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海外分析 政府発表より緻密
2011.4.4 06:52
危機の程度
いまだに危機的状況から抜け出せないでいる東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力
発電所事故。国民は政府や東電の発表、説明を注視しているが、今一つ実態や危機の程度が
分からず、もどかしい思いをしている。一方、今回の事故には欧米を中心に海外の専門家、
メディアも注目しており、その分析は日本より踏み込んだものが多い。鮮明な事故現場の写真が
世界中に配信され、その画像を元に、原発先進国の研究機関が独自に開発したシステムを活用
して事故の状況をコンピューターでシミュレート(模擬実験)し、積極的に情報開示している
ためだ。
ノーベル物理学賞を受賞した原子物理学者でもある米エネルギー省のスティーブン・チュー
長官(63)は1日、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューに答え、「詳密なモデリング
(仮説実験)の結果、(福島第1原発の)ひとつの原子炉(圧力容器)は70%損傷しており、
別の原子炉の核燃料棒は33%が溶融していることが分かった」と言い切った。
具体的な数字
日本の経済産業省原子力安全・保安院のこれまでの発表では、「3号機の圧力容器が一部で
破損しているとみられる」「1、3号機の核燃料棒は、一部溶融している可能性がある」と
していたのと比べると、チュー長官の発言は具体的に数字が示され、分析の深さがうかがえる。
米国、フランスの2大原発先進国では、1979年の米スリーマイルアイランド原発事故
(大規模な炉心溶融)と86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(原子炉爆発)を経て、
事故時にわずかな映像や断片的情報から原子炉で起きていることを探るためのシミュレーション
システムを開発してきた。マサチューセッツ工科大(MIT)のマイケル・ゴレイ教授(原子力
工学)は「システムの精度は近年格段に上がっている。しかも今回は精度の高い写真が多数撮影
されているので、かなり詳しく実態が把握できているはずだ。情報を開示するかどうかは別の話
だが」とニューヨーク・タイムズに語っている。
米スタンフォード大学は3月21日、今回の福島第1原発事故と原子力発電の将来について
考えるパネルディスカッションを開いたが、席上、フランスの世界最大の原子力産業複合企業
アレヴァの関連企業のアラン・ハンセン副社長は「(福島原発で)一部溶融した核燃料棒の温度
は、最高時には摂氏2700度に達していた」と発言した。これは専門家が聞けば、愕然とする
内容だった。
核心情報
燃料棒は核燃料を焼き固めたペレットをジルコニウム合金で棒状に覆っている。ジルコニウム
合金は約1100度で溶け出し、燃料本体が原子炉圧力容器の底に落ちた場合、圧力容器の鋼鉄
の耐熱温度は2800度とされているためだ。さらに過熱され圧力容器の底を破って格納容器の
中に燃料が入り込めば、原子炉建屋が崩壊している現状下では大規模な炉心溶融を起こしたスリー
マイルアイランド原発事故を上回る事故となるところだった。
事故の当事国では、核心情報の持つ重み、国民への影響力が第3国とは格段に異なる。とはいえ、
政府は「隠す」「うそ」「過小評価」だけは現に戒めなくてはならない。
チュー長官は「時間はまだかかるが、方向は確実に収束に向かっている」とも言った。この言葉を
信じたい。
▽記事引用元 MSN産経ニュース
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
▽画像 航空写真撮影会社エアフォトサービス(新潟県)が小型無人飛行機を使って撮影した、
福島第1原発の3号機(左)と4号機の様子。こうした鮮明な画像を詳密に分析して、欧米では
踏み込んだ情報が開示されている=3月24日、福島県大熊町(ロイター)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)