厚木周辺パート23at RAMEN
厚木周辺パート23 - 暇つぶし2ch78:ラーメン大好き@名無しさん
10/05/25 01:34:58 Y2KcoiJt
私には、唯一無二の妹がいる。
彼女は自他共に認めるラーメン好きで、特にくらかどという店には比類なき賛辞を呈していた。
私も、妹の相伴に預かりくらかどを食す機会が度々あったのだが、生来の食の疎さに起因する私のおざなりな感想のせいで、彼女から叱責を受けるのが常であった。
私を叱りながらもどこか楽しんでいるような笑顔。私からこっそりチャーシューを掻っ攫う無邪気さ。食後の余韻に見せる曇りなき恍惚。
薄暗い店内を照らす花天月地のような彼女の表情を、私は密かに好いていた。
妹との思い出の詰まったくらかどは、私にとっても特別な店であったのだ。

時代は変遷を迎える。
人民街から遠く外れた山奥の榛名倭人集落に、私達兄妹は身を潜めていた。
先の大戦で、両親とは死別している。
かつて母の形見の掻巻だったボロ布を兄妹で共有して、読んで字のごとく二人身を寄せ合っていたのだ。
私たちの生命線となったのは、週一で配給される化学合成穀物粉であった。
穀物粉を練り、麺状に伸ばし千切ったものを、醸造所の廃墟から拝借した味噌を溶いたスープで煮込む。
無論、ダシなどないので味気のない料理が出来上がるが、妹は、それをいつも、美味しい美味しいと評してくれた。

そんな妹も、南から飛来する灰燼と化した建築物の粉塵が原因で、塵肺を患った。
「我儘言っていいかな。」
ある日、比較的体調が良く、体を起こしていた妹が口を開いた。
「珍しいこともあったものだ。どれ言ってごらん。」
私は炊事の手を止めず、続きを目で促す。
「くらか・・・ううん、なんでもないの。いつもありがとね。」
かつては、妹に、生き甲斐とまで言わしめた”くらかど”。
今まで我儘一つ言わなかった彼女だが、心中辛くないはずがない。
こんな世界にも希望があることを彼女に教えてやりたいと思った。
・・・しかし、くらかどを現実に顕現させるためには、進駐軍蔓延る人民街を潜行し、ゲリラの巣食う密林を踏破し、遥か彼方の厚木地区を目指さなければならない。
よしんば厚木に辿りついたとしても、くらかど店長に接触できるとも限らない。成功の可能性は雀の涙ほどだ。
―そうか・・・ならば、何も問題などないではないか。
「任せろ。」
かくして、私のくらかどへの旅が始まる。

行こうよ!
くらかどへ


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