11/02/04 23:53:43 CMLM9Q/+0
ある秋、地方の山に登りに行った時の話。
そこはかなりマイナーな山で、観光地化もされていない、単なる田舎って感じの山地だった。
人通りも全然なくて、日中は仲間内でのつつましいハイキングを楽しんだわけだ。
山頂からずーっと落ち葉の道を下っていくと、唐突に登山道が終わって、もう使われなくなった旧道に出る。
本当は、その荒れたアスファルトの道を登って行って、また別の登山道に入って、キャンプ地に到着して……って予定だったんだけど、思いのほかノンビリしすぎたのと、天気も崩れてきたのとで、キャンプ地まで日が落ちる前にたどりつけそうになかった。
登山道にはテントが張れるスペースなんてありそうにないし、その日は、その旧道にテントを張って早めに休むことにした。ちょっと道を下って見ると、下の方にゲートがあって、車が入ってくる心配もなかった。
あちこち舗装の剥げた道路の上で一夜を明かした翌日。残念だけど天候は回復していなくて、俺たちは行程の継続をあきらめて、道路を下り、村に出ることにした。
それでちょっと歩いてゲートのところまできたらさ、昨日までしっかり閉じていたゲートが開いているんだよ。
俺が驚いて立ちすくんでいたら、友人が青ざめて道脇におちている何かを指差した。
そこに落ちていたのはグチャグチャに壊された南京錠だった。すぐそばの岩で叩き壊されたんだろう。
でも誰がこんなことをしたんだ?昨日、山に入ってからは、俺たちは他人に会っていなかった。
テントはブルーだったから、夜の闇の中ではわからない。もし車の一つでも通っていたら、テントの骨ごと轢きつぶされていただろう。
俺たちが宿泊した夜に車が入ってこなくてよかったものの、破壊された南京錠と、ところどころについている反射板まで全て砕かれた上で全開にされたゲートのことを考えると、今でもゾッとする。
いったい誰が、どうして……