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2011年3月11日の東日本大震災による津波は、東京電力の福島の原子
力発電所を直撃した。幸いにして、1986年のチェルノブイリ原発事故のよ
うな大きな臨界核爆発はおこさなかったのだが、原子炉の冷却機能が失われて
炉内の圧力はどんどん上がった。高温になった燃料棒と水が反応して水素が生
成し、その水素による爆発が繰り返された。
このような状況のなかで、原子炉のなかに蓄積されていた核分裂反応の産物
である放射性の元素(アイソトープ)が封を破って噴出した。放射性物質は風
に乗り、また拡散して福島を中心とした広い範囲にひろがり、1週間もたつと
ヨーロッパにまで達した。原発から北西方向には どうも風の道があるのか、
初めに避難命令がでた20kmのラインを大きく超えた範囲でも、高い放射能
汚染が観測されている。放射性物質は、大気や陸ばかりでなく、海にも流れ込
んでいる。雨にとけて降った。東京の水道水にもその陰をおとし、乳児への影
響が報道されたとたんに、全国でミネラルウォーターのペットボトルが売り切
れた。報道されている原発から漏れている放射性の元素(アイソトープ)は、
そこそこに半減期の短いヨウ素と、30年以上のつきあいになるセシウム(た
だし土壌に入ったセシウムは流下し半減期10年ほどで減じていくという報文
もある)が主なものだ。これら2つ以上に危険なストロンチウムは、測定して
も検出限界以下なのか、そもそも分析されていないのかは私にはわからない。
原発事故以来、知識の引き出しをひっくりかえし頭をフル回転させ、どんなこ
とがおこり、そのリスクはいかほどかを、繰り返し反芻し確かめる毎日となっ
た。
原発事故による汚染農業土壌をなんとかきれいにできないだろうか。重く汚
染された土壌をつかい 口に入る食料作物を育てることは当面できない。放射
性のヨウ素は半減期が短いので、時間が経てばでてくる放射線は弱まる。セシ
ウムは植物の肥料の一つであるカリウムと性質が似ているので、植物は体の中
にセシウムを取り込みやすい。仮にストロンチウムもあると、カルシウムと似
ているのでヒトの骨に入り込み長い年月骨髄に放射線をあてるのでやっかいだ。
表土を入れ替えるという対策もあるだろうが、もし広範囲での汚染であると、
これを実行するには工夫がいる。
宇宙農業サロン・メンバーの石川洋二さんから、すばらしい提案がなされた。
放射性のセシウムなどで汚染された地でヒマワリを栽培する。ヒマワリの根に
は高濃度のセシウムが取り込まれ、そこにとどまる。チェルノブイリ原発事故
のあとで試されたヒマワリは水耕栽培であったが池のなかのセシウムを高効率
で吸収できたとされている。チャンピオンデータであろうが、1回の栽培で
95%除去とか宣伝されてもいる。土壌ではヒマワリの根がアクセスできる部
分が限られるので何回かの栽培が必要だろう。また、根を高収率で収穫しない
といけない。ヒマワリにはたくさんの品種があるし、根圏まわりの条件で摂取
速度はかわるだろうから、基礎的な研究が必要である。土壌のなかからくまな
く吸収するには、キノコなど菌類や土壌微生物がよい働きをするかもしれない。
ストロンチウムも根から吸われてヒマワリの花にあつまる。有害な有機化合
物であれば、植物が無毒化することも可能だが、放射性元素ではそうはいかな
い。植物が存分に放射性元素を土壌から吸収し蓄積したところでその植物体を
収穫する。
収穫したヒマワリの花は、放射性元素を含んでいるので、花卉市場に出荷す
るには向かない。しかし、放射性元素たっぷりのヒマワリといっても含まれる
放射性元素の量はわずかだ。宇宙農業の活躍の場はここにもある。宇宙農業で
つかう高温好気堆肥菌でヒマワリを処理すると、ヒマワリのミネラル分が残る。
この放射性ミネラルをガラスに溶かし込む。このヒマワリ・ガラスを日本海溝
の最深部に孔をあけて封ずると、何年後かには地球のマントル層に引き込まれ
ていくだろう。
>>2へ続く
ISASメールマガジン 第342号 【 発行日- 11.04.12 】
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