11/06/12 11:40:50.65 4wNUdpM50
そのまま脚でぐりぐりされて、仕方無しにのそのそと振り返った。
暗くしていた部屋に明りが灯り、少しの間目が眩む。
870:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:43:02.05 4wNUdpM50
「メリークリスマス」
そこにはメリーさんがいた。サンタのコスチュームを着ていた。
871:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:44:46.52 4wNUdpM50
赤い服を着て、白い袋を担いで、ビシッと親指を立てていた。浮かれていた。
今日を象徴する呪わしい姿に心底嫌気が差し、ケッという顔を露骨にしてやる。
872:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:46:39.31 4wNUdpM50
「死ね。クリスマス死ね」
ボソボソと文句を言ってやると、浮かれた笑顔が怒りに歪んだ。
873:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:48:28.40 4wNUdpM50
ギラリと光った瞳が獲物を見つけた鷹のような獰猛さを宿す。
「あ……!?」
874:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:54:07.54 4wNUdpM50
メリメリと音を立ててメリーさんのこめかみに青筋が浮かんでいく。
フン、と鼻を鳴らして背中を向けて丸まると、その首筋をガッと掴まれた
875:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:56:47.54 4wNUdpM50
猫のように持ち上げられ、ぐるりとメリーの方向を向かされる。
据わった瞳をこちらに向けるメリーは、拳をゆっくりと引くと―
876:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:58:24.32 4wNUdpM50
「メリィッ!!」
「ほぐんっ!」
877:本当にあった怖い名無し
11/06/12 11:59:22.78 4wNUdpM50
ドスゥっと腹に突きたてた。体が『く』の字に曲がり、ギシギシと揺れる。
人間サンドバッグにされた身体は手を離されると情けなくへたりこんだ。
878:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:00:08.46 4wNUdpM50
パンパンと手を叩いたメリーは、腰に手を当てると偉そうに命令してきた。
「腐ってないで買い物行ってきなさい。ケーキとシャンパン。コンビ二でいいから」
879:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:02:02.69 4wNUdpM50
「やだ」
拒否したが、財布と携帯を投げつけられ、ガスガスと玄関の外に蹴り出される。
880:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:03:01.34 4wNUdpM50
バタンと扉が閉じられると、冬の寒さがトレーナー上下の身体に沁みてきた。
布団にくるまって温まっていた反動で、凍りつきそうな寒さが肌に刺さる。
881:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:08:49.78 4wNUdpM50
『急いでね~』
扉の向こうで、上機嫌に手をヒラヒラ振ってそうな声が聞こえてくる。
882:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:09:43.06 4wNUdpM50
深く息を吐くと、仕方無しに重い腰を上げた。
安アパートの扉を背に、金属製の階段をカンカン下りていく。
883:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:10:43.11 4wNUdpM50
空には穴が開いたような月。ボーっと空を見上げ、ぽつりと呟く。
「……漫喫で過ごすか……」
884:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:11:42.45 4wNUdpM50
ポケットに手を突っこみ、浮かれた夜をとぼとぼと歩いていく。
飾られた家々の電飾を見て改めて呟いた。クリスマス死ね。おしまい。
885:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:17:19.72 4wNUdpM50
「メリーが楽しむクリスマス! これが本当のメリークリスマス!」
「きゃあもうやだメリーさんったら面白ーい」
886:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:18:14.48 4wNUdpM50
小さい頃から何度も聞かされている親父ギャグでも
酒の力は面白く感じさせるらしい、と俺はため息一つ。
887:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:19:02.03 4wNUdpM50
「ほらほら、サキったら耳が出てるわよ」
「あははー本当だー」
888:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:19:44.67 4wNUdpM50
酔った自分の娘の耳を整える女性と目が合って互いに苦笑いする。
この優しげな女性が、世間を騒がせた口裂け女だと、誰が信じるだろうか。
889:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:20:30.80 4wNUdpM50
「……サキは、きっと美しく育っているのでしょうね」
俺の隣で、一人の男が呟いた。
890:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:22:03.33 4wNUdpM50
湖月 別光(べっこう)……後輩の父親である。
「まあ、十人並よりは上ですかね」
891:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:23:32.13 4wNUdpM50
「そうか。君が言うならそうなんだろう」
世界に名を知られた作曲家である彼は、何処か浮世離れしている。
892:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:24:49.56 4wNUdpM50
それは多分、生来盲目であることに由来するのかもしれない。
「ところで……いつサキをもらってくれるんだい伊三くん?」
893:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:26:35.04 4wNUdpM50
そう問われて俺は盛大に口に含んでた酒を噴き出した。
俺の名は目理伊三。
894:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:31:26.66 4wNUdpM50
世の中に苦手な人は三人。すなわち両親とこの人である。
都市伝説と結婚するヤツなんて、何処かクレイジーなヤツばっかだ。
895:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:32:38.58 4wNUdpM50
「今月いっぱいで契約は打ち切りなの・・・。」
896:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:33:44.42 4wNUdpM50
「もしもし私メリーさん
今、初売りの最前列にいるの…」
897:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:34:45.31 4wNUdpM50
大切にしていたあの人形
引っ越しするから捨てようかしら
898:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:35:32.73 4wNUdpM50
新しい人生を一人で何とか生きるため
あなたにはもう頼らない 強くなりたいの
899:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:36:57.50 4wNUdpM50
ごめんねメリー
あなたと過ごした10年間
900:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:38:23.02 4wNUdpM50
さようなら、さようなら
あたしはメリーをゴミ捨て場に捨てたのよ
901:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:39:14.43 4wNUdpM50
引っ越し先で荷物を解き
疲れて寝ようとしたころに
902:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:40:36.83 4wNUdpM50
ケータイ鳴って出てみると
あたしメリーさんという声が
903:本当にあった怖い名無し
11/06/12 12:58:55.22 3E2o42/k0
もしもし、あたしメリーさん 今、ゴミ捨て場にいるの これからあなたの部屋へ行くわ 寂しいから
きゃぁ、人形が喋ってる あたしの部屋へ来るという
904:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:00:02.56 3E2o42/k0
でも、自分でさん付けするやつたいてい阿呆
けれど阿呆といえども許さない
905:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:01:15.63 3E2o42/k0
あたしの旅立ちを邪魔するというのなら
メリーといえども許さない
そしたらもいちど電話が鳴った
906:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:06:00.70 3E2o42/k0
もしもし、あたしメリーさん 今、長い階段をのぼっているの 人形にはこの段差がすごく疲れる ふうふう
もしもし、あたしメリーさん 今、歩道を歩いているの 右にある車道は夜中なのに本当に交通量が多くて、排気ガスが苦しいの ライトもまぶしい!
907:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:07:10.78 3E2o42/k0
もしもし、あたしメリーさん 今、公園を歩いているの 平日の深夜なのにカップルが多くて一人で歩くのが恥ずかしいよ
もしもし、あたしメリーさん 今、裏のタバコ屋にいるの もうすぐ会えるね
908:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:09:11.18 3E2o42/k0
もしもし、あたしメリーさん 今、ドアの前にいるの
もしもし、あたしメリーさん 今、お前の後ろにいるの
909:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:10:32.12 3E2o42/k0
あたしは振り返った
どうやって入ってきたのかはわからないけれど
910:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:11:45.73 3E2o42/k0
そこには薄汚れて泣きべそをかいているメリーがいた
なんだかメリーが弱った子猫のように見え、かわいそうで
911:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:12:40.88 3E2o42/k0
ここまで長い道のりを一人でやってきたことがいじらしくて
それを思うとなんだかちょっぴりあたしが泣きそうで
912:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:14:07.95 3E2o42/k0
捨てたことを後悔しつつ、もう一度やり直そうかなんて考えてもみた
その時、安心して気が緩んだのか、メリーが倒れた
913:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:15:18.00 3E2o42/k0
メリィィィーーーー!!
あたしは両腕でメリーを抱いた
でもメリーは目を覚ますこともなく、体は冷たくなっていった
914:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:15:59.38 3E2o42/k0
なのでゴミ捨て場に捨てたらまたすぐ電話が鳴って本当にもう鬱陶しいです
自分のサイトに載せようか迷い中
915:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:17:59.48 3E2o42/k0
なのでゴミ捨て場に捨てたらまたすぐ電話が鳴って本当にもう鬱陶しいです
自分のサイトに載せようか迷い中
916:本当にあった怖い名無し
11/06/12 13:18:36.79 a6qtbF+A0
きもいから載せなくてOK