10/10/13 20:19:51
生涯にわたって複数の言語を話すことは、年を取ってから報われるようだ。
最近の研究によれば、バイリンガルの人は認知症の症状を平均4年遅らせることができる。
複数言語使用は認知症の発症を遅らせるわけではない(複数の言語を話す人の脳もやはり生理的な劣化の兆候を示す)が、
複数の言語を話すプロセスは、アルツハイマー病を含む認知症の初期症状によりうまく対処する技能を発達させることができるようだ。
研究者は長年にわたって子どもを研究し、複数の言語を流ちょうに話すことが、多大な頭脳労働を必要とすることを明らかにした。
バイリンガルの子どもや若年成人は、一言語だけ話す人(モノリンガル)に比べ、語彙(ごい)が若干少なく、
動物や果物のリストの名前を言うといった特定の言語課題の実行に少し時間がかかった。
しかし、時がたつにつれ、複数言語の常用は、脳のいわゆる「認知的予備力」という、
脳がストレスや損傷を受けたときにでも働く能力を高める技能を強化するらしい。
この認知的予備力の増強が、年を取るにつれ、バイリンガルの人の助けになるようだ。
カナダ・トロントにあるヨーク大学のバイリンガル能力研究者、エレン・ビアリストク博士は、
「二つの言語を話すことは、(アルツハイマー病や認知症の)発症を回避することにはつながらない」という。
しかし、認知予備力が高まることで、「車の予備タンクと同様、脳の燃料が切れても、少し先まで行ける」ことになるという。
バイリンガル能力の強みは、具体的には、抑制制御ないし認知制御と呼ばれる脳の機能に関係していると考えられている。
これは、ビアリストク博士によると、一つのことに注意を払うのをやめて、ほかのことに集中する能力だ。
複数の言語を流ちょうに話す人は、ある言語でコミュニケーションをとっている間、
もう一つの言語を黙らせておくために絶えずこの技能を使う必要がある。
認知的予備力を鍛えるというアイデアは、クロスワードパズルや頭の体操といった、
頭を働かせ続けることを何でもやれば、認知症の症状を食い止める助けになるという通俗的アドバイスにつながってきた。
しかし、7月に米国立衛生研究所が開催したパネルディスカッションは、
そうした活動がアルツハイマー病や関連の認知症を予防すると結論付ける十分な証拠は存在しないと警告した。
>>2に続く
ウォール・ストリート・ジャーナル(2010年 10月 13日 7:34 JST)
▽記事引用元 ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版
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