、黙って俯いたアスランの経歴を、順を追って思い出していた。
そういえば、前大戦でアスランは……
「あの『ガンダム』……フリーダムとは、前大戦で共に戦った仲だと聞いた。理由はそれか?」
彼は頷いて、シャアの質問に答える。
「あのフリーダムに乗っているのは……俺の、親友です。
あんな……あんな! 喜々として人殺しをする奴じゃないんです!」
涙目になって訴える。未だに信じられないのか声も大きくなって、
シャアは、まるで自分の息子が殺人で捕まった母親の台詞に聞こえた。
「しかし、現実は違った。あの機体はミネルバの艦首を貫き、十八人が死傷したんだ。
……君は、彼らの家族の前で、同じ台詞を言えるのか?」
シャアはアスランの顔をのぞき込むようにして言う。
それは、とアスランは言葉に詰まり、視線を彼の目から逸らす。
気持ちはわからないではない。知人がああやって理解不能な行動に出れば、誰しも戸惑うだろう。
事実、シャアもアムロとああいう形で再会したときはパニックになりそうだった。
しかし、自分たちはその戸惑い一つが生死を分ける役目を負っているのである。
アスランは、悩むようにして床を見つめていたが……しばらくすると、何かを思いついたかのように、
「隊長、相談があるのですが……」
95:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 18:58:08
アスランは、自動車運転席で地図をひろげ、コーヒーを一口すする。
ダーダネルス海峡付近の、旧トルコ行政区。その海に沿って、アスランは車で移動していた。
“フリーダムのパイロットとの交友関係を利用して近づき、その真意を問う”
アスランとしては、親友を疑い、友情を利用するのは心苦しい行為だったが、
ああいう事態になってしまえば仕方のないことだった。
アスラン自身、接触してこの頭の疑念を払拭したい気持ちが強く、シャアが折れたのである。
「そこまでして彼らと言葉を交わしたいのなら別にかまいはしないが……念のためだ」
シャアからは、一本のボールペンを渡された。
それを胸ポケットに入れたままにしておくこと。それが、離艦の条件でもあった。
アスランはすでに、海沿いに南西へ、三つほど町を訪ねては見たのだが、
何の収穫もなくイスタンブル県からテキルダー県へ入った。
フリーダムが出てきたと言うことは、あの付近にアークエンジェルがいたと言うことだ。
ならば、あの白い戦艦の巨躯を誰かが見ている可能性がある。
そのわずかな望みにアスランは賭けたのである。…だがこの有様だ。
もう一度、アスランはため息をついて群衆へと目をやる。
すると……
(ん? 彼女、どこかで……)
白いレザージャケットの少女が目に留まり、彼女が何者か確信すると彼は車から降りて、
「ミリアリア!?」
「……アスラン・ザラ!?」
そんな二人の邂逅を、少し離れた所の赤いハマーH3Tを運転する少女が見つめていた。
「全く、何で私がこんな事しなくちゃ行けないのよ……」
ノエミ・ジュベールは、愚痴をこぼしてあの三十路過ぎの隊長への文句を言いながら、
アスランの後をつけていた。
艶やかな黒髪を結い上げてベレー帽を被り、トレンチコートを纏って目立たぬようにしながら。
当の隊長本人は、別件が入ったらしくシン・レイ二人を連れてどこかへ行ってしまっていた。
……正直気が重い。
ナビで転倒している光点は、アスランが立っている位置をしっかりと表示している。
きっと、アスラン本人も気づいているはずなのだが、
形としては監視していなければならないのだと、隊長は言っていた。
『監視などしなくても戻ってくるだろう…』
そう信頼した上での物言いなのだろうが、頼まれる側としてはたまったものではない。
誰が、好きこのんで仲間の監視をしなければいけないんだ?
「それにしても……可愛い子ね」
戦場カメラマンらしきその少女は、アスランのことをよく知っているらしい。
しかし、近くのカフェで話し込んでいる二人の表情を見るに、
仲が良いとはお世辞にも言い難い。アスランの方がなんだかぎこちない動きだ。
テーブルの上の写真を、彼女は数枚手にとって、アスランと何か話している。
写真の内容は見えないが、彼と何か関係があるのだろうか?
ふと、アスランと少女が立ち上がり、
彼女はそのまま町の奥へ入っていく二人を見失わないようにして、
ハマーのエンジンを吹かした。
96:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 19:02:04
「貴方に会えたのはラッキーだったわ、アスラン」
「キラがこの町に来ているって、本当なのか?」
「付いてくればわかるわ」
ミリアリアは、町の中で、あまり人通りの多くない日陰の多い区域へと入っていく。
手には、差し入れらしき食料がある。
アスランは、時折洗濯物や地べたのどぶなどを避けながら、
彼女の後を付いていき、時折後ろを振り返っては、
(隠れるのがヘタすぎだ。……ノエミ)
赤いハマーが途中路駐にとまり、トレンチコートを着た少女が下りたのを視認したアスランは、
サングラスの下の顔立ちがミネルバの同僚だと確認すると、内心ため息をつく。
アスランが振り返ると慌ててものの影に隠れる。
それも、体の大部分が隠れたところから出ているのでバレバレだ。
どうぞ疑ってください見つけてくださいと体で言っているようなものだ。
彼女はアカデミーでの‘そのテの課目’評価は低いに違いない。
しばらくすると、古びた共同住宅‘跡’が目に入る。
「ここか…!?」
「信じられない?」
「いや、そういうわけじゃ……」
ミリアリアは正面ゲートに張られたフェンス……からではなく、
裏手の壊れた塀の間から中へと入っていく。その共同住宅の最奥、
ちょうど町から死角になる部屋の前にミリアリアは立ち、戸をノックした。
すると、扉の向こうから、
「……『のり』」
「……『たま』」
日本語だ。
アスランは、その言葉のチョイスはどうかと思ったが、
開いた扉に入っていくミリアリアに続いて、部屋の中へと入っていく。
こっそり、胸ポケットのペンのノックを押していたが……
「……キラ」
「…ア…スラン?」
部屋の中は、隠れ家と言う割には綺麗にまとめられていた。
共同住宅跡から伸びていたケーブルは、情報を入手できるよう『彼』が勝手に繋いだネット回線だろう。
部屋の中には、アスランとミリアリアを除いて、二人の人物がいた。
キラ・ヤマト。そして、マリュー・ラミアスである。
「ZAFTに戻ったんだってね」
「ああ……」
キラは、アスランの態度が妙によそよそしいことに気が付く。
何故だかわからなかった。同時に、彼が怒っていると言うことも容易に察知できる。
マリューはというと、アスランがここへ来たことに素直に喜びを露わにして、
ミリアリアが買ってきたコーヒーを入れるためキッチンへと入っていった。
アスランは、ここが好機だと思った。
「確かに俺はZAFTに戻った。今はミネルバに乗っている」
97:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 19:08:09
『ミネルバ』……確か、ブレイク・ザ・ワールドで活躍して、
今も地球各地で奮闘中の、ZAFTの新型戦艦だ。
「そうなんだ……すごいね」
素直な気持ちを口にしただけだったのだが、アスランの顔がさらに険しくなる。
キラには訳がわからなかった。
何故、言葉を口にすればするほど彼は敵意を増すんだろう?
「キラ……なぜあんなことをした。あんな……馬鹿な事を」
アスランは何を言っているんだ!?
「おかげで戦場は混乱して、オーブ軍も多大な被害が出たんだ。ミネルバもだ!」
「え、ちょっと待ってよアスラン。『馬鹿なこと』って何さ?」
「しらばっくれるな!」
アスランはキラの前に数枚の写真を怒りにまかせて投げつけた。
キラはその写真を手にとって、絶句した。
「何……コレ?」
確かに、フリーダムだ。
だが、それは自分の知る『ソレ』とは違う、あまりに凶悪な『悪魔』の姿だった。
ムラサメを両断し、アストレイのボディを引きちぎり、
ダガーを消滅させ、ウィンダムを海の藻屑へ変えていく、フリーダム。彼の愛機。
「これでもまだ違うというのか!」
アスランはキラの胸倉を掴み迫る。
そこにかつての親友の顔はなく、峻厳なZAFT軍人の顔があった。
「ま、待って! 僕の話を聞いて!」
「……!? アスラン君止めて!」
キッチンから様子が変なことを察したマリューが割り込み、二人を引き離した。
彼女も、足下に散らばる写真を見て絶句したが、すぐに彼へ向き直り、
「これは誤解よ、アスラン君!」
「……誤解?」
「そうだよ! だって僕ら、一昨日までずっと、
スカンジナビアからユーラシア東まで逃げ回っていたんだ!」
「…………え!?」
第17話~完~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これで終了です。プロットがだんだん複雑になってきてます、ちくしょう
戦闘シーンは自分なりに頑張ってみたつもり、後悔はしていない。
そして、前話の訂正です。ユウナとネオの会話中、ユウナの台詞に、
「先日の紅海戦で」とありますが、これは初期稿の名残ですので、
「恐らく、」に差し替えおねがいします。ではまた(・ω・)ノシ
98:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 19:08:35
>>92
>その瞬間、フリーサムのパイロットは
あの『サム』が種世界の技術で改良された究極のサムですね、わかりますw
99:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 19:09:24
投下乙です
やっぱり偽者だったか
この話のキラは不幸だな…
100:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/17 19:11:15
>>92の
「その瞬間、フリーサムの」→「フリーダム」です。
もうしわけな(ry・・!? だ、誰だ貴様(ry うわらば!
101:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 19:39:10
投稿乙でした。
>>89の 「マニピュレータに接続させると、 シンクに成功した事に」
シンクはリンクの誤りですか?
102:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 19:54:30
>>101よ、ちょっとはググってからにしようぜ
シンクは同期の事。シンクロナイゼーション(synchronization)の略語だよ
103:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 20:07:23
w
104:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 20:14:07
投下お疲れ様でした。
冤罪なのにアスランに責められるキラ……キラに同情するssは珍しいなぁw
ハイネとアウルの死亡フラグが回避され、火中の栗を拾いに行ったユウナも死亡回避。
両軍の被害は甚大ですが、名有りキャラは死んでないのが意外。
>「一昨日まで、スカンジナビアからユーラシア東まで逃げ回っていたんだ!」
キラツーにずっと追いかけ回されてたんだ……おっかねぇ(汗
キラ達はラクスの消息不明と彼女の不審な行動も話すだろうから、アスランの心労は増えそうですなぁ。
105:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 21:07:28
この本物キラとアスランは意外とあっさり誤解が解けそうかな?
ラクスが小細工を弄して直接会えない状況を引き延ばし
身の置き処を無くさせようとでも謀るかと危惧してたんだが。
この分だと家族の件でシンに対してきちんと落し前さえつければ
その後は和解共闘も不可能じゃないと思いたいけどはてどうなりますか?
106:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 21:09:51
アスランが聞いた事をミネルバの誰が信じるんだ?
107:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 21:13:24
この時点でフリーダムは全勢力の敵になっているから、共闘する事自体が政治的に不味い
濡れ衣を着せられたまま怨恨の対象として墜とされるしかない
これがラクソの狙いだろう
108:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 21:22:01
自由とAA破棄すりゃいいんじゃね?
109:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 21:48:05
>>106
>>95
シャアからは、一本のボールペンを渡された。
それを胸ポケットに入れたままにしておくこと。それが、離艦の条件でもあった。
>>96
こっそり、胸ポケットのペンのノックを押していたが……
描写から見て、このペン盗聴器か?
110:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 22:27:34
盗聴機か録音機だろね
ここまでキラが可哀想におもえるのははじめてだ
111:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 22:31:41
仮にそうだとすれば、アスラン自らスイッチ入れてるしな
112:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 22:56:28
実 は 自 爆 装 置
113:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 23:21:36
>>112
ヤメレwww
114:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 23:24:04
毛根の自爆スイッチとは流石のアスランも知るまい
115:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 23:29:40
凸<フリーサムだサム!!ザフトも真っ青の超量産型MSだサム。サム仲間が一斉に砲撃するフルサム・バースト、固まって一斉にスラスター吹かすハイサムマット・モードで
無敵サムよ~。
116:通常の名無しさんの3倍
10/11/17 23:32:30
きっとゲイボムのスイッチに違いない(´・ω・`)
117:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:04:01
787氏乙でした。…キラが気の毒すぎる
(多分)キラツーのせいで表に出づらくなった上、アスランには疑われる始末
ふと気になったんだが、万が一フリーダム同士鉢合わせたらどうなるんだ?
「俺がフリーダムだ!」的な?
118:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:17:13
こりゃAAもフリーダムもキラツーに奪われたなw
119:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:26:12
>>118
てっきりラクスが新しく一機製造したと思ったけどそういう見方もありか
120:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:30:13
>>119
ストフリかも知れんけどね。この時期ならほぼ出来上がってた頃だろうし
121:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:31:03
乙でした。
キラの冤罪が晴れれば、少なくとも問題はなかろう。
シャアだってキラツーとオリジナルキラの気配の差は感じるだろうて...
後はフリーダム2号機と1号機の認識し易くすれば....
ツノかヒゲか、もしくはザクヘッドでも付けますか...
122:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:34:32
>>121
一本角付けて、偽フリーダムが来たら2本角に変身w
123:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:37:28
もしフリーダム奪われてたらルージュIWGP装備で
124:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:43:50
フリーダム2号機は全体的に筋が多かったり目が釣り上がっていたりエラが張ってたりするとか
125:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 00:53:41
何処の偽ウルトラマンだよw
126:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 01:54:10
>>787氏乙
ホントこの作品のキラは何もしてないのに不幸なキラだw
アスランもこのまま綺麗なままだと良いんだが、ラクスがどう動くのやら…
127:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 02:00:33
1号機が歳くって引退したら2号機が本物に昇格します
128:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 02:49:16
今後フリーダム2号機というかラクシズのフリーダムはスローネ化するんじゃないか?
129:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 03:24:56
ラクシズの調達あるいは超生産力ならフリーダムもう一体ぐらい軽いだろうし
連合のスポンサー兼事実上のオーナーたるジブとつるんでる今、そのツテで
更にAA級別途一隻ぐらいせびり取ってきててもちっとも不思議じゃないわいな。
130:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 05:31:32
キラ2号がキラツーだとアスラン2号が登場した場合の愛称は… アツーラン?
131:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 06:13:59
ASU2じゃないか?
なんだ、書いてて何故か尻の危機感が・・・
132:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 08:14:11
>>131
違う意味でキラピンチな予感(笑)
133:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 10:24:30
遅まきながら、>>787氏乙
いつも楽しく読ませていただいております
誤字?報告
>>91の4行目
>ハイネは、アスランのブルーのG二機
アビスとフォビドゥンの二機、ですかね?
>>96の9行目
>赤いハマーが途中路駐にとまり、
路駐→路上?
134:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 10:27:47
787氏GJでした
89の権勢は牽制ですね
135:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 11:34:26
>>133、>>134
ちくしょう、またミスを・・orz ありがとうございます
>>91は、文章がまるまる抜けてました
「ハイネは、アスランのブルーのG二機」
↓
「ハイネは、アスランの叫びを聞き、 ←※編集人さんへ、ここは改行してください
とっさにブルーのG二機から距離を取り、上空のフリーダムを見やった。」
です。アビスもフォビドゥンヴォーテクスも青ので問題ないはず。
>>96はそのままで、「路駐にとまり」から「路駐し」でした。
路駐は路上駐車の略称なのでそのままで
>>89のシン目線の三行目
権勢→牽制でした
>>787ヘ( 凸)ノ ちくしょうー!
≡ ( ┐ノ
:。; /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ’ ’、 ′
、′・. ’ ; ’、 ’、′‘ .・”
’、′・ ’、.・”;
’、′ ’、(;;ノ;; (′‘・. ”
’、′・ ( (´;^`⌒) ” ; ’、′・
、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、" ヽ
(⌒ ;;;:;´'从 ;'( ´;:;;) ; :) )、 ヽ
( ´;`ヾ,;⌒)>>787´ 从⌒ ;) `⌒ )⌒:`.・
′‘: ;゜+°、::.:: 、⌒) ;;:::)::ノ
`:::、 ...;:;_) ´...::ノ ソ
______,''___,;;"_;;__,,___________
136:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:23:15
誤字の件の悔しさをバネにしたら17.5話ができてしまいました
45分辺りに投下開始したいと思います
137:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:43:39
ではいきます
~ダーダネルス海峡戦の数日前
地球連合軍第八一独立機動軍『ファントムペイン』が管轄する、ロドニア生物・遺伝子学研究所。
その中央管制室に、一人の女性が入っていく。
後ろには、研究所局長ロナルド・ハーヴェイが付き添い、
『研究対象』のプレゼンテーションを行っていたことが予想できる。
中央管制室には、防犯・監視装置他、
職員が退屈しないようにレクリエーションルームも併設されていた。
その中の最も大きなモニターを見つめて、女性は、
「これが『エクステンデッド』ですの?」
「はい。前大戦時の『ブーステッドマン』」のように凶暴性が発現するのを抑えるため、
薬物的な肉体改造は殆ど行っていません。そのため、デリケートな作戦も行えるようになっております。
その分、こうして幼少期から戦闘訓練を続けさせていますが……」
「そんな前置きはどうでもいいのです。コレは使えるんですか?
前大戦の《ジャンク》のように、クスリをちらつかせなければ反抗するようでは困ります」
「それは問題ありません。
『保護者』…貴方様なら『母親』になりましょうか。
誰かが精神的支柱になってやれば、その者のために積極的に働くでしょう」
ロアノーク隊という‘成功例’を挙げて、局長は嬉しげに語り、
女性はモニターの中で必死に戦闘訓練を続ける子供達に再び目をやった。
最低で九歳、最大で十五歳ほどだろう。
しかし、どの子供もその年齢からは想像できない身体能力を発揮しており、
(これは使えますわね……ウチの『シリーズ』程ではありませんが)
女性こと、ラクス・クラインがこのエクステンデッド養育施設へやって来たのは、
手駒の選定の為だったのだが、建前上の名目は〈処分〉である。
あの地域がどんどんZAFTによってプラント側へ転換していき、
ガルナハンが陥落したことにより東ユーラシアはZAFTの勢力圏となったのはつい先日。
施設の研究内容がZAFT側に渡る事を恐れたロード・ジブリールが処分を画策し、
息のかかった士官を派遣、…そこを狙ったのである。現地でその士官を拘束し、命令書を奪取。
名義を自分のものに書き換え施設に〈視察〉と通達して、堂々と正面から施設に入ったのである。
今頃、士官は自分の手のものが施設内に放り出していることだろう。
「母親……ですか? 私が?」
それにしても、新鮮な心地だ。自分が、まさか母と呼ばれようとは思ってなかった。
「ええ、先日連絡されましたとおり、
彼らにはすでに貴方を『母親』だと思うようすり込みをしておりますので」
ラクスは内心大笑いしそうになった。
流れは完全に自分の思い描いたレール通りになっている。
……自分はつくづく運の良い女だ
ラクスはそう思い、中央管制室に滞在する職員全てに、この部屋から出るよう言いつける。
局長始め、職員達は戸惑ったが、彼女の威圧感と命令には逆らえず、そそくさと部屋を後にした。
それを見やったラクスは、ケリーバッグから黒い携帯電話を取り出し、画面を確認する。
『緊急閉鎖プログラム変更完了。我ら脱出せり』
138:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:46:16
ソレを見てラクスは、中央管制室の、緊急用シャッター開閉スイッチを押した。
すると、中央管制室の扉と、施設の内外を繋ぐ入り口‘のみ’、防火シャッターが閉まる。
モニターに映っている職員達は、自分たちがこうして隔離されたことに現実に驚愕し、
後ろでシャッターを叩く音が聞こえるが、彼女は気にしなかった。
彼女は、館内放送用のマイクを手にとって、
「みんな、聞こえて? 『お母さん』ですよ……」
オーブでキラや子供達に接していたときのように、聖母のような声音で語りかける。
モニターの子供達は、局長の言ったとおり、すり込みで声にも反応するよう出来ていたらしい。
全員が、彼女の声がしたスピーカーを見上げている。
「いまからお母さんの言うことをよ~く聞くんですよ。
お母さんは、運動が出来る子が大好きなの。みんなは、外に出てみたくない?」
外。この単語は、彼らにとって有効なワードだと確信していた。
興味を引きつけられた子供達の顔を見てラクスはほくそ笑む。
「でもお母さんはみんな一緒には連れて行けないの、ごめんなさい。
……だから、みんなの中で特に強い子だけ、お外に連れて行ってあげる」
ラクスはそう言って、研究所の入り口と、この管制室のシャッター以外の、
あらゆる部屋のドアを解錠する。研究室やデータ室は勿論、緊急時の『武器庫』も。
「そうですね、十人にしましょう。連れて行くのは、残った十人だけですよ。
……それでは、みんな、お母さん待ってるからね」
そう言い残し、ラクスは放送を切った。
彼女は、モニターの音声はつけたまま、隣のレクルームへ入っていく。
ドアを開けたままにして、彼女はレクルームの中央に目を留めた。
職員の趣味だったのだろう。ピアノが一台置かれている。…彼女はその前に座った。
そして、流れるようにその指が動き出し、ベートーヴェンの『ピアノソナタ第14番』を演奏し始めた。
後ろのモニターからは、子供達に襲われ応戦する職員や、同じ子供同士での凄惨な光景が見てとれる。
だが、ソレを振り返ることすらなかった。
彼女は、聞こえてくる銃声、悲鳴、何かが壊れていく音と、自らが奏でるピアノの音との交響曲に聞き入っていた。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
~Revival of Red Comet~
第17.5話
「廃棄施設の探索任務……でありますか?」
「そうだ。軍本部から下りてきた情報なら、
現地住民が付近に連合の研究施設があると言っているらしい」
「そこへ我々が捜索に向かうわけですね?」
シン・アスカとレイ・ザ・バレルは、
シャアにブリーフィングルームに呼び出され任務の内容を告げられていた。
シャアはパネルに映し出された地図の中で、旧トルコと旧ブルガリア国境線、
エーゲ海とマルマラ海の中間当たりに点滅する光点を指さした。
「今現在は静かだそうだが、以前までは頻繁に車両やMSの出入りがあるほどの施設だったとの情報だ。」
「ですが隊長。そんな辺鄙な場所にわざわざMSで行く必要があるんですか? 今は連合の連中はいないんでしょ?」
「今は静かであっても、まだ使用されているかもしれん。
重要な施設だったとすれば、重要な情報がそこから得られるかもわからん」
シンはそんな所に行きたくないという気分全快であったが、シャアとレイ二人に睨まれたらうんと言わざるをえなかった。
139:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:47:13
三十分後、シャアとシン、そしてレイはその地点に向けて出発した。
マルマラ海南方を海沿いに飛んで行く中、シンは目下の海を見下ろして、
太陽の光が反射してきらめく海の美しさに、一瞬見とれていた。
自分が今、MSに乗っていると言う事実すら忘れさせる、雄大な自然の美。
「綺麗だよな……」
「ああ……」
やがて、旧世紀の面影を残す市街の上空を越え、ゆっくりと山岳地帯へ入っていく。
うっそうと茂る森と、彼方此方に見える岩肌は、人の存在を感じさせない不気味さを放っていた。
「見えたぞ」
シャアが眼前の施設を見て後ろの二人に、ザクのマニピュレータで降下する事をサインで伝え、
施設にほど近い森の中に機体を下ろしていく。
攻撃される気配すらなかった。むしろ……
「隊長……」
「何だ、シン」
「俺……ここ、入っちゃ行けない気がします」
「私も……そう思います」
シンとレイの背中を、何者かが引きずりもどすような悪寒が走り抜けた。
ここに入っては行けない。元に戻れなくなる。
そう感じさせるほどの『死』の匂いが、施設全体に漂っている。
それは、シャアとて勘づいていた。しかし、この研究施設から感じるものに、彼には心当たりがあった。
(……このザラザラとした感覚は強化人間のものか)
「だがこの施設の安全性を確かめねば、後顧の憂いになることもあり得る」
シャアはそう言って、アサルトライフルを小脇に抱えて、正面ゲートの脇に回り込む。
この中に感じる強化人間の感覚は、シャア自身気持ち悪さを感じたが、
それだけに、中は是非とも確認しておかねばならないとも思った。
シンとレイも、悪寒を抑えながら彼に追従する。
正面ゲートは、シャッターが閉じられた痕跡があり、破壊しようと試みた後があった。
「内部からだと?」
不思議だ。こういう施設なら、普通外部からの攻撃で突破されたりするのだが、
この痕跡は内部からつけられたものだ。
シンが反対側に廻り、ゲートの中に石を投げ込んでみた。
カッカッ…と、アスファルトの上を跳ねていき、金属製の箱に当たって大きな音がしたが、何の反応もない。
その段階になって、三人は施設の中に足を踏み入れた。
奥に見える、居並ぶ白い建造物を囲むように、訓練場と思しき広場があった。
「……これでは研究施設と言うより軍事施設だな」
レイがそう漏らす。シャアは正解だと言いたかったが、我慢した。
白い建造物や訓練場は、廃棄されたにしては妙に小綺麗だった。
あまり時間が経っていないのか、それとも……
ずっと使われていなかったのではなく、使われなくなったのがつい最近だっただけか?
白い建物の中で最も大きな施設へ、三人は近づいていく。
施設内部に繋がる階段を、ゆっくりと下りて、
下へ向かうたびに『プレッシャー』が大きくなっていく気がした。
「ハァ…ハァ…」
シン、そしてレイは、どんどん息苦しくなっていくのを実感していた。
ここには何かがいる。そして、其奴は自分たちを見つめていて、押しつぶそうとしている。
そう感じていた。
140:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:48:00
シャアは、このプレッシャーに覚えがあった。しかし、即座に否定する。
(奴らは死んだのだ! 何故ここでソレを感じるのだ!?)
階段を降り立ち、正面のドアのロックを解除し、扉を開いた瞬間、
「……うぅっ!」
彼らの鼻を突いたのは、強烈な悪臭だった。
鼻の奥をつくアンモニアの刺激臭に、ものの腐敗していく臭い。
正確に言えば、死語数日経った死体が作り出す腐敗臭と、
死体から垂れ流しになった糞尿の臭いが混じり合い、それが施設の薬品類の臭気と混じり合っていたのだ。
シャア、シン、レイは即座にヘルメットを着用し、酸素を大きく吸い込んで深呼吸した。
ごく普通の空気がこんなに美味いと思うのは初めてだった。
シンはふと、横目に見える人間だったものに目をやる。
壮年の男性だった。しかし、何かがおかしい。……お腹が異様にふくらんでいるのだ。
まるで妊婦のようだと思いながら、シンはライフルの先で男性のお腹を小突いてみようとした。
シャアは、シンがやろうとしていることを見て青ざめ、
「よせっ! シン!」
叫ぶが、遅かった。
ぶすんっ
たまった空気が抜けていく音と共に、男性の腹が破裂した。
死体から発生するガスが、行き場を失って内部にたまっていたのである。
「げぇっ!」
シンは、目の前で人の腹が破裂し、
『中にあったもの』が飛び散る瞬間を目の当たりにしてしまったのだ。
シンはこみ上げてくる吐き気をこらえ、シャアに手を引かれ施設の奥で、
死体が無い部屋の中まで避難する。
「馬鹿か貴様は!」
「す……すいませ……ぐぇ…」
シャアはうすぼんやりとした部屋の中でシンに怒鳴りつける。
そして、シンがこらえきれなくなったのを見るとメットをとってやり、
シンは部屋の隅っこに駆けていきげえげえと戻してしまった。あんなものをみればそうなるのもわかる。
シャアはやれやれとメットを取る。……ここには、死臭が漂っていなかった。
それに、こんな不気味な場所に不釣り合いな、美しい音色が響いていることに気づく。
「ピアノの音?」
シンとレイも気づいたらしい。
シャアはゆっくりと、その部屋を通り過ぎ、ガラスケースに挟まれた廊下を、警戒しながら進んでいく。
ガラスケースには、計器類がまだこうこうと光が点滅し、システムが生きている事を示していた。
『研究所管制室』のパネルがかけられたフロアにたどり着き、レイが進み出てドアロックを外し、開けた。
すると、先程まで暗がりの中にいたからか、中からの光に三人は一瞬目を閉じる。……ここだけ、明かりが付いていたのだ。
モニターは施設全体を映し出し、部屋の奥にある扉から、ピアノの音が漏れている事に気が付いた。
音を立てぬようにして、その部屋へと近づいていくが、
シンも、レイも、そしてシャアも、自らにからみつくようなプレッシャーが強くなっていくのを感じる。
間違いない。あの感覚の主はここにいる。
「……誰だ!」
シンが、部屋の中に銃を構えて飛び込み、部屋の中央にいた人影に銃口を向けた。
シャアとレイが続き、同じように銃を構える。
141:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:49:12
「……あんたは!?」
シンは、その後ろ姿に見覚えがあった。
この間、ディオキアでコンサートをやっていた……
アスランと、朝っぱらからちちくりあっていた……
「人の演奏中に、無粋だとは思わないのですか?」
「こんなおぞましい場所で、
悠々とピアノを弾いている貴方の方が、おかしくはありませんか……ラクス・クライン」
中にいた人間…ラクス・クラインは、レイのキツイ問いかけに微笑みで返すと、
ゆっくりとシンの方へ近づいていく。
「う、動くな!」
シンの警告も無視し、ラクスはシンの間近まで迫ると、
彼の首筋に顔を近づけて、においを嗅いだ。
シンは女性にここまで接近された事が無かったのか、顔を赤らめ、後ずさる。
「……死臭がしますわ。あなた、『おなかをつっついた』んですの?」
「黙りたまえ、ラクス・クライン。
……このような場所にいた以上、君を連れて行かねばならん」
シャアは彼女のこめかみに銃を突きつけた。
ラクスは今度は、それを自分の顔におしつけたままシャアへ振り向き、
銃口が額に当たっていてもなお、笑っていた。
「あなたが、シャア・アズナブル……」
だんだん、目の前の女の目が熱を帯びてきていることに気が付く。
シャアは、この期におよんで撃つのをためらった。
この女は何者だ!? なぜこの女は私をそう言う目で見る!?
ラクスは、シャアの頬に両手を伸ばして、艶っぽい声で言った。
「……会いたかった」
その時、シャアはこの感覚が“誰のもの”だったか思い出した。
~『シャアからそう頼まれるというのは嬉しいよ……』
~『貴様は、まだその手に世界を欲しがっているだろう』
~『人類がそれほど賢い存在だと思っているのか! 愚劣な!』
~『天才の足を引っ張る事しかできない俗人共に何が出来る!』
「……やめろ!」
シャアは思わず、目の前の不気味な存在を突き飛ばしていた。
一瞬意識を持って行かれそうになった事をシャアは恥じた。
そして、ラクスの挙動に戸惑っていたシンとレイ両名と彼女に銃を向け、
彼女自身は、今だシャアに目を向けたままだ。
「……説明してもらおう。
この施設は何だ!? 何故君がこのような所にいる!」
「……私が教える必要はありませんわ」
ラクスは、管制室のコンソールを指し示し、シンがそちらに近づいて、
いくつかボタンをいじってみる。
すると、巨大モニターに映し出されたのは、ガラスの円柱が並ぶ巨大な部屋であった。
中は液体で満たされ、そのなかにぼんやりと何かが……
142:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:50:33
シャアがそれが何なのか気づく前に、シンが同僚の異変を感じ取っていた。
「レイ!」
「……何!? レイ! どうした!」
レイが、銃を取り落とし、モニターを見つめて、がくがくと体を震わせ始めたのだ。
恐怖。その一語が彼を支配している。
過呼吸気味にせわしなく息をつき、
顔は青ざめ生気がなくなり、涙を流し始めていた。
「あぁ、あああ!」
「……いつの日か貴方を手に入れますわ、シャア」
「…………!?」
シャアは、この時あの女から視線を逸らしたことに気づき、
自らの間抜けぶりを悔やんだ。
「くそっ!」
振り返ったとき、このレクリエーションルームにラクス・クラインの姿はなかった。
レイをシンに任せ見回してみると、壁という壁に人が脱出できる穴はない。
そして、床に奇妙な跡があるのに目がいった。
金属製の床が一部へこんでいるのだ。まるで、強烈な力がかけられたような……
「……まさか!?」
シャアは嫌な予感がして、天井を見上げてみると、的中した。
天井が突き破られていたのである。
「シン、ミネルバに連絡を取るぞ。ここを脱出する!」
シャアは、一刻も早くこの不気味な場所から立ち去りたい気分になっていた。
「はい、検査終了。もう起きても良いぞ」
軍医に声をかけられ、シンは目を開けた。
ミネルバへ緊急通信を行い、修理中にもかかわらず一時中断してきてもらうはめになったシン達は、
医務室で、強制的に寝かされ検査を受けていた。
「まぁ、建物や周辺からガス・ウィルスの類は検出されてないから、
そう心配することも無いはずだ。
……それにしても、あの隊長さんは元気だねぇ」
全くだ。シンはそう思った。
シャアは、医務室の検査で異常が見られなかった事を聞くや、
外に飛び出しタリアらと合流したのだ。あの人も精神的に辛いはずなのに……
「シン、大丈夫なの!?」
見舞いに来ていたルナマリアが、涙目でシンの左手を握り言う。
このところ、ルナマリアはオーバー過ぎる気がする。
過度に心配するし、このあいだステラという少女と仲良くしたときは、
ミネルバに帰った後大変だった。彼だけ拘束され、一緒に寝て欲しいとせがまれたのである。
十七歳の少女の体に密着したときは思わず暴走する所であった。
(このところ戦いばっかで不安なんだろう……)
そうめどを付けていたので、さして気にはしなかったが。
143:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:52:06
「内部チェックは終了。
……自爆装置は撤去、バイオハザードは認められず」
「ご苦労様」
タリアは、施設近くの仮設テントで、ハイネの報告を聞いていた。
広大な訓練場の真ん中にミネルバを着陸させ、先程レイに変調があったとの報告を聞き、
中でバイオハザードが起きたのかと危惧し調べさせたのだが、何の異常もなかった。
今現在、兵の多くを動員して、内部の状態を詳しく調べさせている。
「こんな事になるなら、あなた達だけ行かせるべきではなかったわ、ごめんなさい」
「いえ、気になさらないでください、艦長」
しかし、レイの異常が汚染でないとわかっただけに、何故ああも動揺したのか……
タリアとシャア、ハイネらが調査経過のデータに目を通していると、
ブリッジに待機していたメイリンから、
「艦長。アスランさんのセイバーが帰投し……!? ア、アークエンジェルが一緒です!」
「「「……何!?」」」
三人は驚き立ち上がると、轟音が聞こえ始めた方向に目をやる。
赤い航空機と、その後ろの山の向こうから、
白い巨躯がヌッとその姿を現すのが目に入る。
シャアは、あの姿に既視感を覚えた。
「‘ホワイトベース’か!」
『アークエンジェル』~前大戦で、一躍名を馳せた戦艦だと聞いていたが、
その姿形までもが、自分の知る伝説的戦艦と似通っていることに、シャアは驚愕していた。
第17話~完~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これで終了です。
18話はキラ達中心で勧めたいので、ZAFTパートをまず出しました。
エーゲ海戦は前よりうまく戦闘描写できるよう頑張るつもり
それでは、また(・ω・)ノシ
144:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 13:53:15
>>143
ミスったorz
「第17話~完~」→「第17.5話~完~」
145:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 14:32:33
こっ…これは…ッ
0.5話分ということで幕間レベルに納まるかと思ってたら
ある意味最大規模のターニングポイント&急展開ジャマイカ?
しかしAA組はもちろんの事、アスランもミーアの件を含めて早いとこ何もかも
腹を割って知ってる限りの事洗いざらい白状しといた方がいいだろうな、
さもないと「極悪女と乳くりあっていた」というとんでもない誤解から
シン達の不信を買いかねないぞ…
146:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 14:37:54
誤字ハケーン
>>137
東ユーラシアはZAFTの→東ユーラシアが では?
>>139
破壊しようと試みた後があった→「跡」だよね?
とりあえず乙でした。0.5話的な中身じゃなかったけどw
147:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 15:09:33
>>787さん
乙っす
ペースはやいっすね~
148:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 16:43:49
>>146
や…やめてくれ!! た…たのむ!!
そ…そんなもの(誤字)さされたら死んじまう!! なっ!! な!!
>>137
東ユーラシアは→東ユーラシアが
>>139
破壊しようと試みた「後」→「跡」
です。くそう・・・
149:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 17:00:12
早い…更新が早過ぎる…
新しいエクステ達の選定といい、ラクスとシャアの対面といい、ミネルバとAAの合流といい
どう考えても幕間レベルな内容じゃなかったけど、787氏乙
150:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 17:04:28
787氏乙
内紛おこさせるとこで蠱毒を連想した俺が通りますよ
これ、ジブリにバレたらマズイよな
151:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 17:31:21
なぜだろう
このラクスなら仕えてもいいかも…と思った
152:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 17:32:08
なんという吐き気がする邪悪!
153:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 17:55:52
シャアなら木馬って言いそうな気がするんだが
些細なことだし、どっちでもいいのかな?
154:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 19:10:14
なんという清々しいまでの邪悪さ、
しかしこの黒ラクスは一体何を目指しているのだろう?
155:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 19:38:24
シャアは恥じた。
そして、ラクスの挙動に戸惑っていたシンとレイ両名と彼女に銃を向け
ほほう、アサルトライフルの二丁撃ちですか、さすがシャア、混乱する部下にも容赦なく銃を向けるぜ!
→シンとレイ両名も彼女に銃を向け
で、よろしいですかな?
156:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 19:50:18
ジャンクって声つながりの銀様www
157:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 21:03:25
更新が早いのは嬉しいし即時投下してくれる心遣いも嬉しい
でもやっぱり見直そうぜ!
158:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 21:14:59
このラクスは悪魔か?
最近読む度にSAN値が下がっているんだが・・・
159:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 21:31:18
このラクス様が内包してるのって、ハマーンとシロッコの混合体?
2人のニュータイプを内包してる存在って、ニュータイプからすりゃおぞましいでしょうね。
160:787 ◆x0o.lpJmC2ij
10/11/18 22:27:42
>>155、>>157
しまった。「両名と」と、「彼女」の間に「共に」を加えてくだされ
自分的にはしっかりと読み返しての投下だったのですが
・・なにぶん私の文章力がひどいもので・・申し訳ないm(_ _)m
>>154、>>158
『Alara Unbroken』と『ギャザ』でググッて下さい。その悪役をモデルにして書いてますので
161:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 22:40:56
>>160
ああ~、DIOとカーズを合体させて2で割った感じのドラゴンさんですね・・
162:通常の名無しさんの3倍
10/11/18 23:41:40
ハマーン、シロッコだけではない!更に上のラクスと言う邪悪が内包されたモンスターだ!
163:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 01:50:44
つか、場所的に東ユーラシアではなく東ヨーロッパな気がするんだが
164:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 01:59:14
この時のロシアだった所ってどうなってるんだっけ?
四月馬鹿クライシスで人住めなくなってたりする?
そうだとすれば納得なんだけど
165:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 02:00:54
ロシアは一応アストレイで出てきていたけど。住めてたぞ
166:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 02:05:27
でもロシアまで範疇に入れると
どこから東でどこから西なのかびみょうだよな、あそこデカイし
ロシアを東、ヨーロッパを西だとすると・・うん、すごく解り辛い
167:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 02:06:55
そもそも国の統合をしすぎているんだよねぇ
168:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 03:15:29
そのわりには統合した国家間の暗闘なんてあんまり無いしな
169:通常の名無しさんの3倍
10/11/19 07:05:10
そこはアレだ、統合が成ってから半世紀以上経ってるし、個人的感情はさておき、実務は恙無く遂行しようとするだろ
多分w