10/11/20 17:39:23
Andrew Fazekas
for National Geographic News
November 19, 2010
日本の月周回衛星「かぐや」の観測結果から、月は満月のとき地球の磁場の“尾”を
通過するため、表面付近に強力な電場を形成することがわかった。
地球の磁場は、「磁気圏」と呼ぶ球状の防御壁を生み出している。磁気圏は地球
全体を包み込み、太陽から常に放出される荷電粒子やプラズマの激しい流れ
「太陽風」から私たちを守っている。
地球の磁気圏は太陽風に押されるため、丸い球が少し伸びた形になり、「磁気圏
尾部」という尾のような部分ができる。この尾は、常に太陽の反対側を向いており、
月の軌道を越えるほどの長さがある。
月が満月になるのは、地球から見て太陽の反対側に来るとき、すなわち、
太陽・地球・月の順に並ぶときである。したがって、満月の時には地球の磁気圏
尾部の範囲内に月が位置することになる。
月の帯電現象を明らかにしたのは、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が
打ち上げた月周回衛星「かぐや(SELENE)」である。2007年に打ち上げられた
「かぐや」は、月面上空わずか100キロを20カ月にわたり周回し、月の表面を
初めて高解像度映像に収めた。使命を終えた「かぐや」は2009 年6月、予定通り
月面に向かって制御落下していった。
「かぐや」の撮影装置や観測装置から送られたデータは、現在も解析が続けられ
ている。月磁場・プラズマ観測装置(MAP)のデータには、満月時に比較的
高エネルギーの電子が月の表面に吸収されていることが記録されていた。
解析チームは、月面上数メートル以内の領域で1カ月に1度、静電気が蓄積し、
一時的な電場を形成していると結論づけた。「月の帯電現象は、地球磁気圏の
プラズマシートと呼ぶ領域を通過する際に発生している」とチームはレポート
している。プラズマシートは、地球の磁気圏尾部の中間(赤道面)付近に形成
される領域で、厚さは数千から数万キロといわれている。
月は全球を覆う自分自身の磁場を持っていないため、プラズマシートを通過
するとき、内部に閉じ込められ動き回っている太陽粒子に表面が
さらされた状態となる。
研究チームのリーダーで、京都大学大学院の修士課程に在籍する原田裕己氏は
次のように話す。「月面周囲に比較的強力な電場ができるのは、月が地球の磁気
圏内部に位置するときである。ただし、この電場の発生原因について結論は出て
いない。地球の磁気圏尾部のプラズマや磁場の性質が関係しているはずで、月と
周囲のプラズマの相互作用もあるだろう」。
強力に帯電した月の表面は、将来の無人・有人探査にとって危険ではない
だろうか?
原田氏は、「深刻なダメージを負う可能性がある」と認めた。静電気は
月面に存在する微細な“ちり”を大量に飛ばす可能性があるため、デリケートな
レンズや電子機器が損傷する恐れがある。また、静電気が蓄積すると、予想外の
放電につながることもあり得る。
▽記事引用元 ナショナルジオグラフィック ニュース
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
(>>2以降に続く)