10/10/17 00:06:49 oKq1GdCPO
「オカルト板のあるスレについてお話をお伺いしたいのですが。」僕は名前を名乗ってからそう切り出した。
少しの間電話の向うで全てが沈黙した。
「どのようなスレでしょうか？」と男が言った。テレビの音が小さく下げられていた。
「2006年頃の村上春樹的オカルトというスレです。」男は考え込むように唸った。
「オカルト板に春樹的な僕とか彼女が話すレスが描かれた・・・・・、」「よく知ってます。」と彼は僕の話を遮った。
そして咳払いした。まるで大学院を出たての講師のようなしゃべり方だった。
「2ちゃんねるのオカルト板春樹的オカルトの2006年の春モデルです。悲運のスレとして少々知られたものでしてね。」
「悲運のスレ？」彼は肯きながら何度か鼻を鳴らした。
「私が悲運のスレと呼ぶのには理由があります。第一に春樹的な書き込み方が充全に理解されなかったこと。
書き込もうと思った頃はもう遅すぎた。第二にスレが落ちてしまったこと。あまりに春樹的に拘り過ぎたんですな。静かなレスが4ヵ月半ばかり続きました。
そして2006年の秋、村上春樹的オカルトはオカルト板から落ちました。」
「落ちたんですか？」彼は肯いた。
「ええ、DAT落ちしたわけです。『完』という書き込みを最後にね。
・・・・結局春樹的レスの書き込み方のノウハウはひどく複雑なのですよ。熟読すべき本が何冊も要るし、
それを模倣する書き込みが要る。でも彼らは春樹的オカルトをあきらめはしなかった。」彼はそこで口をつぐんだ。
「あきらめなかったんです。彼らにはプライドがあったんですな。秘密工場で研究は進められた。
そして第4回目の村上春樹的スレは予定どおり2010年10月に完成しました。それがここなのです。」
「いかがでしょう。」と彼は言った。
「書き込みをして貰う訳にはいかんでしょうか？」