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前掲拙稿で書いたように、日本軍将兵が残した記録・証言には、中国民衆を殺害した、放火、略奪したという類の不法・残虐行為については、多く書かれたり、語られたりしているが、
性犯罪である婦女凌辱行為については、それが広範におこなわれていたにもかかわらず、自らの体験を記したり、告白したりする元兵士は例外出にしか存在しない。
それは、性犯罪が平和な日常生活においては重罪にあたるだけでなく、犯した者の人間性、人格、理性が疑われ、市民的名誉を完全に失うことになるように、戦争中の性犯罪を記録・
証言した元兵士も周囲からそれに準じた道義的・精神的制裁を受ける可能性があるからである。
こうした状況を考えると、本誌の元兵士の証言記録は貴重である。本稿は、被害者の側の記録資料を整理したものであるが、記載されている犯罪行為の内容があまりに残虐非道で、非人間的であり、
野蛮で猟奇的であるので、被害者側中国農民の噂や推測を加えた誇張や作り話の可能性もあるのではないかと疑ってみたくなったほどである。しかし、それらが事実としてあり得たことを、
本誌の加害者側の元兵士の証言が証明しているのである。加害者側の資料と被害者側の資料が内容的に一致すれば、歴史事実としてあったことが証明されたといえよう。その意味で、本誌特集号は、
日本軍の性犯罪の事実を解明するうえで高い歴史資料的価値を持っている。