11/05/27 02:26:25.42 3m9TBUZt0
手持ちの「ふしぎな話」からひとつ
オレの母親は若い頃、満州の新京(現在の長春)で商社に勤めていた。
二十歳そこそこの小娘の手取りが内地の校長先生なみだった、というから相当に羽振りが良かったらしい。
が、だんだん世の中がキナ臭くなって、いよいよ内地に引き揚げ、という日がきた。その夕方。
同僚と駅で待ち合わせの時、夕日で染まった駅の長い塀の前にぽつんと立っていたおかっぱの小さな女の子。
いきなり「大丈夫?気をつけてね」と言った。はて、会社の誰かの子供さんだったかしら?人違いかしら。
無事に帰国して十数年が過ぎ、結婚して中年になった母は、ある朝、小学校に行く姉(オレより4つ上)を
送り出して、その後ろ姿になぜか(あ・・あの時の子・・・)と思ったという。
平成14年の母の病室。オレは間に合わなかった臨終の少し前、付き添いの当番だった姉に「あの子が来た」と
言った。
疼痛治療のモルヒネで錯乱していたんだろう。
しかしそれまでの不明瞭な言葉ではなく、はっきりとそう言ったらしい。