10/11/10 18:36:24
ベトナム料理で人気のトカゲが実は新種だったと判明した。
しかもすべての個体がメスで、オスとの交尾を必要とせず単為生殖するという。
ただしそれほど珍しい存在ではなく、トカゲ全種のうち約1%は単為生殖により繁殖できる。
メスが自発的に排卵し、遺伝情報がまったく同じ子を産むという。
カリフォルニア州リバーサイドにあるラ・シエラ大学の爬虫両生類学者で調査活動にも参加した
L・リー・グリスマー氏は、「ベトナムではごく普通の食材だ。南部のメコン・デルタ地帯の
レストランでメニューに載っている。われわれも店内で出会った」と話す。
ベトナム科学技術アカデミーのゴー・ヴァン・トリ氏はある日、バリア・ブンタウ省のレストラン
で売られている生きたトカゲを目にした。みんな奇妙なほどよく似ているので気になり、知人だった
グリスマー氏と、その息子でアメリカ、カンザス大学の爬虫両生類学博士課程に在籍するジェシー・
グリスマー氏に画像を送ってみたという。
グリスマー父子は、メスのみの単性種ではないかと考えた。一見して雌雄で体色がまったく異なる
バタフライアガマ属のようだったが、画像ではオスがどこにもいなかったからだ。
そこで親子はホー・チ・ミン市へ飛び、生きたトカゲを“電話予約”してレストランへ向かったが、
待っていたのは失望だったという。「オートバイで8時間もかかったのに、酒に酔った店主が予約を
忘れてすべて調理してしまい、1匹も残っていなかった」とリー・グリスマー氏は振り返る。同氏は
他のプロジェクトでナショナル ジオグラフィック協会研究・探検委員会(CRE)から資金提供を受け
たこともある。
運良く同じトカゲを提供するレストランが見つかり、地元の小学生も捕獲を手伝ってくれたため、
最終的に約70匹が集まった。グリスマー親子が調査したところ、すべてがメスと判明したという。
新発見のトカゲは腕部に並んだ大きな鱗と趾下薄板(しかはくばん:足の裏にある大型の鱗板)が
特徴的で、新種と判断する材料となっている。
どうやら2つの近縁種を父と母に持つハイブリッド種である可能性が高い。2つの異なる生息環境の
移行帯で起こる現象であり、例えば新種トカゲが生息するビンチャウ・フックブー自然保護区は
低木林と海岸砂丘の間に位置している。「このような場所では、2つの異なる環境に生息する種が
出会ってハイブリッドが生まれることがある」とグリスマー氏は説明する。
母親から受け継がれる「ミトコンドリアDNA」の遺伝情報を検査した結果、母方は「Leiolepis guttata」種
と判明した。父方はまだ確認できていない。
グリスマー氏によると、新発見のハイブリッド種は野生の個体数が激減しているわけではないが、絶滅する
可能性があるという。
ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館の名誉館長で爬虫両生類学者のチャールズ・コール氏は、
「ハイブリッド種は絶えやすいという説もある。代を重ねても遺伝的多様性が生まれないからだ」と第三者の
立場で指摘する。「種の長期的な存続には、遺伝的多様性が欠かせない」。
ソース:ナショナルジオグラフィックス URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
画像:URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)