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食用魚として漁業の対象になっていたクニマスは、どんな味で、どんな料理で食べられて
いたのでしょうか。
『クニマス百科』(杉山秀樹著 秋田魁新報社)の座談会記録によると、「クニマスも
ヒメマスも味にはそんなに違いはなかった…」と話されていますが、普段ご飯のおかずとして
食する魚ではなく、特別な時に食卓に上がっていたとされています。杉で作ったクシに
クニマスを刺し、囲炉裏で焼いたものをお祝いや正月料理で口にする程度だったそうです。
また風邪を引いたときには、ぶつ切りにしたクニマスを味噌貝焼き(カヤキ)にして食べさせて
もらったといいます。田沢湖周辺では、クニマスはハレの日のご馳走であり、タンパク源と
しても重宝されていたという背景がうかがえます。
クニマスは身が白く、脂肪分が少ない魚で、どんな料理も内臓・骨ごと食べたといいます。
内臓を取り出さずそのまま食べたということから、田沢湖には餌が少なくクニマスの胃の
中は空だったのでしょうか。そのため脂っこさはなく、肉は淡泊で、どのようにして食べても
よかったのではないかと思われます。
実際、クニマスはほとんどが鮮魚で流通していたようですが、加工に関する記録も
残っています。昭和10年5月の記録によると、「薫製は、うまくなかったが、皮の強靱と、
肉の軟らかすぎるという欠点はなかなか除去できない」とあります。この話からすると、
クニマスは水分が多いうえに皮も固いため、乾燥させることが困難であったために薫製が
うまくできなかったと推測されます。
田沢湖の名産として珍重されたクニマス。
その食文化は、素材を大切にするシンプルなものであったようです。
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