10/10/16 20:27:06 HOGiMRef0
ライダーは医師のひとりが着ていた白衣をはぎ取ると、裸体の雪江に手渡した。そして彼女を抱え上げると
勢いよくジャンプをした。二人はアジトの天井を突き破り、多摩川の河川敷に近い工場裏に脱出した。
「さあ、このサイクロンに乗って下さい」
ライダーと雪江がサイクロンに乗って去ってゆくのを、ひとりの怪しい人影が見守っていた。
真っ青なボディに黄色と黒の同心円の縞模様の乳房、真っ赤な触角と緑色の巨大な複眼。そして黄色の巨大な羽根。
華奢な女性の肉体と蜂のような昆虫が融合したかのような、美しくもおぞましい異形の怪人であった。
「あれが・・・仮面ライダー!我々ショッカーの邪魔をする裏切り者ね。見てるがいいわ。お前の命はこの蜂女が
必ず奪ってやるから。ウフフフフ!オホホホホ!」
それは脳改造を施され、身も心も完全にショッカーの一員となってしまった、18歳の女子大生、岩本涼子の
変わり果てた姿であった。
あと一時間、いや半時間、仮面ライダーの到着が早ければ、彼女も宮下雪江と同時に救助され、無事に人間と
しての生活に戻れたに違いない。だが運命の悪戯が、涼子と雪江、二人の運命を隔てた。
雪江の肌の色は多少回復したが、二度と完全な肌色に戻ることはなかった。またレーザーで全身に刻まれた
切開線の痕も、生涯消えることはない。彼女はこれからの一生、海水浴にも大浴場にも行けず、真夏でも長袖と
手袋で自分の体を隠し続ける生活を送ることになる。
だが、自らの意志に反して改造人間にされ、脳改造で自由意志を失い、ショッカーの傀儡として悪事に加担し、
やがて悪の怪人として仮面ライダーに蹴殺されることになる、不運な美少女・岩本涼子の悲惨な運命に比べたら、
そんなハンデなどたいしたことではない。
雪江は風呂に入り、無数の線が刻まれた真っ青な自分の体を見るたびに、とりわけ同心円状の模様が刻まれた
自分のふくよかな乳房を見るたびに思い出す。自分よりもちょっと運が悪かったために、黄色と黒の蜂のような
乳房を持った改造人間にされてしまった、あの少女のことを。