10/11/20 22:13:44
(>>1の続き)
では、じっとしているときの基礎代謝でなく、運動に使われるエネルギーではどうなのでしょうか?
背が高い人は、小さな子どもや背が低い大人とくらべ、体重1kgあたりの消費エネルギーが少ない
「効率のいい」運動をしているということは、以前から経験則的に言われてきたことです。
これを検証するため、Peter Weyand教授はBaylor College of Medicineの研究者らと協力し、
5歳から32歳までのさまざまな体形(体重15.9kg~88.7kg、身長107cm~183cm)の男女の
歩行を分析しました。
Weyand教授らはまず、被験者が秒速0.4mから秒速1.9mの速度でトレッドミルの上を歩く様子をビデオ撮影し、
同時に酸素吸入量と二酸化炭素排気量も測定しました。呼吸した酸素と二酸化炭素の量により歩行中に
合計でどれだけの熱量を使ったかを計算でき、そこから基礎代謝(じっとしていても消費される熱量)を
引くことで、歩行に必要なエネルギーを求めることができます。
次に、歩幅やペース(時間あたりの歩数)、一歩あたりで足が地面に着いている時間の割合など、
被験者の「歩き方」を分析したところ、身長が違う被験者でも「歩き方」は変わらないということが
明らかになりました。これは、身長110cmの5歳児を身長2mに拡大すれば、身長2mの大人とまったく
同じ歩き方をするということで、水泳やマラソンなどのスポーツでは泳ぐのや走るのが「うまい」
アスリートは一般の人とくらべ消費エネルギーの少ない「無駄のない」動きをしているといいますが、
普通に歩く分には子どもと大人、背が低い人と高い人の間で「うまい下手」の違いはないということになります。
背が高い人は歩くのが上手だから燃費がよい、というわけではないのです。
Weyand教授らは次に被験者それぞれがもっともエネルギー効率のよいペースで歩いているときの、
一歩あたりのエネルギー消費量を比べ、身長に関係なく一歩あたりに必要なエネルギーは等しい
ということを発見しました。そして、被験者の身長とある距離を歩くのに必要な最小エネルギーを
プロットしたところ、傾度がほぼマイナス1の、きれいな直線の逆比例のグラフを得ることができたそうです。
つまり、A地点からB地点まで1000歩でたどりつくことができる人と、同じ距離を移動するのに
1200歩かかる人では、1200歩の人のほうが歩数が多い分だけエネルギーを消費することになります。
子どもと散歩していて、すぐに疲れて「抱っこ」と言ってくることがあるかもしれませんが、
甘えたくて疲れたふりをしているわけでも、無駄な動きが多いためすぐ疲れるわけでもなく、
同じ距離を歩いても大人より歩数が多いので疲れるのが早いとも考えられるようです。
この発見に基づきWeyand教授らのグループでは身長・体重・移動距離により消費エネルギーを
求めることができる等式を導き出したそうです。この式は現在のところそれぞれの人が最も
エネルギー効率のよい歩き方をした場合の消費エネルギー、つまりその距離を歩くのに必要な
最小の熱量を求めるものですが、今後あらゆる速さに対応できる計算式もつくっていきたいとのこと。
「医療の現場での臨床応用性もあり体重管理に役立つほか、代謝率は戦場での兵士の生理学的状態に
影響するため、軍も興味を示しています」とWeyand博士は語っています。
世界的に見ると日本は肥満人口が少ないと言われていますが、食習慣や生活習慣にくわえ、
日本人の脚の短さもわずかながら肥満率の低さに貢献していたりするのかもしれません。
(引用ここまで)