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地球最古の大型捕食動物と考えられていた、エビに似た巨大な生物
アノマロカリス・カナデンシスが、実際はぜん虫類を主食とする“軟弱者”だったとする
最新の研究が発表された。
5億年前のカンブリア紀の海底に生息していたアノマロカリス・カデナンシスは、
体長1メートル近く、硬い殻に包まれ、目が飛び出ており、当時の生物の中では
かなり大型だった。独特な丸い口には放射状に重なり合う32枚の歯があり、
口の脇からトゲの付いた2本の触手が前に伸びていた。
アノマロカリスはこれまで、この頑強な口で、同じく海底に生息していた無脊椎の
節足動物である三葉虫など硬い殻に覆われた生物を噛み砕いて食べていたと
考えられていた。しかし、アメリカにあるデンバー自然科学博物館の古生物学者
ジェームズ・“ホワイティ”・ハガドーン氏の研究チームは、アノマロカリスの口の
3Dコンピューターモデルを使った研究を行い、従来の説を否定する新説を発表した。
「アノマロカリスは“百獣の王”ではなかったのではないかと我々は考えている」と
ハガドーン氏は語る。「素晴らしい化石だという事実は変わらないが、海をわがもの顔に
泳ぎまわって無力な三葉虫を切り裂くといった、おなじみのアニメーションは
見直しの必要がありそうだ」。
アノマロカリスの口のコンピューターモデルでは、現生のエビの柔らかい殻すら
噛み砕くことができないことが示された。これでは、ほとんどの三葉虫が持つ
硬い殻には歯がたちそうにない。それどころか、口を完全に閉めることさえ
できなかったらしいという。
つまり、アノマロカリスは、非常に小さいか脱皮したばかりの柔らかい三葉虫を
吸い込んで食べることはできたかもしれないが、「三葉虫の約95%は殻が硬すぎて
噛めなかっただろう。先に口の方が壊れてしまったはずだ」とハガドーン氏は推測する。
このコンピューターモデルの結論を裏付ける証拠は化石にも見られると同氏は
付け加える。例えば、研究チームはアノマロカリスの口の部分の化石を400点以上
調べたが、日常的に硬い殻を噛み砕いていた生物なら当然あるはずの傷跡が
まったく見られなかった。さらに、胃の内容物や排泄物の化石からも、
アノマロカリスが硬いものを食べていたという証拠は見つからなかった。
アノマロカリスは三葉虫ではなく柔らかいものを食べていた可能性が高いと
ハガドーン氏は話す。「1つの仮説として、水中にいる柔らかいぜん虫類や
プランクトンを食べていたのではないかと考えられる」。
この研究は、2010年10月31日~11月3日にデンバーで開催されたアメリカ地質学会
(GSA)の年次総会で11月1日に発表された。
ソース:ナショナルジオグラフィックニュース
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
画像:海底を泳ぐアノマロカリス・カナデンシス(想像図)
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)