11/07/02 01:38:46.65 LMdrtnMj0
その話を聞きながら、私は見た。Vが笑っている。
いつものあけっぴろげな笑みでは無く、口の端を釣り上げるような笑い。
へえ、怖いね、とか言って席に戻る奴の唇が、微妙に動く。
嫌な感じがした。さすがになんと言ったかまでは分からなかったが。
私は霊感こそ無いが、勘は昔から鋭く、耳も良かった。
中学時代にクラスの端での悪口を聞きつけて大喧嘩したことだってある。
この勘は、自分的には結構信用できる。
…Vが犯人なのではないか。
私は何の根拠も無くそう直感する。少なくとも、近い位置にはいるのではないか。
言われてみればVは基本的に服は黒、阿呆に見えて考えが分からない節がある。
典型的な犯罪者タイプだ。
思い至れば即実行。
私はその日、講義が終わるとすぐに自分の車に向かい、通用ゲート傍に路駐した。
Vは原付だ。付けるのはたやすい。
案の定校外へと出て行く時に此方を見向きもせず、Vは家の方へと帰る。
実家生であるVは、独り暮らしの人間に比べるとかなり大学から離れた場所にすんでいる。
車で30分といったところか。その日Vは直接帰らない様で、古本屋に寄っていった。
当然私は、車の中でシートを寝かせて待つ。
コンコン。
続く